上田綺世 技あり2得点で今期25ゴール|得点ランキング2位に9点差の衝撃

オランダ

2ゴール。またしても。しかも今季8度目。

4月25日のエールディヴィジ第31節、フェイエノールトはデ・カイプでFCフローニンゲンを3-1で下した。スコアラインだけ見れば「効率的な勝利」だが、この試合にはいくつかの重要な文脈が重なっている。フェイエノールトは直前の3試合を連続引き分けで過ごし、2位の座をNECナイメーヘンに脅かされていた。勝点差を守るためにも、勝利は必須だった。

試合は11分にジョーダン・ボスが先制ゴールを決め、フェイエノールトが主導権を握る展開で始まった。ゲルノット・トラウナーが約1年ぶりにスタメンに戻り、守備の安定感も増していた。フローニンゲンはポゼッション52.4%と数字上はボールを保持していたが、枠内シュートはわずか2本。試合を支配していたのはボールではなく、フェイエノールトのゴールへの迫力だった。

そして22分と67分、上田綺世が仕事をした。

22分のPK:冷静さという才能

21分、左サイドバックのボスがフローニンゲンGKエティエンヌ・ヴァッセンに倒されてPKを獲得した。この判定を受け、上田がスポットに立った。PKとは、11メートルの距離にあるシンプルなシュート機会に見えて、実際には「GKとの心理戦」である。ゴールの横幅は7.32メートルあり、GKが正確に止めるには方向の読みが必要になる。蹴る側は「読まれても入るコース」か「読まれなければ止められないコース」かを選択する。

上田が選んだのは左コーナーへの確実な一本だった。GKが動いても届かない深さと高さを計算した、技術ではなく「判断の精度」が光るゴールだ。上田は今季、PKを含めた25ゴールを記録しているが、こうした「決めなければならない場面を確実に決める」メンタリティが、彼の得点数を支える大きな土台になっている。

67分のターン:技ありの正体

2点目は、性質がまるで違った。

67分、上田はフローニンゲンのDFティメン・ブロクゼイルにマークされた状態でボールを受けた。この場面で多くのストライカーが選ぶのは「キープしてサポートを待つ」という選択だ。しかし上田はそこでターンした。DFの背後への一瞬のフェイク、重心の移動、体の向きを入れ替える動作が完結するまでのスピードが、ブロクゼイルを動けなくさせた。

「ターン」はストライカーにとって最も基本的な技術のひとつであり、同時に最も難しい技術でもある。なぜなら、DFに背を向けた状態で体を入れ替える動作は、ボールコントロール・体重移動・スペースの認知を同時に行う必要があるからだ。それを上田は「完璧に」こなし、ボトムコーナーへ冷静に流し込んだ。残り20分以上を残した67分のゴールは、事実上試合を決定づけた。この日3本のシュートをすべて枠内に収め、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは当然の結果だった。

8度目のマルチゴール:この頻度は普通ではない

今季8度目のマルチゴールという数字を少し丁寧に見てみたい。

29試合のうち8試合で複数得点。これは約27.6%の確率で「1試合に2ゴール以上」を決め続けていることを意味する。サッカーにおいてストライカーの「1試合に複数得点する確率」は、世界トップクラスでも20〜25%程度が目安だ。上田はその平均値を超えている。

さらに興味深いのが、得点の時期的な分布だ。前半戦の15試合で18ゴールという密度で走り出し、昨年12月には4ゴールを一試合で記録したこともある。今季は10月に前半45分だけで3ゴールを決めてハーフタイムに交代という試合もあった。これはエールディヴィジ史上初の「日本人選手によるハットトリック」でもあった。PK、ターンゴール、ヘディング、ミドルシュート。上田のゴールには「ワンパターン」がない。その多彩さが、8度のマルチゴールを支えている。

エールディヴィジ独走:2位に9点差という現実

現在のエールディヴィジ得点ランキングを確認しておこう。

1位の上田綺世(フェイエノールト)が25ゴール。2位はミカ・ゴッツ(アヤックス)とトロイ・パロット(AZ)が16ゴール前後で並び、3位グループが15ゴール前後。上田は2位に約9ゴール差をつけている。これはもはや「得点王争い」ではない。上田がひとりだけ別の試合をしているような、圧倒的な独走だ。

リーグ戦も残り数節。この差が逆転する可能性は、現実的にほぼゼロに近い。AFC(アジアサッカー連盟)も公式に「エールディヴィジ史上初の日本人得点王に向けて、歴史的瞬間が近づいている」と報じている。前シーズンの得点王はセム・ステインの24ゴールだった。上田はすでにその記録を超えた。

欧州の基準で見ると:ゴールデンシューの正直な話

ここで少し正直な話もしておきたい。

欧州ゴールデンシューとは、欧州全土の各リーグ得点王を競う個人タイトルだ。ただし単純にゴール数を比べるわけではなく、「リーグのレベルに応じた係数」が設定されている。プレミアリーグ・ブンデスリーガ・ラ・リーガ・セリエA・リーグ・アンは係数×2.0。エールディヴィジは×1.0だ。

つまり上田の25ゴールは「25ポイント」になる。一方、4月時点の首位ハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)は31ゴールに×2.0の係数がかかり62ポイント。エムバペ(レアル・マドリード)は23ゴールで46ポイント、ハーランド(マンチェスター・シティ)は22ゴールで44ポイントだ。ゴールデンシューという指標においては、上田はこれらの選手には届いていない。

しかし12月時点では、上田は欧州主要7大リーグの「ゴール数単体」で全選手の中でトップに立っていた時期がある。係数なし、同じ物差しで数えた時、欧州で最もゴールを決めていた選手が上田綺世だった。エールディヴィジという舞台の「係数」が低いことと、上田個人の「得点力」の高さは、別の話として評価されるべきだ。

止まらない理由

上田綺世が今季これだけのゴールを量産できている理由は、ひとつではない。

PKの冷静さ、ターンの技術、多彩な得点パターン。そしてロビン・ファン・ペルシー監督という、世界屈指の元ストライカーの下でプレーしているという環境。ファン・ペルシーは現役時代、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドで欧州最高峰のストライカーとして君臨した。彼のコーチングが上田の完成度に与えている影響は小さくないはずだ。

フローニンゲン戦の2ゴールは、今季の集大成に向かうラストスパートの一手にすぎない。エールディヴィジ初の日本人得点王という歴史的な称号が、今まさに手の届く距離にある。25ゴールという数字は、日本人ストライカーの限界線を確実に書き換えつつある。

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