伊東純也が今季初ゴールを決めた。ゲンクはジュピラー・プロ・リーグ第4節でSKベフェレンを4-0で撃破。伊東は得点だけでなく先制点につながる崩しにも関わり、前節4失点の悪夢を払拭する快勝の中心となった。
伊東純也が今季初ゴール、ゲンクは4-0完勝
現地時間8月28日に行われたベルギー1部ジュピラー・プロ・リーグ第4節で、ゲンクはホームにSKベフェレンを迎え、4-0で勝利した。
伊東は右サイドのアタッカーとして先発。横山歩夢も左サイドに入り、日本人選手2人が両翼を務めた。
試合は序盤からゲンクが得点を重ねる。9分にラフィウ・ドゥロシンミのPKで先制すると、19分に伊東が追加点。さらに43分にはヨスエ・コンゴロが決め、前半だけで3点のリードを奪った。
後半74分にはヨリス・カイェンベが4点目。ゲンクは大量得点だけでなく無失点で試合を終え、今季2勝目を手にした。公式記録では伊東の得点は19分となっている。
伊東にとっては2026-27シーズンのリーグ戦初得点。今季は開幕から4試合連続で先発しており、これでリーグ戦4試合1得点1アシストとなった。FotMobでは4試合で359分に出場し、平均評価7.68を記録している。
33歳となった現在も、伊東はゲンクの攻撃に欠かせない存在である。
19分、前線プレスから伊東が冷静に仕留める
伊東の得点は、単純なカウンターやサイド突破から生まれたものではなかった。
19分、ゲンクが相手陣内で集団的にプレッシャーをかけると、ベフェレンのクリスティアン・ブリュルスが自陣ペナルティーエリア付近でボールを失う。
そのミスを見逃さなかったのが伊東だった。
こぼれたボールを素早く回収すると、そのままGKヨハネス・シェンクと1対1に。慌てることなく低いシュートを流し込み、リードを2点に広げた。
ゲンク公式も、この得点について「集団的なプレス」の結果として相手がボールを失い、伊東がそれを回収して冷静に仕留めた流れを伝えている。
伊東といえば、縦への爆発的なスピードやドリブル突破、クロスといった攻撃面がまず注目される選手である。しかし今回のゴールでは、別の強みが表れていた。
相手がボールを失いそうな瞬間を察知し、前向きにボールを拾える位置まで押し上げていたこと。そして奪った後に余計なタッチを増やさず、一気にシュートまで持ち込んだ判断である。
前線から守備を行い、そのまま攻撃へ移る。
ジェス・トルップ監督が求めるアグレッシブなサッカーを象徴するような得点だった。
得点だけではない、先制PKにも伊東が関与
伊東が勝利へ与えた影響は、自身の1ゴールだけではない。
ゲンクが先制した9分の場面にも深く関わっている。
右サイドで伊東がザカリア・エル・ワーディとワンツー。伊東との連係からエル・ワーディがペナルティーエリアへ侵入すると、相手選手との接触で倒れた。
主審は当初プレーを続行したものの、VARの介入を受けて映像を確認。最終的にゲンクへPKが与えられた。
これをドゥロシンミが決めて1-0となった。
記録上、伊東にはこの場面でアシストは付かない。それでも、先制点を生み出した攻撃の起点の一つが伊東だったことは重要である。
そして約10分後には自ら2点目を奪った。
つまりゲンクが試合の主導権を完全に握ることになった最初の2得点に、伊東はどちらも直接的に関与している。
今季初ゴールという数字だけを見れば「1得点した試合」である。しかし実際の試合内容を見ると、相手を崩す連係、前線からの守備、ボール奪取後のフィニッシュという複数の局面で存在感を示した。
伊東のパフォーマンスを評価するうえでは、この部分まで見る必要がある。
前半だけで3得点、伊東は追加点にも迫る
2-0としてからも、ゲンクは攻撃の手を緩めなかった。
43分にはコンゴロが3点目。ドゥロシンミが相手DFを背負ってボールを収め、イェッペ・エレンビュワを経由して、攻撃参加したコンゴロがフィニッシュした。
センターバックのコンゴロが自ら攻撃をスタートさせ、そのままペナルティーエリアまで走り込んだ形であり、ゲンクの勢いを象徴する得点だった。
さらに前半終了間際には伊東が再びゴールへ迫る。
ベフェレン公式の試合レポートによれば、伊東のシュートはポストを直撃。その後もゲンクが攻め込み、ベフェレンにとっては4失点目を覚悟するような時間帯となった。
伊東にとっても2得点目を奪える可能性が十分にあった。
右サイドに張ってクロスを供給するだけでなく、ボールが逆サイドにある場面では中央へ入り、ゴールを狙える位置まで進出する。
古典的なタッチライン際のウインガーではなく、得点を取るためにペナルティーエリア周辺へ入っていく動きも、現在の伊東には求められている。
33歳という年齢を考えれば、90分を通して毎回スピード勝負を仕掛け続ける必要はない。
走る場所、ボールを受ける場所、プレッシャーをかける瞬間を選択しながら試合へ影響することが、現在の伊東の大きな武器になっている。
4-0以上に重要だった「無失点」
この試合を理解するうえで欠かせないのが、1週間前に行われたアントワープ戦である。
ゲンクは敵地で一度1-0と先行されたものの、そこから反撃。後半には横山も得点し、一時は4-1までリードを広げていた。
普通なら、そのまま勝ち点3を持ち帰らなければならない展開である。
ところが終盤に試合が一変した。
アントワープに立て続けにゴールを許し、最終的には4-4。3点あったリードを守り切れず、勝ち点2を落とす結果となった。
試合後、トルップ監督はクラブ公式を通じて、このような経験は長い指導者人生でもほとんどないという趣旨のコメントを残し、試合を詳しく分析して失敗から学ぶ必要性を強調していた。
選手側からも、リード時にはより安定して試合を進め、ボールを保持しながらコントロールしなければならないとの反省が出ていた。
だからこそ、ベフェレン戦の4-0は単なる大量得点以上の価値を持つ。
トルップ監督は試合前、ここ数週間の攻撃的な内容を評価しながらも、それと同時に「より守備面での安定」を求めていた。
そしてハーフタイムにも、3-0という大きなリードがありながら、選手たちへ改めて集団としての守備責任を確認したという。
前節は4得点しても勝てなかった。
今節は同じ4得点を奪いながら、失点をゼロに抑えた。
ゲンクにとって本当に重要だった変化は、むしろこちらかもしれない。
「4-0」ほど一方的ではなかったからこそ見えた成長
スコアだけを見ればゲンクの圧勝である。
ただし、後半まで90分間ずっとゲンクが相手を押し込み続けた試合だったわけではない。
ベフェレンはハーフタイムに3選手を同時投入。後半はボールを保持する時間を増やし、ゲンク陣内へ進入する場面も作った。
ベフェレン公式も、後半については自分たちがより良い時間を作ったという認識を示している。
ここは前節との比較で興味深い。
アントワープ戦では3点差になってから流れを失い、相手の勢いを止められなかった。
一方でベフェレン戦では、3-0で迎えた後半に相手が修正し、試合のバランスが変化しても失点しなかった。
無理に4点目、5点目を取りに行くだけではなく、危険な時間帯を耐える。
そして74分、少ないチャンスを生かしてカイェンベが4-0とした。
前節の失敗からわずか1週間で、少なくとも結果としては「リードを守りながら試合を終える」という課題に回答を出した形である。
もちろん、1試合だけで守備問題が完全に解決したと判断するのは早い。
それでもトルップ監督が要求した修正を次の試合で示したことは、シーズン序盤のゲンクにとって前向きな材料だ。
33歳の伊東、4試合連続先発で変わらぬ存在感
伊東は今季、リーグ開幕から4試合続けてスタメンに入っている。
4試合で359分出場という数字からも分かる通り、基本的には試合終了までピッチに残る主力として扱われている。成績も1得点1アシストとなり、得点への直接的な貢献も出始めた。
33歳のアタッカーという点を考えれば、この起用状況は興味深い。
一般的に、スピードを最大の武器としてきたウインガーは30代に入るとプレースタイルの変化を迫られる。
しかし伊東は、単純な最高速度だけに頼る選手ではない。
ワンタッチで味方を使う判断、ボールを受ける前の位置取り、クロスを入れるタイミング、スペースへ走り込む動き、そして守備時のプレス。
長年の欧州経験によって、試合へ影響する方法そのものが増えている。
ベフェレン戦のゴールも象徴的だった。
サイドでDFを置き去りにして決めたわけではない。チーム全体のプレスに連動し、相手がミスした瞬間に最も危険な場所へ入り、そのままゴールを奪った。
若いころから持っていたスピードに、経験による判断が加わっている。
ゲンクの現在の登録メンバーには若い選手も多く、伊東は単なる右ウイング以上の立場になりつつある。
攻撃で違いを作りながら、試合の流れを知るベテランとしてチームを支えることも求められている。
トルップ監督との再タッグも伊東には追い風
今季の伊東を考えるうえで、もう一つ注目したいのがトルップ監督との関係である。
ゲンクは2026年7月、ジェス・トルップの監督就任を発表した。契約は2029年までの3年間。トルップは2020-21シーズンにも短期間ゲンクを率いており、今回がクラブへの復帰となる。
つまりトルップは、伊東を初めて見る指揮官ではない。
伊東が以前ゲンクでプレーしていた時代にも、その特徴を実際のトレーニングや試合で確認している。
6年ほどが経過し、伊東自身のプレースタイルやチーム内での立場は変化した。それでも新体制のスタートから4試合連続先発している事実を見る限り、トルップが伊東を重要な戦力として評価していることは明らかだ。
現在のゲンクでは、伊東と横山という日本人2人が左右のアタッカーとして同時に起用される形も生まれている。
ベフェレン戦でも横山が左、伊東が右に配置された。
横山はまだ成長過程にある若いアタッカーであり、伊東とはキャリアの段階が大きく異なる。
その2人が左右から攻撃を担う構図は、日本のファンにとっても見どころの一つになるだろう。
次節はアンデルレヒト戦、真価を測る一戦へ
ゲンクにとって次のリーグ戦は、9月6日に行われるアンデルレヒトとのアウェーゲームである。
ベフェレン戦では4得点、無失点。
伊東には今季初ゴールが生まれ、チームとしても前節の4-4から立て直すことに成功した。
ただし、この勝利を本格的な上昇につなげられるかどうかは次戦以降にかかっている。
ゲンクが目指しているのは、単に中位へ入ることではなくベルギー国内で上位を争うことだ。トルップ監督の就任時にも、クラブは再びトップ争いへ加わる意思を明確にしていた。
そのためには、ベフェレン戦で見せた前線からのプレスと攻撃力だけでなく、アントワープ戦で問題になったゲームコントロールを強豪相手にも再現する必要がある。
伊東にとっても同様だ。
今季初ゴールは一つのきっかけにすぎない。
4試合連続先発という信頼を得ている中で、ゴールやアシストを継続的に積み重ねられるか。そして33歳となった今もゲンクの右サイドから違いを作り続けられるか。
ベフェレン戦の1ゴールは、その可能性を改めて示した。
何より印象的だったのは、得点そのものだけではない。
先制PKにつながる連係に関わり、前線からのプレスで2点目を自ら生み出し、さらに追加点にも迫った。
伊東純也は今季も、ゲンクの攻撃を動かす中心選手の一人である。

