リヴァプール サラーがついにベンチへ。スロット監督が描くエース不在でも機能する戦術でウェストハムに勝利

イングランド

2025年11月30日のウェストハム戦で、モハメド・サラーがベンチスタートという異例の采配が敷かれた。過密日程でのローテーションと説明されたものの、この決断はアルネ・スロット監督がリバプールにもたらした戦術的変化を象徴している。クロップ時代の激しいプレッシングから、より計算されたポゼッションサッカーへ。その新システムの中で、サラーの立ち位置はどう変わりつつあるのか。

ウェストハム戦の展開——サラー抜きの勝利

リバプールはロンドン・スタジアムでウェストハムを2-0で下した。前半終了間際、フロリアン・ヴィルツがコーディ・ガクポからのヘディングパスを受けてシュートを放ったが、これはゴールキーパーに阻まれた。

ゴールが生まれたのは後半60分だった。ヴィルツが左サイドのガクポにパスを出し、ガクポがペナルティエリア内でボールをカット。そこへ走り込んだアレクサンダー・イサクが12ヤードから冷静にサイドフットで押し込んだ。イサクはゴール直後に交代でベンチに下がった。

試合を決定づけたのは、ウェストハムのミッドフィールダー、ルーカス・パケタのレッドカードだった。数的優位を得たリバプールは、ロスタイムにガクポが追加点を奪い、不調からの脱出を印象づける勝利を手にした。

スロット監督が変えたリバプールの戦術

アルネ・スロット監督は前任者のユルゲン・クロップとは異なるアプローチを採用している。クロップの「ゲーゲンプレッシング」(ボール奪取後の即座の反撃)が肉体的な激しさを重視したのに対し、スロットのシステムはテクニカルな精密さを優先する。

スロットの戦術の核心は、ビルドアップ時の柔軟な4-2-4フォーメーションだ。この布陣は意図的に相手のプレスを誘い込み、守備ラインの裏にスペースを作り出す。ボールを保持しながら相手を「罠」に誘導し、素早い縦パスで中盤を突破する戦術だ。

特徴的なのは「アップ、バック、アンド・スルー」と呼ばれるパターンだ。ディフェンダーと中盤でボールを回して相手のプレスを引きつけ、その後ロングボールを前線に送る。この戦略は相手の積極的なプレスによって生まれた空間を突くことを目的としている。

スロット戦術の主なポイント:

  • ビルドアップ時は4-2-4、守備時は4-4-2に変化
  • ポゼッションを重視し、相手を罠にはめる
  • クロップよりも組織的で計算されたプレス

サラーの守備負担が軽減された理由

スロット監督の下で、サラーの役割には明確な変化が見られる。Reddit上でのファンの議論によると、サラー自身が「今は守備をあまりしなくていい。戦術がそうなっている」と語ったという。

この戦術的調整には理由がある。スロットのシステムでは、右サイドのセントラルミッドフィールダー(ドミニク・ソボスライなど)が相手のビルドアップをプレスする際に前線まで上がり、サラーはワイドに留まる。もしプレスを突破されれば、ミッドフィールダーが素早く戻って守備を補う仕組みだ。

つまり、サラーは常にフィールドの高い位置に留まることで、相手の守備ラインを引きつける役割を担っている。相手チームはサラーへのロングボールを警戒せざるを得ず、結果として守備ラインが下がる。スロット監督は「10人または11人で守備をする」と語っているが、実際にはサラーは攻撃的なポジションを維持することで間接的にチームに貢献している。

ローテーションが示す新しい可能性

過密日程の中、スロット監督はサラーをベンチに置くという大胆な決断を下した。監督は試合後、「私たちは多くの質の高い選手を抱えている」と述べ、ヴィルツやイサクも過去にベンチスタートさせたことに触れた。

この采配は単なるローテーション以上の意味を持つかもしれない。リバプールは直近で7試合中6敗という深刻な不調に陥っていた。チーム全体のバランスを取り戻すため、スロット監督はサラーの攻撃偏重を補う選手配置を試した可能性がある。

実際、サラーは今シーズンわずか4ゴールと、自身の基準から見れば物足りない数字だった。また、元イングランド代表ウェイン・ルーニーを含む複数の専門家から守備貢献の少なさを指摘されていた。

スロット・システムにおけるサラーの未来

スロット監督の戦術では、選手の役割がより明確に定義される。サラーは攻撃のスペシャリストとして高い位置を維持する一方、チーム全体がゾーンディフェンスで守備負担をカバーする。この「数的優位」を重視するアプローチは、サラーが守備に戻らなくても機能する仕組みだ。

しかし、ウェストハム戦でサラー抜きのチームが勝利を収めたことで、新たな可能性も見えてきた。ガクポとイサクの組み合わせ、そしてヴィルツの成長により、リバプールは複数の攻撃パターンを持つようになった。

今後、サラーはどのような役割を担うのか。考えられる選択肢はいくつかある:

  • スーパーサブとしての起用: 試合終盤に相手の疲労を突く切り札として
  • 重要な試合での先発: ビッグマッチでの経験と決定力を活かす
  • 偽9番への転向: 中央に入ってプレーメイクに関与する新しい役割

スロット監督の戦術は柔軟性を重視している。サラーの持つスピードと決定力は依然として武器だが、システムの中での使い方が変化する可能性は高い。

まとめ

ウェストハム戦でのサラーのベンチスタートは、スロット監督が進める戦術改革の一部と見ることができる。クロップ時代の激しいプレッシングから、より計算されたポゼッションサッカーへの移行。その中でサラーは守備負担を軽減され、攻撃に特化した役割を与えられている。一方で、サラー抜きでも勝利できることが証明されたことで、チームの選択肢は広がった。今後のサラーがどのようなポジションで輝くのか——それはスロット監督の戦術的判断と、チーム全体の成長次第だろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました