ブンデスリーガ3年連続得点王。ハリーケインが塗り替えた歴史とまだ続く物語

ドイツ

2026年5月15日、アリアンツ・アレーナ。バイエルンの最終節の相手はケルン。既にリーグ優勝を確定させたバイエルンにとって、この試合には消化試合的な側面もあった。しかしハリー・ケインには関係なかった。

ケインは前半だけで2ゴールを奪い、後半にも追加点を挙げてハットトリックを完成させた。最終スコアは5-1。今季4度目のハットトリック、そしてキャリア通算11個目の達成だ。終わり方まで、ケインらしかった。

ブンデスリーガ史上初の記録

ケインの今季の成績は、リーグ戦36ゴール・5アシスト(31試合)。これでブンデスリーガ3年連続得点王(Torjägerkanone)が確定した。

特筆すべきは「連続」の質だ。ケインはブンデスリーガに加入した最初の3シーズン、毎シーズン25ゴール以上を記録しながら1度も他の誰かに得点王を渡していない。バイエルン公式によれば、これはブンデスリーガ60年以上の歴史において初めてのことである。

比較として出てくるのはロベルト・レバンドフスキだ。レバンドフスキは2018/19シーズンから4年連続でTorjägerkanoneを獲得したが、それはバイエルンに加入して時間が経った後の話。「新天地に来てすぐ3年間支配し続ける」という意味では、ケインの達成はまた別の次元にある。

得点の数字を並べても、ケインの凄みは伝わりにくい。だがこう言えばどうだろう。ブンデスリーガで通算32個ものハットトリックを記録した「ボンバー」ゲルト・ミュラーは、最初の10個に到達するまでに161試合を要した。ケインはわずか76試合で同じ10個に到達し、その記録を大幅に塗り替えた(IFFHS調べ)。

レバンドフスキが「誇りを感じる」と言った理由

今季序盤から、ケインには一つの目標があった。レバンドフスキが2020/21シーズンに記録したブンデスリーガ単シーズン最多得点「41ゴール」への挑戦だ。

その追撃に対して、当のレバンドフスキはこう語っている。「ケインが自分の記録を追いかけてくれることは、私をより誇りにさせる」。

記録を「脅かされる」のではなく「誇りに思う」と言える選手はなかなかいない。それだけレバンドフスキもケインの挑戦を本物として受け止めていたということだ。

結果的に今季のケインは36ゴールで終え、41ゴールの記録には届かなかった。ただ36ゴールという数字自体、リーグ史上でも指折りの水準だ。「記録に届かなかった」という事実より、「32歳がここまでやった」という文脈で読むべき数字である。

バロンドールに最も近づきながら、夢が断たれた夜

今季、ケインのバロンドール受賞可能性が現実の議論として語られていた。Oddschecker(2026年4月29日時点)のバロンドール2026オッズでは、ケインが6/4で全候補の中の1位。今季で最も活躍した選手という評価は、数字だけでなく賭け市場でも証明されていた。

しかしその道を断ったのが、CLセミファイナルでのPSG戦(5月)だった。

バイエルンは第1レグを4-5で落とし、ホームでの第2レグも序盤からリードを許す展開。ケインはアディショナルタイムに左足で同点ゴールを決め、最後まで諦めなかった。しかし時間は足りず、バイエルンはアグリゲート5-6でPSGに敗れた。

試合後、ケインはユニフォームで顔を覆い、しばらく顔を上げられなかった。マヌエル・ノイアーが近づいて抱擁し、ヴァンサン・コンパニ監督が胸をポンと叩いた。その光景が全てを物語っていた。

バロンドールはCLかワールドカップで優勝した選手に渡る傾向が強い。これはケイン自身も分かっていた。2025年11月の時点で、ケインはこう語っている。「100ゴール取ったとしても、CLかワールドカップで勝てなければバロンドールは取れないだろう。ハーランドも同じ。大きなトロフィーが必要なんだ」。

この発言はCLが始まる前のものだった。そして現実はケインが予言した通りになった。

見落としてはいけない数字もある。このCLのセミファイナルまでの道のりで、ケインはアタランタ、レアル・マドリー、PSGとの計3ラウンドの両レグ全試合でゴールを決めた。CLノックアウトステージ6試合連続得点という記録は、ロナウド以来のものだ。得点機会を与えれば必ず結果を出す、という証明をCLのステージでも示し続けた。

残された可能性:ケインとバロンドール、最後の鍵

CLでの敗退により、ケインのバロンドール2026受賞確率は大きく下がったというのが国際メディアの見立てだ。

残された可能性として各メディアが挙げるのが、2026年ワールドカップでのイングランドの躍進だ。ケイン本人も「イングランドも優勝候補の一角。全てが噛み合えばバロンドール争いに入れる」と明言している。

イングランドが優勝またはそれに準じる結果を出し、ケインが得点王争いに絡めば、話は変わってくる。バロンドールの評価期間(2025年11月〜2026年10月)にはワールドカップが含まれる。36ゴール+3年連続得点王というリーグ実績に、代表での活躍が加われば、選考委員が無視できない数字の塊になる。

32歳のケインが最終節でハットトリックを決めた日。それは季節の終わりであると同時に、もう一つの物語の出発点でもある。

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