絶好調のシティが3失点でまさかの失速、アーセナルが優勝に前進

イングランド

4月のアーセナルは、誰が見ても「崩壊」という言葉がふさわしかった。

1月時点で優勝確率97.6%。8点差のリード。タイトルはほぼ手中に収めたと、世界中のメディアが書いた。 だがそこから何かが狂い始めた。2026年に入って8試合で11ポイントを失い、 引き分けと敗戦が積み重なっていった。

4月10日、エミレーツにボーンマスを迎えた。ヴィクトル・ギェケレシュのPKで一度は同点に追いついたが、74分にアレックス・スコットに勝ち越しを許し1-2で敗戦。 リーグ今季2敗目は衝撃を超え、恐怖に変わった。さらに4月を通じて全大会合計4試合中3敗。 CLとFAカップも絡んだ消耗戦のなかで、アーセナルは文字通り燃え尽きようとしていた。

そして運命の4月19日、エティハドでのビッグマッチ。シティが2-1で勝利し、ハーランドの決勝弾がアーセナルの心臓を突いた。 首位との差は3点に縮まり、さらにシティは消化数でも1試合分の「貯金」を持っていた。「アーセナルが崩れた。結局シティがタイトルをのか」という雰囲気が、世界中に漂い始めた。

「直接対決で勝った」シティが掴んだ追い風

エティハドの勝利をきっかけに、シティは別のチームのようになった。

3月22日のカラバオカップ決勝ではウェンブリーで0-2とアーセナルを下し(ニコ・オライリーの2得点)、 プレミアリーグでも直接対決に勝利。シティは破竹の勢いで「優勝街道まっしぐら」という実感をつかんでいた。その後も6連勝(全コンペ合計)。 今季最多の2得点ペース、62.3というxGはリーグ2位。 「シティが転けるとしたら、それはいつだ」という問いが生まれるほどの絶好調だった。

5月4日のエバートン戦を前に、シティの残り試合はアーセナルより1試合多く、かつゴール差でもほぼ互角(シティ+37、アーセナル+38)。 全勝すれば逆転優勝の目が十分にあった。かつて崩壊寸前だったアーセナルとは対照的に、シティは今まさに最高潮にあった。

13分間で全てが変わった夜

43分、ドクが右足で流し込んで先制。シティが1-0でリードしたまま後半を迎え、このまま勝ち切るかに見えた。

68分、マルク・ゲイのバックパスがありえない場所に転がった。受け取ったのはエバートンのFWティエルノ・バリー。GKとの1対1を冷静に流し込み、1-1。 このシーンを、海外SNSでは多くのシティファンが後に「あの瞬間に全てが終わった」と書いた。

そこから13分が、悪夢だった。74分にジェイク・オブライエンのヘッドで2-1、81分にバリーがまた決めて3-1。 リードどころか2点ビハインド。「6連勝」の勢いは、エバートンの圧力に飲み込まれた。88分にハーランドが返し、ドクが97分に右足を振り抜いて3-3。 土壇場の2発は「意地」そのものだったが、勝ち点は1止まり。

試合後、ペップ・グアルディオラ監督は静かにこう語った。「アーセナルが残り試合を全勝すれば、タイトルは彼らのものだ。」 「それ以外の展開を求めて戦うしかない」という言葉の裏に、かすかな敗北宣言が滲んでいた。

5月現在の順位と残り試合

エバートン戦のドローにより、勝ち点差はアーセナルが5点リード(試合数が同じ時点の比較では実質的には優位を保つ)。 アーセナルが3試合残り、シティが4試合残り(消化1少)という構図は変わっていない。

プレミアリーグ公式のまとめによると、アーセナルが残り3試合(ウェストハム、バーンリー、クリスタル・パレス)を全勝すれば、22年ぶりの優勝が確定する。 一方でシティも全勝かつアーセナルの取りこぼしが条件。

NBC Sportsの試算では、最終的に両チームが勝ち点85で並ぶ可能性も指摘されている。 その場合、勝者を決めるのは「ゴール差」という微妙な争いに。現状アーセナルが+38、シティが+37と1しか違わず(34節終了時点)、 最終節まで一点の余裕も許されない。

優勝争いの分岐点:どこに転換点があったか

振り返ると、このシーズンの優勝争いは「崩れた者が立て直し、立て直した者がまた崩れる」の繰り返しだった。

1月にアーセナルが8点差のリードを持ちながら8試合で11ポイントを失い、 シティは追い上げた。4月にアーセナルがボーンマスに負け、直接対決でも敗れ、「もうダメだ」という空気が流れた。それをシティが引き継いで6連勝で突っ走った。 そして5月4日、絶好調だったシティが13分間で崩れた。

アーセナルのファンは4月に地獄を見た。シティのファンは5月に地獄を見た。どちらも「もう終わり」という瞬間を経験した。

今後の鍵は二つある。一つは、アーセナルが5月5日のアトレティコ・マドリーとのCL準決勝第2戦(ホーム)を乗り越えられるか。 3試合制覇の大前提として、まず中3日で欧州の強敵と戦わなければならない。もう一つは、シティが「一度外した集中力」を取り戻せるか。ブレントフォード、クリスタル・パレス、ボーンマス、アストン・ヴィラと続く4試合、手を抜ける相手は一つもない。

先に崩れたのはアーセナルだった。そして今、シティも崩れた。「最後まで崩れなかった方」が、22年ぶりの夢を掴む。

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