三笘薫がいないW杯2026、日本代表の左サイドはどうなるのか

A代表

5月15日午後2時。森保一監督がW杯北中米大会のメンバー26人を読み上げた。三笘薫の名前は、最後まで呼ばれなかった。

あまりにも残念な結果になってしまった。

5月9日、ウルバーハンプトン戦の74分。三笘は左太腿裏を押さえてピッチに倒れ込み、そのままピッチを後にした。ブライトンのヒュルツェラー監督は翌日「慎重に見極める必要がある。賢く判断しなければならない」とBBC Sportに語った。その言葉が事実上の引導だった。

今シーズンの三笘は、怪我との戦いだった。2025/26シーズンのリーグ出場はわずか3試合・264分。ゴールはゼロ、アシスト1。全盛期とは程遠いシーズンを過ごしながら、それでもW杯に懸けていた。その夢が、終わった。

三笘が担っていた3つの機能

「三笘の代わり」を考えるとき、多くのメディアは「誰が代役か」という人物論に終始する。だが、問うべきは「三笘が何をしていたか」だ。

三笘が日本代表にもたらしていた機能は、大きく3つある。第一は左サイドからのドリブル突破。全盛期の2023/24シーズン、三笘はプレミアリーグで9メートル以上前進するドリブルを28回記録し、リーグトップだった。第二はプレッシングの起点。前からボールを奪いにいくスタイルの中で、三笘は左前方から相手の最終ラインにプレッシャーをかけ続けた。第三はCK・ファウル獲得。1対1で仕掛けることで相手に反則を犯させ、セットプレーを引き出す。

これら3機能を一人でこなせる選手は、現在の日本代表の26人の中に存在しない。

最有力候補・中村敬斗の実力と限界

確定メンバーの中で、三笘の「後継者」として最も名前が挙がるのが中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)だ。今季フランスリーグ2で14ゴール2アシストという圧倒的な数字を残し、本職は左ウィング。3月のイングランド戦でも左WBで存在感を見せた。

ただし、冷静に見ると課題もある。リーグ2はフランス2部リーグであり、プレミアリーグとは相手の質が異なる。日本代表で初戦となるオランダ戦のような強度の高い試合でどこまで通用するかは、未知数だ。専門家の間では「中村が最有力候補」という見方が多い一方、「世界のトップレベルで三笘と同じことを求めるのは酷だ」という声もある。

前田大然・塩貝健人・鈴木唯人という選択肢

中村が「左シャドー(攻撃的MF)」で起用される場合、左ウィングバックに前田大然が回る可能性がある。セルティックで培った豊富な運動量と守備意識は魅力だが、「左WBとして相手を剥がして局面を打開する」という三笘的な役割とは本質的に異なる。前田の強みは「走り続けること」であり「ドリブルで突破すること」ではない。

塩貝健人は積極的な仕掛けを得意とし、左サイドでも輝ける選手だ。ただし代表キャップ数は少なく、W杯という舞台でいきなり三笘の穴を埋める役割は重すぎる面もある。一方で鈴木唯人は、左右どちらのシャドーやウィングでも機能できる汎用性が武器だ。決定的な仕事をこなす嗅覚と技術は持っており、「縦横無尽に動いて三笘の穴を埋める」という役割には最も適性があるかもしれない。三者三様の特徴をどう組み合わせるか、森保監督の采配が問われる。

森保監督が選ぶ「機能分散」という道

三笘が担っていた3機能を一人の代役に押しつけるのではなく、複数の選手に分散させるアプローチが現実的だと考えられる。

久保建英が左シャドーに入ることで「個人でゲームを動かす力」を補い、左WBには前田や中村を攻守の状況に応じてローテーションする。右サイドの伊東純也や堂安律が逆サイドから圧力をかけることで、左の負担を減らす。こうした「機能分散型」の設計を森保監督がどう実装するかが、今大会最大の戦術的見どころになる。

穴は埋まるのか、戦術ごと変わるのか

三笘薫の不在は、単なる「選手一人の欠場」ではない。日本代表の左サイドは三笘を前提として設計されていた。彼の不在は「誰かが穴を埋める」問題ではなく、チームの設計図そのものを書き直す問いだ。

それは同時に、新しい日本代表の形が生まれるチャンスでもある。三笘に頼りすぎていたとも言える左サイドが、複数の選手の連携によって機能するならば、それはより成熟した集団的なサッカーへの進化でもある。三笘薫がいたからこそ積み上がった「左サイドの哲学」は、この26人のDNAに刻まれているはずだ。

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