サッカー日本代表アイスランド戦、小川航基の一撃で勝利|冨安復帰 W杯前最終戦

A代表

2026年5月31日、国立競技場で行われたキリンチャレンジカップ2026で、SAMURAI BLUEがアイスランド代表に1-0で勝利した。前半は16本のシュートを放ちながら無得点という消化不良の展開が続いたが、後半87分に途中出場の小川航基が菅原由勢のクロスにヘッドで合わせ、満員の国立競技場を歓喜に包んだ。北中米ワールドカップを目前に控えたW杯壮行試合は、最後まで劇的な展開で締まった。

16本打っても決まらない前半、でも内容は日本が支配

試合全体のシュート数は日本が16本、アイスランドは7本。コーナーキックでも日本が5本対アイスランド1本と、数字の上では日本が圧倒的に主導権を握り続けた試合だった。

しかし前半に限っていえば、決定機の数に反してゴールが生まれない展開が続いた。7分、久保建英のパスから中村敬斗がフリーでシュートを放つも枠外。34〜37分には久保のFKから冨安健洋がヘディング、こぼれ球を久保がシュート(GKキャッチ)、久保のクロスから中村がヘディングでGKが弾くなど、立て続けに決定機を迎えながら一度もゴールを割れなかった。前半アディショナルタイムには中村のクロスに冨安がボレーを放つもGKの正面に飛び、0-0でハーフタイムを迎えることになった。

この「シュートは打てるが決め切れない」という構図は、FIFAが日本代表の課題として指摘してきた「攻撃の再現性」の問題そのものだった。FIFAは今大会前の分析で、日本について「守備の安定と切り替えの速さが武器」としながら「攻撃の再現性や負傷者対応には課題が残る」と言及していた。アイスランドは格下とはいえ、欧州で鍛えられた強靭なフィジカルと組織的な守備を持つ相手だ。その相手に前半を通じてゴールが奪えなかったことは、本番に向けた明確な宿題を残した。

吉田麻也、12分でピッチを去る、両チームに見送られた一区切りの夜

試合前、スタンドには「FOR OUR GREATEST STAGE」と書かれたコレオグラフィーが広がり、国立競技場はW杯へ向けた高揚感に包まれていた。そしてこの夜には、もうひとつの「特別な時間」が用意されていた。

前半12分、DF吉田麻也がDFの伊藤洋輝との交代でピッチを後にした。吉田はカタールW杯以来、約3年半ぶりに森保ジャパンに期間限定で復帰し、この試合がその集大成となった。交代の瞬間、日本の選手はもちろん、アイスランドの全選手も整列してガード・オブ・オナーを作り、吉田を拍手で送り出した。試合中にこうした光景が生まれるのは極めて異例のことだ。

吉田は試合前日、「明日が僕のW杯」という言葉で語りながら「引退ではなく、一区切りということにしておいてください」とも述べていた。森保一監督も「賛否あると思うが」と葛藤を口にしつつ、この偉大な功労者への感謝を形にした。日本代表歴代3位となる127試合に出場し、アジア最終予選を突破した頃から代表の軸を担い続けた吉田麻也。その背中を国立競技場の大観衆が見送った夜は、日本サッカーにとって一つの区切りの瞬間となった。

冨安健洋、約2年ぶりの復帰、守備の要は戻ってきた

吉田の交代と並んで、この試合でもう一つの注目を集めたのが、冨安健洋の代表復帰だった。アーセナル時代の2024年5月以来、約2年ぶりのスタメン出場となった冨安は、3CBの右センターバックとして先発。長期負傷から復帰後、アヤックスで出場機会を増やしながら状態を上げてきた。

アヤックス在籍中の3月、オランダリーグ第27節・スパルタ戦でアーセナル時代から664日ぶりの先発出場を果たし、地元メディアから高評価を受けた。続くフェイエノールト戦でも2試合連続先発を飾ったが、右太もも裏を痛めてピッチを後にするアクシデントがあり、代表復帰に向けた不安要素も残っていた。

しかし今夜、冨安は前半を通じて安定したパフォーマンスを見せ、前半アディショナルタイムにはボレーシュートまで放つ積極性を発揮した。2年間の長いリハビリと復帰への道のりを経てW杯のピッチに戻ってきた冨安は、「ピッチで恩返しをしたい」と話していた言葉通り、今夜のパフォーマンスで存在感を示した。オランダ戦、チュニジア戦、スウェーデン戦と続く本番での起用が濃厚で、日本DF陣の柱として計算できる状態にあることをこの試合で示した。

ハーフタイムに4枚替え、森保監督が示したW杯のスカッド全体像

後半、森保監督はハーフタイムに遠藤航・上田綺世・伊東純也・堂安律の4枚を一気に替えるという思い切った采配に出た。入れ替わりで長友佑都・菅原由勢・小川航基・瀬古歩夢が同時にピッチへ送り出された。

この4枚替えには二重の意味があった。一つは「試合の文脈」として、前半0-0という流れを打開するための刷新。もう一つはW杯本番前に「可能な限り多くの選手を試合に絡ませる」というスカッド管理の狙いだ。後半73分頃にはさらに冨安・久保・鈴木彩艶OUT→谷口彰悟・佐野海舟・早川友基INと追加交代を重ね、この試合でほぼ全員を起用する方針を徹底した。

後半68分頃には板倉・中村・田中碧OUT→渡辺剛・塩貝健人・後藤啓介INと続き、最終的にスタメン11人のほぼ全員が入れ替わる形となった。W杯でのメンバーは26人。限られた枠の中で全員に試合感覚を持たせることは、大会の長丁場を戦い抜くうえで重要な意味を持つ。

長友佑都、145試合目のピッチ、日本代表歴代2位の出場数が刻まれた夜

後半頭からピッチに立った長友佑都は、代表通算145試合目の出場となった。日本代表の歴代出場数ランキングは、1位が遠藤保仁の152試合、2位が長友佑都(この試合で145試合)、3位が吉田麻也(この試合で127試合)。今夜の国立競技場では、その2位と3位が同じピッチに立ち、そして3位の吉田が事実上のラストゲームを終えるという特別な夜が重なった。

長友は後半に右サイドから積極的な攻撃参加を見せ、菅原由勢とのコンビネーションでアイスランドの左サイドを崩しにかかった。W杯のメンバー26人に選ばれながら、本番でどの程度の役割を担うかは未確定だ。しかしベテランとして豊富な経験をチームに注入し続ける姿勢は変わらない。2010年南アフリカ大会から数えてW杯5大会目という稀有な存在感は、今の日本代表にとって単なる戦力以上の意味を持っている。

87分、小川航基のヘッドが試合を決めた

0-0のまま終盤を迎えたなかで、ゴールが生まれたのは後半87分だった。右サイドの菅原由勢がピンポイントのクロスを入れると、途中出場の小川航基がニアに鋭く飛び込み、ヘディングでゴールネットを揺らした。

小川は後半頭から出場し、63分には瀬古の縦パスから枠外シュートを放つなど存在感を示していたが、肝心な場面で仕留め切れない場面も続いた。それだけに87分の一発は値千金だった。日本代表での14試合10得点というハイペースな得点力を誇る小川にとって、これがW杯本番前の最後のアピールの場でもあった。試合はそのままアディショナルタイムに突入し、アイスランドのパワープレーに苦しみながらも守り切って1-0で勝利。W杯前最後の国内試合を白星で締めた。

三笘不在の攻撃、「左の穴」は本番でどう埋まるか

今夜、最も大きなテーマの一つが「三笘薫がいない中での攻撃構築」だった。三笘は左脚の肉離れで手術を受けており、W杯本番への出場も絶望視されている。

前半、三笘の代役として起用されたのは左WBの中村敬斗と、左シャドーの伊東純也だった。伊東は本来右サイドを主戦場とする選手だが、三笘不在の穴を補うために左への適応を求められた。試合を通じて惜しいシーンをいくつか作り出したものの、三笘のような個人での突破と局面打開という圧力を生み出すには至らなかった。

3月のウェンブリーでは、その三笘が後半から入り決勝弾を叩き込んでイングランドを1-0で撃破した。日本はW杯優勝経験国7か国撃破という金字塔を打ち立て、海外メディアからは「日本は近い将来W杯で優勝する」とまで評されるようになった。その立役者を欠いて本番に臨む事実は、今の日本代表にとって最大のリスクと言っていい。左サイドの設計図を本番前に確立できているかどうかは、グループリーグ突破の命運に直結する問いだ。

直近3試合全勝で北中米へ、初戦はオランダ

この試合の勝利で、日本代表は3月のスコットランド戦(1-0)、イングランド戦(1-0)、そして今夜のアイスランド戦(1-0)と、直近3試合で3連勝。いずれも1-0という僅差ながら、負けなしで本番を迎えることになった。

ただし内容を見れば、3試合全てが1-0だ。圧勝で仕上がりを誇示できているとは言い難く、前半に決定機を多く作りながら決め切れないという課題は繰り返されている。FIFAが指摘した「攻撃の再現性」の問題は、壮行試合3試合を終えてもなお解消されていない。

日本代表はアイスランド戦後、メキシコ・米国での事前合宿を経て本番へ向かう。グループリーグの初戦は6月15日(日本時間午前5時)、オランダ代表戦だ。続いて6月21日にチュニジア、6月26日にスウェーデンとの計3試合で、グループステージを戦い抜く。

吉田麻也という時代の象徴が一区切りを告げ、冨安健洋という守備の要を取り戻し、小川航基の土壇場弾で勝利した今夜の試合は、W杯に臨む日本代表の「現在地」をそのまま映し出した一夜だった。課題もある、強さもある。その両方を抱えたまま、SAMURAI BLUEは世界最大の舞台へと歩を進める。

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