荒木遼太郎がベルギーリーグデビュー戦でいきなり結果を残した。シント=トロイデンVV(STVV)は8月30日のジュピラー・プロ・リーグ第4節でロイヤル・アントワープと対戦。荒木の先制ゴール、松澤海斗の追加点などで4-1の快勝を収め、今季リーグ戦初勝利を挙げた。
荒木遼太郎、リーグ初先発で開始9分にゴール
STVVにとって、ヨーロッパリーグ・プレーオフ敗退からわずか中2日で迎えたアントワープ戦。フレデリック・デ・メイヤー監督は先発メンバーを変更し、今夏に鹿島アントラーズから加入した荒木を攻撃的なポジションで起用した。
荒木にとっては、これがジュピラー・プロ・リーグ初出場であり初先発だった。
そのチャンスをものにするまで、わずか9分しかかからなかった。
STVVが敵陣へ攻め込むと、荒木も攻撃に参加。アントワープGK野澤大志ブランドンの対応からゴール前で混戦となり、アルブノール・ムヤのシュートがDFに阻まれる。こぼれてきたボールに反応した荒木が右足でボレーシュートを放ち、ゴール左下へ突き刺した。
ベルギーリーグで最初の先発機会を与えられ、序盤のチャンスをそのままゴールへ変えた。海外初挑戦の荒木にとって、これ以上ないスタートである。
なお、「デビュー戦初ゴール」という表現には少し注意が必要だ。荒木はすでにUEFAヨーロッパリーグ・プレーオフのオモニア戦でSTVVの公式戦に出場している。今回がクラブでの公式戦デビューではなく、正確には「ベルギーリーグデビュー戦での初ゴール」となる。
一度は同点も、STVVが終盤にアントワープを突き放す
荒木のゴールで先行したSTVVだったが、試合はそのまま簡単には進まなかった。
後半58分、アントワープは途中出場のスナイデル・ポロソがCKからヘディングシュートを決め、1-1に追いつく。
ホームのアントワープが勢いに乗ってもおかしくない展開だった。しかし、ここから試合を動かしたのはSTVVの交代選手たちである。
61分から入ったサメド・バジュダルが73分、ライアン・メルランのパスからGK野澤の頭上を抜く巧みなシュートを決めて2-1。STVVが再びリードを奪う。
この試合までアントワープはリーグ戦無敗だったが、終盤になるにつれてSTVVのカウンターを止められなくなった。
アントワープが59%前後のボール保持率を記録した一方、シュート数ではSTVVもほぼ互角。相手にボールを持たれる時間があっても、奪った後の攻撃で効率良く決定機を作ったことが4得点につながった。
松澤海斗は投入直後のファーストプレーで追加点
荒木が75分に石渡ネルソンと交代すると、同じタイミングでムヤに代わってピッチに入ったのが松澤海斗だった。
そして松澤は、ほとんど時間を必要としなかった。
76分、メルランが相手最終ラインの背後へパスを送ると、松澤が一気に抜け出す。そのままGK野澤との1対1まで持ち込み、右足で冷静にゴール。STVV公式が「ファーストプレー」と表現するほど、投入直後の一撃だった。
スコアは3-1。この得点によって、アントワープが再び追いつく可能性は大きく遠のいた。
さらに松澤は終盤の攻撃でも存在感を示した。90分にはカウンターから左サイドでボールを運び、逆サイドへ展開。最後はイリアス・セヴァウイの折り返しをバジュダルが仕留め、4-1となった。
松澤自身にアシストは付かなかったものの、途中出場から得点だけでなく4点目につながる攻撃にも関わった。
昨季も松澤は途中出場から重要なゴールを決めている。先発だけではなく、相手の運動量が落ちた時間帯に投入され、ドリブルやスピードで局面を変えられることは大きな武器になる。
鹿島から欧州へ、荒木が求めていた「結果」
荒木は2026年7月、鹿島アントラーズからSTVVへ完全移籍した。
24歳で迎えた初の海外挑戦。背番号は鹿島でも背負っていた71を選び、加入時にはゴールやアシストという数字で勝利に貢献したいという意欲を示していた。
荒木の特徴を考えれば、今回のゴールは偶然の出来事として片付けるべきではない。
鹿島時代の2021年にはJ1リーグ36試合で10得点。FC東京へ期限付き移籍した2024年にも29試合7得点を記録した。典型的なストライカーではないにもかかわらず、ペナルティーエリア付近へ顔を出し、自らフィニッシュまで持ち込めることが強みの一つだった。
STVVも獲得時に、荒木について視野の広さ、ドリブル、運動量、ライン間でボールを受ける能力、ラストパスに加え、自らゴールを狙える点を評価していた。
アントワープ戦の先制点は、その評価をベルギーでも早速証明した形になる。
「途中出場2試合」からリーグ初先発、序列を上げる一撃に
さらに重要なのは、このゴールが生まれたタイミングである。
荒木は加入直後から絶対的な先発として扱われていたわけではない。
STVVでの公式戦初出場は8月21日のヨーロッパリーグ・プレーオフ、オモニアとの第1戦だった。61分から途中出場すると、敵地で行われた第2戦でも71分から投入された。
つまり、
「途中出場」
「途中出場」
「リーグ初先発」
「初ゴール」
という流れで短期間にステップを上げている。
特に荒木のような攻撃的MFは、チーム内での役割を確立するまでに時間がかかる場合がある。
相手最終ラインと中盤の間、いわゆる「ライン間」でボールを受けることを得意とする選手は、周囲との距離感や味方の動き方を理解する必要があるためだ。日本で同じポジションをこなしていても、新しいリーグ、新しい戦術、新しい味方の中ですぐに同じプレーができるとは限らない。
そうした状況で、リーグ初先発から得点という明確な数字を残した意味は大きい。
もちろん1試合でレギュラーが保証されるわけではない。それでも監督が次の先発を考える際、荒木を外しにくくする材料にはなる。
EL敗退から中2日、現地でも高く評価された4-1
チーム全体にとっても、この勝利には通常の勝ち点3以上の意味があった。
STVVは3日前、UEFAヨーロッパリーグ・プレーオフ第2戦でオモニアに2-4で敗戦。第1戦を1-0で制していたものの、2試合合計3-4で逆転され、ヨーロッパリーグ本大会進出を逃していた。今後はカンファレンスリーグへ回るものの、大きな目標を一つ失った直後だった。
そのうえ中2日のアウェーゲーム。コンディション面でも精神面でも難しい条件だった。
しかしSTVVは、リーグ戦でまだ敗れていなかったアントワープを敵地で4-1と撃破した。
ベルギーの地元メディア『TV Limburg』も「説得力のある4-1」と伝え、『Nieuwsblad』もSTVVの今季初勝利を大きく報道している。デ・メイヤー監督も試合後、昨季見せていた質の高いSTVVが戻ってきたという趣旨でチームを評価した。
開幕後のSTVVはロンメルと1-1、サークル・ブルージュとは3-3。勝ち切れない試合が続いていた。
そこへ欧州カップ戦での敗退も重なっただけに、4得点を奪った今季リーグ初勝利は大きい。勝ち点を5とし、1試合消化が少ない状態で順位を9位まで上げた。
両チームで日本人9選手、ベルギーで存在感増す日本勢
日本のファンにとって、この試合でもう一つ見逃せないのが日本人選手の多さだ。
STVVではGK小久保玲央ブライアン、畑大雅、谷口彰悟、荒木遼太郎が先発。途中から石渡ネルソン、松澤海斗、新川志音も出場し、合計7人の日本人選手がピッチに立った。
さらにアントワープでも、野澤大志ブランドンと綱島悠斗が先発している。
両チームを合わせれば、この一戦だけで9人の日本人選手が出場したことになる。
しかも単に人数が多かっただけではない。
荒木が先制点を奪い、松澤が3点目を決め、そのゴールを守っていたのは日本代表経験を持つ野澤だった。日本人選手がベルギーリーグでチームの中心として直接対決する光景は、もはや珍しい例ではなくなりつつある。
STVVは長年にわたって日本人選手の欧州挑戦を支えるクラブとして知られてきたが、現在は「日本人が所属しているクラブ」という段階を越え、複数の日本人選手が実際の戦力としてポジションを争っている。
荒木にとっても、谷口や小久保、畑ら日本人選手が多い環境は欧州適応を助ける要素になる。その一方で、試合に出るためには日本人同士も含めた厳しい競争を勝ち抜かなければならない。
初ゴールはゴールではなく、欧州でのスタート地点
リーグ初出場で初先発、そして開始9分に初ゴール。
数字だけを見れば、荒木のベルギーリーグ挑戦は理想的な形で始まった。
ただし、本当の評価はここから決まる。
荒木に求められるのは、一度の得点だけではなく、狭いスペースで前を向く技術、味方との連係、チャンスメイク、守備への貢献、そして継続的なゴールやアシストである。
一方で、初先発の試合で結果を残したという事実は変わらない。監督から新たな機会を与えられるためには、最も分かりやすいアピールとなった。
そして松澤もまた、途中投入直後のゴールで存在感を示した。
荒木が先発から結果を残し、松澤がベンチから試合を決める。欧州カップ戦も控えるSTVVにとって、このように異なる形で違いを作れる攻撃陣が増えることは大きい。
欧州挑戦を始めたばかりの荒木にとって、アントワープ戦の一撃はゴールではなくスタート地点である。
ベルギーリーグ初戦で示した得点力を継続し、STVVの攻撃を担う存在へと序列を上げられるのか。今後の起用にも注目が集まりそうだ。

