ファンがエムバペに大ブーイング、ペレス会長はファンと口論|崩壊しつつあるレアル・マドリード

スペイン

ゴールを決めても、スタジアムに響くのは歓声ではない。2026年5月14日、サンティアゴ・ベルナベウで起きたことは、一試合の出来事を超えた何かを物語っていた。レアル・マドリード2-0レアル・オビエド。スコアだけ見れば穏やかな勝利だ。しかし、その夜のベルナベウは穏やかとは程遠かった。

ゴールを決めても消えないブーイング

試合前のウォームアップが始まった瞬間から、スタンドのあちこちでブーイングが湧き起こった。スターティングメンバーがアナウンスされると、声はさらに大きくなった。そしてハーフタイムを過ぎ、エムバペがベンチからピッチに入った瞬間にもブーイングが響いた。前半44分のゴンサロ・ガルシアの1得点に加え、後半35分にベリンガムが追加点を挙げたが、状況は変わらなかった。

今季ラ・リーガで25試合4ゴール(全大会通算では24ゴール超)を記録する選手が、ホームスタジアムで迎えられたのはそういう空気だった。 エムバペは必死にゴールを狙ったが、この夜のスタンドは彼のプレーよりもっと大きなものに怒りを向けていた。

そのブーイングは今に始まったことではない。1月のレバンテ戦を境に、ベルナベウはしだいに内側から沸騰してきた。ベリンガム、ヴィニシウス、バルベルデ——主力選手たちへのブーイングが続き、試合によっては自前の笛を持ち込むファンまで現れた。

フロレンティーノ会長がスタンドで激論

この夜、もう一つの衝撃的な場面がテレビカメラに映った。試合開始直後、フロレンティーノ・ペレス会長がボックス席付近でファンと直接口論していたのだ。

試合が始まって約10分後、スタンドには「フロレンティーノ、辞めろ(Florentino, leave now)」という横断幕が掲げられた。すぐにセキュリティが撤去したが、その映像はSNSで世界中に広まった。

2日前の火曜日、ペレス会長は記者会見でこう言っていた。「レアル・マドリードの会員は選手を批判したりブーイングしたりすべきではない。これはローマの闘技場か? 彼らは我々の選手だ。自分の子供をブーイングするようなものだ。」 そのわずか48時間後、会長本人がスタンドで自クラブのファンと怒鳴り合っていた。

会長はまた、組織的なブーイングを煽るグループとして「アンバームーブメント」の存在にも言及している。かつてのウルトラ・スールに代わる形で現れたとされるファン集団で、「フロレンティーノ辞任」を積極的に呼びかけているという。

3,000万人が署名した「Mbappe Out」

エムバペへの怒りはいつから積み上がったのか。直接のきっかけは4月の負傷離脱中に起きた。太もも負傷でクラシコ欠場が濃厚になっていた最中、エムバペがサルデーニャ島でバカンスを過ごしているとされる映像が拡散された。 (ムバッペ側近は「批判は誇張されている」と反論している )

「Mbappe Out」と題されたオンライン署名は、その後急速に拡大。最終的に3,000万を超える署名が集まった。 移籍予測サービスのPolymarketでは「今夏移籍する確率」はわずか9%と見積もられており 、Fabrizio Romanoも「マドリードはエムバペを売却する意思はない」と報告している(確度高)。 契約は2029年まで残り、違約金は推定10億ユーロ(約1,700億円)超とも言われる。

ファンの怒りは止まらないが、現実問題として「どこにも行けない夏」が来る可能性が高い。

崩壊したロッカールーム

ピッチの外でも亀裂は入っていた。試合の約1週間前、バルベルデとチュアメニが練習中に口論し、その後ロッカールームで衝突。バルベルデが頭部を負傷して縫合処置が必要になり、入院する事態になった。 クラブは両選手に対し懲戒処分を下し、合計100万ユーロ(約1億7,000万円)の罰金が科された。

バルベルデ本人は「テーブルに頭をぶつけた」と物理的な衝突を否定したが、複数の信頼性の高いメディアが「肉体的な衝突があった」と報じた。 Goal.comは「バイエルン・ミュンヘンがかつて”FCハリウッド”と呼ばれた時代のドラマをも超えるオフフィールドの混乱」とまで表現した。 クラブ内部では情報漏洩元を突き止めようと内部調査が進んでいると伝えられている。

それでもピッチは正直だった

混乱の中で、試合そのものはマドリードが制した。

前半44分、ブラヒム・ディアスのアシストを受けたゴンサロ・ガルシアがペナルティエリア外から鮮やかなシュートを突き刺して先制した。 今季ラ・リーガ5ゴール目となる一撃だ。 エムバペやヴィニシウスの陰で目立たないが、22歳のスペイン人が着実に爪痕を残している。

79分にはベリンガムがエリア外で2人のディフェンダーをかわし、低く鋭いシュートで2点目。今季ラ・リーガ5ゴール目の一撃となった。 ブラヒム・ディアスはOneFootballのプレイヤーレーティングで8.0点を獲得しチーム最高評価に輝き 、チームとしては直近5試合のベルナベウで無敗(4勝1分)という数字も残した。

勝ち点を積み、ゴールを決めた。しかし、終了のホイッスルが鳴っても、スタジアムの熱気は「喜び」ではなかった。

ベルナベウの怒りはどこへ向かうか

問題の本質はエムバペひとりの人気ではない、という声がある。Redditのr/realmadridiでは「40ゴール取った選手にブーイングするファンベースはジョークだ」という怒りの声が多数投稿された。 しかし同時に、スタジアムで「選手をブーイングしたことは一度もないし、これはレアル・マドリードのあり方じゃない」と涙を浮かべるサポーターの姿も記録されている。

ファンの中でも、ベルナベウは今、分断されている。

2シーズン連続でタイトルなし。ロッカールームの崩壊。会長とファンの公開口論。クラシコ2-0敗北。そしてバルセロナのリーグ制覇。 今夜の2-0勝利では何一つ解決していない。

エムバペの去就がどうなろうと、ベルナベウが今失いつつあるものはもっと根深いのかもしれない。スタジアムを満たすはずの誇りと一体感が、怒りと不信に変わっている。その事実は、どんなスコアでも塗り替えることができない。

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