後半アディショナルタイムのゴールが消えた夜
「主審は一度ゴールを認めた。それにもかかわらず、取り消したのだ」。
4月21日深夜、プリンス・アブドゥラー・アル・ファイサル・スタジアムの記者会見室。シャバブ・アルアハリ監督のパウロ・ソウザは、怒りをほとんど隠さずに言葉を続けた。試合後の会見としては異例の激しさだった。
試合は町田ゼルビアが前半12分に相馬勇紀のゴールで先制し、その1点を守り抜く展開だった。後半アディショナルタイム92分、アルアハリがついにネットを揺らした。スコアが並ぶかに思われた瞬間、VARが介入し、ゴールは取り消された。理由は「交代手続きが完了していない選手がいる状態でのクイックリスタート」だった。ソウザ監督が「史上初めての判定ではないか」と憤るほど、前例の少ない取り消しだった。では問いはシンプルだ。町田はルール上、本当に正しかったのか?
パウロ・ソウザとはどんな監督か
まずパウロ・ソウザという人物を押さえておきたい。ポルトガル出身の元プロ選手で、指導者としてはフィオレンティーナやスウォンジー、ポルトガル代表など欧州トップレベルで実績を持つ。ゲームマネジメントを知り尽くした監督が「判定がおかしい」と主張しているのだ。
この事実は重く受け止める必要がある。審判への個人的な不満ではなく、ルールの解釈そのものへの異議申し立てとして捉えると、この問題はより深い意味を持つ。「主審が一度ホイッスルを吹いてプレーを認めた後に取り消した」という主張は、単なる感情論ではない。
「交代中のリスタート禁止」というルールの中身
では、具体的に何が起きたか。後半アディショナルタイム92分、アルアハリはスローインからクイックリスタートでゴールを奪った。しかしVARが介入し、オンフィールドレビューの結果、ゴールは取り消された。
「え、交代中にスローインしたらダメなの?」と思った方、その疑問が核心だ。
IFABの競技規則(2025-26年版)では、被交代選手はボードが提示されてから10秒以内にピッチを出なければならないと定められている。さらに重要なのは、交代手続きが完了していない状態でのリスタートは「早期リスタート」として認められないというルールだ。追いかける側が焦ってクイックリスタートに走った結果、その焦りがルール違反を生んだ。
元W杯主審が出した結論
公平性を保つために、専門家の見解も整理したい。
同じACLエリートの準々決勝でのVAR取り消し(ダニーロ・ペレイラのハンドによるゴール取り消し)に対し、元W杯主審はこう述べた。「最終決定は正しかった。ゴールは認められない」。同大会の審判団による判定を、専門家が支持した事実は記録に値する。
今回の準決勝VARについてはソウザ監督が「主審が一度認めた後に取り消した」と主張したが、VARによるオンフィールドレビューの権限はホイッスル後でも適用される。これはVAR運用の基本原則であり、「一度認めたから取り消せない」という論理はルール上成立しない。
2試合連続の批判が示すもの
ここで視野を広げてみよう。準々決勝では、アルイテハドのコンセイソン監督が「我々の敵は日本のチームではなく、主審だった」「不公平な試合だった」と怒りをあらわにした。そして準決勝では、パウロ・ソウザが激怒した。2試合連続で、対戦相手の監督が審判批判を繰り広げたのだ。
Redditのr/soccerでは「Machida were in the second division in 2023. Continental Cup semi finals in 3 years is impressive, more impressive defeating a saudi team(2023年に2部にいたクラブが3年でアジアの準決勝まで来た。サウジのチームを倒したのはさらに印象的だ)」というコメントが注目を集めた。海外ファンは逆説的に「批判されるほど、町田の存在が脅威だった」と受け取っている。
あなたはどう思う?
判定の是非について、もう一度整理しよう。
IFABの競技規則に照らせば、交代手続きが完了していない状態でのクイックリスタートは認められない。ルールの文面で読む限り、取り消しは正当だ。しかしパウロ・ソウザの「主審が一度ゴールを認めた後に取り消した」という主張は、審判コミュニケーションの問題として一定の正当性を持つ。
この記事を読んでいるあなたは、どう判断するだろうか。ルールが正しく適用されたのか、それとも判定のプロセスに改善の余地があったのか。
「準備していた」という町田の姿勢
最後に見落とされがちな事実を伝えたい。
黒田剛監督は試合前の記者会見で「守備を徹底し、相手に焦りを生まれさせることを狙う」と語った。実際に試合は1-0で先制し、後半は守り抜く展開になった。アルアハリが後半アディショナルタイム92分に焦ってクイックリスタートに走ったのは、町田がその状況を設計した結果とも言える。
交代手続き中のリスタートが起きたのは偶然ではなく、追いかける側が追い詰められた証拠だ。VARに「救われた」ように見えて、その状況を作り出したのは町田自身のゲームプランだったかもしれない。パウロ・ソウザは正当に激怒した。しかし、ルールも含めて「準備していた」のは町田だった。

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