町田ゼルビアACLエリート準優勝、海外の反応が面白い 決勝で惜しくも敗れたが…

ACL

「Machidaって……どこにあるクラブ?」

ACLエリートの準決勝が終わった直後、海外最大のサッカーコミュニティであるRedditにそんな投稿があふれた。笑いと困惑が混じったコメント欄は、大会が進むにつれて少しずつ変わっていく。準優勝が決まったころには、同じコミュニティに「Never heard of them before this tournament. Genuinely impressed(今大会まで知らなかった。本当に感銘を受けた)」という言葉が並んでいた。

町田ゼルビアが準優勝を果たしたことは、日本国内では当然大きく報じられた。だが、この快挙には「結果」とは別のもう一つの物語がある。無名だったクラブが、アジアの舞台で戦うたびに世界の認識を塗り替えていったプロセスだ。海外のファンたちが「知らない」から「驚き」へ、そして「本物のリスペクト」へと変わっていった、その記録を追う。

「東京」なのに誰も知らなかった町田

まず、海外ファンが最初に混乱したのは地名だった。

「Machida Zelvia is from Tokyo? I pictured some countryside town(町田って東京なの?田舎の町だと思ってた)」。この手のコメントはXでもRedditでも散見された。無理もない話で、町田市は東京都の最南端に位置し、神奈川県との境に接する多摩地区の街だ。渋谷や新宿のイメージとは程遠い。「東京都のクラブなのに、東京っぽくない」という立ち位置は、むしろクラブのアイデンティティそのものとも言える。

クラブの歴史も、海外の目には新鮮に映った。町田ゼルビアがJリーグに参入したのは2012年。長らくJ2に在籍し、2023年シーズンにJ2優勝を果たして2024年からJ1に初昇格した。つまり、アジアの舞台に立ったのは、J1昇格からわずか2年目のことだ。欧州のクラブで言えば、プレミアリーグに昇格して2年でUEFAチャンピオンズリーグの決勝まで行ったようなものだ。そのスケールの異常さが、じわじわと海外ファンに伝わっていった。

親会社「サイバーエージェント」への海外の興味

次に海外のファンが食いついたのが、クラブのオーナーシップだった。

「CyberAgent owns them? The same company as AbemaTV?(サイバーエージェントが親会社?AbemaTVと同じ会社なのか)」。日本では当たり前の話も、海外には新鮮に映る。IT・メディア企業がサッカークラブを所有するモデルは欧州でも珍しくないが、「動画配信プラットフォームを持つテック企業が、Jリーグの中堅クラブを育ててACL準優勝まで連れていった」という文脈は、確かに話題になる素材だ。

サイバーエージェントは2019年に町田の筆頭株主となり、クラブ運営に本格参入した。その後、スタジアム環境の改善、強化費の増額、データ分析部門の整備と、投資を着実に積み重ねてきた。黒田剛監督が「泥臭いサッカー」を信条とするのとは対照的に、経営レイヤーではデータと合理性を武器にしている。この二層構造こそが、町田の強さの源泉のひとつだと海外の論評でも指摘されはじめている。

「高校の先生がアジアを制した」と海外が驚いた理由

しかし、最も多くの驚きと敬意を集めたのは、黒田剛監督その人だった。

「A high school football coach made it to the ACL final. This is a movie(高校サッカーの監督がACL決勝に進んだ。これは映画だ)」。このコメントはXで多くのリツイートを集めた。黒田監督は青森山田高校の監督として全国高校サッカー選手権を複数回制覇した名将だ。2016年、2021年などの優勝は日本では広く知られているが、海外では「高校サッカー」という文化自体がほぼ知られていない。

欧州では、育成年代の指導者がトップクラブの監督になるケースはあっても、「高校の部活」という非プロフェッショナル環境の指導者が、プロのトップチームを率いてアジアの頂点に迫るという話は前例がない。黒田監督が2022年末に就任が発表され、2023年シーズンからチームを指揮してわずか3年でここまで来た。海外メディアがこの異例のキャリアパスに注目したのは自然な流れだった。

戦術的には、黒田監督の哲学は明快だ。ハイラインのプレス、セットプレーへの徹底的なこだわり、球際の激しさ。これはJリーグでも物議を醸したスタイルだが、アジアの舞台では逆に有効に機能した。組織的なブロックを敷く相手に対しても、セットプレーという「確率の高い得点手段」で崩せるからだ。Jリーグトップクラスと評されるセットプレー得点数(Opta調べ)は、ACLでも威力を発揮した。

「驚き」が「リスペクト」に変わった瞬間

大会序盤の海外コミュニティの空気は、正直に言えば「面白い珍入者」を見るようなものだった。

「Machida? Good luck I guess(町田?まあ、頑張れ)」というコメントがグループステージでは多く見られた。しかし、ラウンドが進むにつれてトーンが変わっていく。格上とみられた相手を組織的に抑え込む試合を見て、「This team is DISCIPLINED(このチームは規律がある)」「They don’t have superstars but they function as a unit(スーパースターはいないが、ユニットとして機能している)」という評価が増えていった。

準決勝前後のRedditのスレッドでは、「I’ve watched every Machida game in this tournament. I’m a fan now(今大会の町田の試合は全部見た。もうファンだ)」という投稿が複数見られた。これは決して稀なコメントではなく、「新しいクラブを好きになる」という感覚がコミュニティ全体で起きていたことを示している。数字やスタッツの話ではなく、見ていて応援したくなるクラブの雰囲気が伝わっていた。

Jリーグ全体への評価の変化

町田の躍進は、クラブ単体の話で終わらなかった。

「Is J-League actually good now?(Jリーグって今、実はレベル高いの?)」というスレッドがr/soccerに立ち、数百件のコメントが集まった。過去のJリーグのイメージ——三浦知良や中田英寿が活躍した90〜00年代の記憶、あるいは引退前の欧州スターが余生を過ごすリーグというステレオタイプ——を更新するきっかけとして、町田の存在が機能した。

Goal.comは町田を「J-League’s surprise package in the ACL」と表現し、90minは「Who are Machida Zelvia?」形式の紹介記事を出した。これらの記事のコメント欄には「I had no idea this league was producing clubs capable of this(このリーグがこんなクラブを生み出せるとは知らなかった)」という反応が並ぶ。日本サッカーの全体的な底上げ——久保建英や三笘薫など欧州で活躍する選手の増加——と合わせて、「Jリーグがアジアのトップリーグとして本格的に認識されはじめた」という文脈で語られるようになってきた。

無名だったからこそ、刺さった

最後に、少し引いた視点で考えてみたい。

もし町田が最初から世界に知られたクラブだったら、この反応は生まれなかった。バルセロナが決勝に進んでも「さすが」で終わる。誰も知らなかったからこそ、勝ち上がるたびに驚きが生まれ、驚きが蓄積されてリスペクトに変わった。その過程が、世界中のサッカーファンにとって「見たくなるストーリー」になった。

海外ファンの「Machida ってどこ?」という最初の問いは、いまや「Machida ってすごいな」という認識に変わりつつある。町田市という、東京の端っこにある小さな街のクラブが、アジアの頂点まで0.5歩のところまで来た。その事実は、数字よりも雄弁に何かを語っている。

Jリーグに、また一つ面白いクラブが生まれた。世界がそれを知り始めたばかりだ。

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