2025年12月14日、鎌田大地はピッチを引きずるように退場した。マンチェスター・シティ戦(0-3)でハムストリングを深刻に傷め、グラスナー監督が「少なくとも8〜10週間の離脱」を宣告。W杯イヤーのシーズンを棒に振るかもしれなかった。
あれから約5カ月後の2026年5月27日(日本時間28日)、ドイツ・ライプツィヒのレッドブル・アレーナ。鎌田は90分間ピッチに立ち続け、クリスタル・パレスのECL制覇を見届けた。
日本人選手として初めて、欧州カップ戦タイトルを2つ手にした選手として。
パレスが欧州初参加で初優勝
クリスタル・パレス 1-0 ラージョ・バジェカーノ。スコアは最小得点差だったが、試合の主導権はパレスが握った。決勝点は後半6分、ジャン=フィリップ・マテタのシュートがゴールネットを揺らした瞬間に生まれた。
クリスタル・パレスにとって、これはクラブ史上初の欧州タイトルだ。しかも欧州大会への初参加という、前例のない快挙だった。南ロンドンのクラブが、ラージプレスを掻い潜り、格上クラブたちを退け、大陸の頂点に立った。
さらに、この優勝によりパレスは来季のELへの参加権も獲得した。一発逆転のような話だ。
鎌田大地の「日本人初」という記録
今回の優勝で鎌田が手にしたのは、単なるクラブのタイトルではない。EL(2022年、フランクフルト)とECL(2026年、クリスタル・パレス)。欧州3つの主要カップ戦のうち2冠を持つ日本人選手は、これまで存在しなかった。
比較として挙げるなら、長谷部誠、乾貴士、岡崎慎司といった歴代の欧州組も欧州カップ戦のタイトルを手にしているが、2つのタイトルを異なる大会で制覇したのは鎌田が初めてだ。
この記録の大きさは、今夏のW杯を前にして、さらに意味を増す。
決勝前夜に語られた「リベンジ」
今大会の文脈を理解するには、昨シーズンのパレスの悔しさを知る必要がある。パレスはELのリーグフェーズで16位以下となり、ECLへの降格を余儀なくされた。チームにとってこれは屈辱だった。
グラスナー監督は決勝前日の会見でこう語っている。「ELからの降格は悔しかった。だからこそ今夜のタイトルで取り返したい」(英語原文:”to atone for their Europa League demotion”)。
降格から這い上がり、その大会で頂点に立つ。スポーツの物語としては、これ以上わかりやすいリベンジはない。
グラスナーと鎌田が4年越しに繰り返した軌跡
今回のECL優勝には、もう一つの軸がある。グラスナー監督と鎌田のコンビが、またやったということだ。
2022年のEL優勝(フランクフルト)。鎌田は12試合で5ゴールを記録し、チームの欧州制覇を引っ張った。準決勝第1レグのウェストハム戦ではアウェーで決勝ゴールを決め、決勝のPK戦でも自らキックを成功させた。
今季も鎌田はECL全体を通じて準決勝までに3アシストを記録。特に準決勝シャフタール戦(4月30日)では1ゴール1アシストの活躍でチームの3-1勝利を支えた。チームがECL史上最速ゴール(サールの1分弾)でスタートした試合で、鎌田は84分にストランド・ラーセンへのアシストを決め、ダメを押した。
鎌田はシーズン中、グラスナーについてこう話している。「少なくとも自分と監督は、すでに欧州タイトルを一緒に取っている。グラスナーの守備戦術は世界最高レベルだと思う。だからこそ、欧州の大会で強さを発揮できる」
言葉通りの結果を出してみせた。
重傷から優勝まで、5カ月の逆転劇
12月の重傷に話を戻す。ハムストリングの離脱期間は最終的に約70日間に及び、復帰は2026年2月21日だったとデータは示している。
復帰後の鎌田は確実に存在感を取り戻し、ECLの準々決勝(フィオレンティーナ戦)でアシストを記録。準決勝でゴールを奪い、そして決勝でフル出場。ケガ前とは別人のような上昇曲線を描いた。
パレスのファンも、その復活ぶりを温かく見守っていた。準決勝シャフタール戦で交代退場した際、スタジアムに来ていた遠征サポーターからは自然な拍手が起きたとThe Guardianは伝えている。
海外ファンが見た「鎌田がいるパレス」
r/crystalpalaceには優勝後、420票以上の反応が寄せられ、「Crystal Palace are winners of The Conference League UEFA 2026」という喜びの投稿が溢れた。
欧州ファンの多くは、鎌田を「離脱から戻ってチームのECL制覇を成し遂げた選手」として評価している。一部のファンからは「このシーズンを彼なしでは語れない」という声もあった。これはパレスファンにとって、鎌田がすでにクラブの一部として認識されていることを示している。
ITV Newsがライプツィヒで取材したパレスサポーターはこう語っている。「勝てば来季のELにも行ける。まさに二重においしい結果だ」
W杯前最後の「証明」
鎌田の今夏のW杯日本代表入りはほぼ確実視されている。W杯アジア予選では代表14試合中11試合に出場し、4ゴールを記録。一度はキャプテンを任されるなど、代表内での存在感は大きい。
そのW杯前最後のシーズンを、欧州カップ戦の優勝というかたちで締めくくった。ケガさえなければ、ではなく、ケガを乗り越えてのタイトルだ。
パレスとの契約は2026年6月に満了する予定で、次のステップはまだ明らかになっていない。 移籍か残留か、W杯後の動向も気になるところだが、今は一つのことだけ確かだ。
2022年のセビリアで、2026年のライプツィヒで。鎌田大地は二度、欧州の頂点に立った。
