冨安健洋がクリスタル・パレス加入後初先発を果たし、鎌田大地もスタメンに名を連ねた。しかし、マンチェスター・シティを迎えた一戦は1-4の完敗。日本代表2人がピッチに立ったパレスは開幕2連敗となった。
冨安が移籍後初先発、鎌田もスタメン
現地時間8月28日に行われたプレミアリーグ第2節。クリスタル・パレスは本拠地セルハースト・パークでマンチェスター・シティと対戦し、1-4で敗れた。
日本のファンにとって大きな注目点となったのが、冨安健洋の先発起用である。
開幕節では途中出場だった冨安だが、この日は3-4-2-1の3バック左に入り、パレス加入後初めて公式戦のスターティングメンバーに名を連ねた。
鎌田大地もアダム・ウォートンとともに中盤中央で先発。つまりパレスは、プレミアリーグ屈指の攻撃力を持つシティを相手に、日本代表2人をセンターラインに配置して戦ったことになる。
冨安にとっては、新天地での序列を考えるうえでも重要な試合だった。
開幕戦の途中出場から第2節で先発へ。しかも相手はマンチェスター・シティである。ピエール・サージュ監督が、ハイレベルな相手との一戦で冨安をスタートから使ったこと自体は、今後につながる材料と考えていいだろう。
ただし、試合はパレスにとって非常に厳しいものとなった。
パレスにもチャンスはあったが、ハーランドが先制
1-4という最終スコアだけを見ると、シティが最初から最後まで一方的に押し込んだようにも映る。
しかし、パレスにも前半はチャンスがあった。
開始直後にはエディ・エンケティアがシュートを放ち、シティGKジャンルイジ・ドンナルンマにセーブを強いる。鎌田にもシュートチャンスが訪れた。
さらに33分にはジェレミ・ピノのFKからヨルゲン・ストランド・ラーセンがゴールに迫り、その流れからタイリック・ミッチェルにも好機が生まれている。
パレスがまったく攻撃できなかったわけではない。
それでも、決定的な違いを作ったのがシティの得点力だった。
17分、アントワーヌ・セメンヨが右サイドからクロスを供給すると、中央に入ったアーリング・ハーランドがヘディング。世界屈指のストライカーがゴール前で強さを見せ、シティが先制する。
シティは大量のチャンスを作らなくても、相手が一度スペースを与えれば仕留められる。
パレスがいくつかの好機を得点につなげられなかった一方で、シティはハーランドが一瞬を逃さなかった。この決定力の差が、最終的なスコアにもつながっていった。
シェルキが後半に爆発、反撃ムードを3分で消す
パレスにとって最も痛かったのは後半の失点である。
54分、フィル・フォーデンがボールを前方へ運ぶと、ラヤン・シェルキがドリブルでパレス守備陣の間へ侵入。そのままゴールを奪い、シティがリードを2点に広げた。
パレスにも反撃のチャンスは訪れる。
56分、ピノが直接FKを狙うと、ボールはクロスバーを直撃。その跳ね返りがドンナルンマに当たってゴールへ入り、公式記録ではドンナルンマのオウンゴールとなった。
これで1-2。
ホームのパレスにとっては、一気に試合の流れを引き戻せる可能性が生まれた場面だった。
ところが、そのわずか3分後である。
再びシェルキがパレスゴールを破り、シティが1-3とした。
1点差になった直後に追いつけるか。それとも再び突き放されるか。
試合の行方を大きく左右する時間帯で、シティは後者を選ばせた。
終盤の84分にはフォーデンのパスからハーランドがこの日2点目を決め、1-4。パレスにとっては非常に厳しいスコアで試合終了を迎えた。
冨安は74分までプレー、4失点をどう評価すべきか
注目された冨安は74分までプレーし、アクセル・ディサシと交代した。
記録上は37タッチで、守備介入は11回。パレスがボールを保持できなかったため、攻撃の組み立てに参加するというより、守備対応に追われる時間が長かった。
ここで注意したいのが、「冨安先発=4失点」という結果だけでパフォーマンスを判断することである。
もちろん、3バックの一角として4失点という結果を完全に切り離すことはできない。
しかし、この日のシティがパレスに突きつけた問題は、センターバック1人が個人能力だけで解決できるものではなかった。
シェルキは中央からハーフスペースまで自由に移動する。フォーデンもライン間に顔を出し、そこへハーランドが最終ラインを押し下げる動きを加える。
守備側からすると、「誰が誰を見るのか」を一瞬でも迷えば、そのスペースを使われる。
特にシェルキのようにドリブルで最初の守備者を外せる選手がいると、状況はさらに難しくなる。1人が抜かれれば次のDFがカバーへ出る必要があり、その瞬間に別の場所が空くからだ。
冨安も59分のシェルキの得点時にはシュートを止める側として対応している。
ただ、これを単純に冨安個人の失点と評価するのは適切ではない。シティはその前段階から複数の選手を動かし、パレスの守備ブロックそのものを崩していた。
むしろ冨安について重要なのは、パレス加入後の公式戦で初めて先発し、シティを相手に74分間プレーしたことである。
開幕戦の途中出場から一歩進んだことは確かだ。
ここから連続して先発を任されるようになれば、パレスでの序列が本格的に変化していると判断できるだろう。
鎌田は2試合連続フル出場も、攻撃では苦戦
鎌田は開幕戦に続いてフル出場した。
この事実だけでも、サージュ体制における鎌田の立ち位置が小さくないことは分かる。
ただし、シティ戦では攻撃面で存在感を発揮するのは難しかった。
記録は50タッチ、シュート1本。xG(ゴール期待値)は0.03、xA(アシスト期待値)は0.02にとどまった。
一方、デュエルでは9回勝利している。
この数字からも、この日の鎌田に求められた仕事が見えてくる。
本来なら鎌田は、ボールを受けて前を向き、前線との間をつなぐところに特徴がある。ところがシティに72%ものボール支配を許したことで、攻撃を組み立てるより相手を追いかける時間が圧倒的に長くなった。
ウォートンと組んだ中央2枚に対し、シティはフォーデンやシェルキを中央へ侵入させてくる。
その結果、鎌田とウォートンは横にも縦にも広い範囲をカバーする必要があった。
54分の2失点目につながった一連のプレーでは鎌田がボールを失っているため、本人にとって悔いの残る局面ではある。
ただし、その後にフォーデンの前進とシェルキのドリブル突破があり、複数の守備者が対応している。これも「鎌田のミスだけで失点した」と単純化するべき場面ではない。
むしろ問題は、ボールを失った瞬間にシティの前進を止められないパレス全体のトランジション守備にあった。
支配率28%対72%、4失点以上に気になる数字
この試合を理解するうえで、最終スコア以上に重要なのがスタッツである。
ボール支配率はパレス28%に対してシティ72%。
成功パスはパレス234本、シティ721本。パス成功率も82%対93%と大きな差がついた。
そして枠内シュートは1対9だった。
xGではパレス0.57、シティ1.45である。
興味深いのは、1-4というスコアほどxGには巨大な差がないことだ。
これはシティが必ずしも大量の決定機を作り続けて4得点したわけではなく、シェルキやハーランドがシュートを高確率で得点に変えたことを示している。
言い換えれば、パレスはシティの圧倒的なフィニッシュ能力にも苦しめられた。
一方で、「だから4失点は不運だった」と結論づけるのも違う。
枠内シュートは1対9で、成功パスには約500本もの差がある。
パレスは自陣からボールを前進させ、相手陣内で攻撃を継続することがほとんどできなかった。
ここが冨安の評価ともつながってくる。
ボールを奪ってもすぐにシティへ返してしまえば、最終ラインは何度も守備を繰り返すことになる。どれだけ優秀なDFでも、90分間にわたって高強度の攻撃を受け続ければミスやズレが発生する確率は上がる。
つまりパレスの4失点は、「DFが守れなかった」だけではない。
攻撃を成立させられず、守備時間そのものを減らせなかったことも大きな問題だったのである。
シェルキとハーランド、シティの個の力が違いを作る
そして、この試合ではシティ側のクオリティも無視できない。
特に目立ったのがシェルキだ。
開幕戦のボーンマス戦で途中出場から2アシストを記録すると、今度はパレス戦で2ゴール。新シーズン序盤からシティ攻撃陣で強烈な存在感を放っている。
海外でも、この試合の主役としてシェルキを評価する報道が目立った。
さらにハーランドも2得点。
フォーデンは前進とチャンスメイクに関与し、シェルキはドリブルとフィニッシュ、ハーランドはペナルティーエリアで決定力を発揮する。
タイプの異なるタレントが同時に動くため、守備側は非常に難しい選択を迫られる。
ハーランドを警戒して最終ラインを下げれば、中盤とDFラインの間にシェルキやフォーデンが入れる。
逆にセンターバックが前へ出れば、背後にはハーランドがいる。
冨安を含むパレスの守備陣が苦しんだ背景には、このシティの攻撃構造があった。
エンツォ・マレスカ監督の下でシティは開幕2連勝。まだシーズン序盤とはいえ、新体制が順調にスタートしていることを示す一戦にもなった。
開幕2連敗のパレス、冨安と鎌田は次節も先発できるか
一方のパレスは厳しいスタートとなった。
開幕節のエヴァートン戦を0-2で落とし、シティ戦も1-4。2試合を終えて0ポイントで、得失点差はマイナス5となった。
しかも今季ここまでの得点は、シティ戦で記録されたドンナルンマのオウンゴールによる1点だけである。
守備だけでなく、攻撃にも明確な課題がある。
サージュ監督の下でチームを作り直している段階とはいえ、プレミアリーグでは結果を待ってくれる時間は長くない。
その中で日本のファンが注目したいのが、冨安と鎌田の序列である。
鎌田は開幕から2試合連続フル出場しており、現時点では中盤の重要な選択肢になっている。
冨安も開幕戦の途中出場から今回の初先発へとステップアップした。
1-4という結果は厳しい。それでも、シティ戦だけを切り取って冨安の先発起用が失敗だったと判断する段階でもない。
重要なのは次である。
次節以降も冨安が3バックの一角に入るなら、加入直後のバックアップという位置からレギュラー争いへ本格的に踏み込んだと見ることができる。
そして鎌田についても、シティほどボールを支配されない試合で、攻撃面の良さをどこまで出せるかがポイントになる。
日本代表2人がそろって先発した注目のシティ戦は、1-4という厳しい結果に終わった。
ただし、パレスにとって本当に問われるのはこの敗戦そのものではない。72%の支配率を許したシティ戦で浮き彫りになった攻守の問題を修正し、次の試合でどのような形を作れるか。
冨安の初先発を一過性の起用に終わらせないためにも、次節は重要な試金石となりそうだ。

