シント=トロイデンVVのUEFAヨーロッパリーグ(EL)本戦進出は、あと一歩のところで実現しなかった。日本人6選手が出場したオモニアとのプレーオフ第2戦で2-4と敗れ、2試合合計3-4で逆転敗退。谷口彰悟の劇的ゴールでつかんだ第1戦のリードを守り切れず、欧州での戦いはUEFAカンファレンスリーグへと移ることになった。
谷口の劇的弾で得た「1点」を守れず
シント=トロイデンは8月20日に行われたホームでの第1戦を1-0で制していた。
スコアレスのまま迎えた後半アディショナルタイム、主将の谷口彰悟がクロスに合わせて決勝ゴール。クラブにとって重要な欧州カップ戦で、日本代表経験豊富なセンターバックが大仕事をやってのけた。
1点のアドバンテージを持って敵地キプロスへ向かったシント=トロイデンにとって、第2戦は無理に攻める必要のない状況でもあった。
しかし、そのリードは前半のうちに消える。
第2戦でも小久保玲央ブライアン、谷口、石渡ネルソンの日本人3選手が先発。立ち上がりは前から守備に出る姿勢を見せたものの、15分に試合が動いた。
ペナルティーエリア内で小久保にファウルの判定が下され、オモニアがPKを獲得。ロイス・ディオニがこれを決め、試合は1-0、2戦合計でも1-1となった。
第1戦で築いたリードはわずか15分ほどでなくなった。
高速カウンターを止められず、ディオニに2失点
さらに29分、シント=トロイデンは大きなダメージを受ける。
中盤でボールを失うと、オモニアはすぐさま縦へ加速。エヴァンドロが通したスルーパスからディオニが抜け出し、この日2点目を決めた。
ベルギーメディアが試合後に繰り返し指摘したのも、この「ボールを失った後」の脆さだった。
オモニアはボールを奪ってから時間をかけて攻撃を組み立てるのではなく、シント=トロイデン最終ラインの背後へ素早くボールを送り込んだ。現地紙『Nieuwsblad』によれば、デ・メイヤー監督も試合後、オモニアの速い攻守の切り替えと背後への攻撃を事前に警戒していたことを明かしている。
つまり、予想していなかった攻撃にやられたわけではない。
相手の最大の武器を把握していながら、それを止め切れなかったところに、この敗戦の苦しさがある。
第1戦を1-0で終えたチームにとって、本来なら試合が進むほど相手側がリスクを負わなければならない展開だった。しかし自らのボールロストから相手の得意な形を引き出したことで、ゲームプランが崩れていった。
セヴァウイのPKで一度は振り出しに
それでもシント=トロイデンは簡単には崩れなかった。
32分、サメド・バジュダルがペナルティーエリア内で倒されてPKを獲得。イリアス・セヴァウイが右下へ冷静に決め、1-2とする。
2試合合計では2-2。
この時点で再び勝負は完全な振り出しに戻った。
37分には石渡にもゴール前でチャンスが訪れるなど、シント=トロイデンは押し返していく。44分には小久保も好セーブを見せ、追加点を阻止した。
前半終了時点のスコアだけを見れば、決して悪い状況ではなかった。
敵地で2点を奪われながらも1点を返し、合計スコアは同点。後半45分で次の1点を奪えば、再びELリーグフェーズ進出へ大きく近づく。
しかし、その期待は後半開始直後に打ち砕かれた。
後半開始5分の失点が決定的に
50分、オモニアが再びシント=トロイデンの背後を攻略する。
スルーパスに抜け出したディオニがゴールを奪い、ハットトリックを達成。試合は3-1、2試合合計でも3-2とオモニアが再び前へ出た。
この失点の重さは大きかった。
前半終盤に小久保のセーブなどで相手の攻勢をしのぎ、ハーフタイムを挟んで仕切り直した直後だったからだ。
『Nieuwsblad』は、ディオニが谷口とヴァンウェセマールの間を突いて抜け出した場面を紹介。デ・メイヤー監督も3失点目について、守備陣のコミュニケーションの問題があったと振り返っている。
欧州カップ戦のノックアウトラウンドでは、こうした一つのズレが結果に直結する。
シント=トロイデンには最後まで追いつく時間は残されていたものの、再び相手を追いかけなければならない展開となり、攻撃に人数を割く必要性も高まった。
その結果、さらにオモニアのカウンターを受けやすい試合になっていった。
荒木、松澤、畑を投入 日本人6選手がピッチへ
デ・メイヤー監督も動いた。
71分に荒木遼太郎と松澤海斗を投入。81分には畑大雅とウマル・ディウフを送り込み、得点を奪うために選手を入れ替えた。
これによって、この試合に出場した日本人選手は計6人となった。
先発した小久保、谷口、石渡に加え、途中出場の荒木、松澤、畑である。新川志音もベンチ入りしており、日本人選手の存在感が非常に大きなチームであることを改めて示す欧州カップ戦となった。
単純に「日本人が多い」というだけではない。
谷口はキャプテンとして最終ラインを統率し、石渡は中盤で先発。小久保はゴールを守る。さらに追う展開では荒木と松澤が攻撃のカードとして投入され、畑も左サイドに入った。
欧州カップ戦のプレーオフという結果が直接クラブのシーズンを左右する舞台で、日本人選手たちが実際に重要な役割を任されていたことには大きな意味がある。
一方で、結果は厳しかった。
82分、コーナーキックからニコラス・パナヨトゥに4点目を許し、試合は1-4。2試合合計では2-4となり、EL進出は一気に遠のいた。
谷口と荒木が絡み、最後まで抵抗
それでもシント=トロイデンは攻撃を止めなかった。
後半アディショナルタイムの90+2分には、谷口と荒木が攻撃の起点となり、シサコの折り返しをセヴァウイが決める。
セヴァウイはこの日2得点。
試合を4-2、合計スコアを4-3まで縮めた。さらに終盤には畑のパスからヤンセンスに決定的なチャンスが訪れたが、シュートは枠を捉えられない。もし決まっていれば延長戦という場面だった。
最後まで勝負を捨てなかったことは評価できる。
だが、ELのリーグフェーズ進出を懸けた180分という視点で見れば、敵地での4失点はあまりにも大きかった。
ベルギーメディア『VoetbalNieuws』も、シント=トロイデンが攻撃の答えを探し続けた一方、ボールロストが多すぎたことで十分な危険を作れなかったと指摘している。
現地で指摘された「経験の差」
今回の敗戦を考えるうえで興味深いのが、デ・メイヤー監督が試合後に口にした「経験」である。
監督はオモニアについて、このレベルの試合に慣れていることが随所に表れていたとの認識を示している。速いトランジションを警戒していたにもかかわらず、危険な位置でボールを失い、そこを厳しく突かれた。
これはシント=トロイデンにとって今後の欧州戦を考えるうえでも重要なポイントになる。
国内リーグでは多少のミスがあっても挽回できる場面がある。しかし欧州では、異なるスタイルを持つ相手と短期間で2試合を戦い、弱点を狙い合う。
特に今回のオモニアは、シント=トロイデンの背後にスペースが生まれれば迷わずそこを使った。
ディオニのハットトリックは、単なる個人技だけによって生まれたものではない。オモニアが狙っていた攻撃と、シント=トロイデン側のミスが重なった結果だった。
第1戦では谷口のゴールを守り切るゲームができた一方、第2戦では試合をコントロールし切れなかった。この違いを埋められるかが、次の欧州大会でのテーマになる。
EL敗退でも欧州挑戦は続く
シント=トロイデンのヨーロッパリーグ挑戦はここで終了した。
しかし、欧州カップ戦そのものから敗退したわけではない。
ELプレーオフで敗れたシント=トロイデンは、UEFAカンファレンスリーグのリーグフェーズへ進むことが決まっている。2026-27シーズンのカンファレンスリーグには36クラブが参加し、各チームが異なる6クラブと対戦。ホーム3試合、アウェイ3試合の計6試合を戦う。
1位から8位はラウンド16へ直接進出し、9位から24位はノックアウトフェーズ・プレーオフへ。25位以下が敗退となる。
リーグフェーズ第1節は10月15日。対戦相手を決める抽選は8月28日に予定されている。
つまり、日本人選手たちが欧州の舞台で戦う機会はまだ最低6試合残されている。
ELという一段上の舞台を逃した悔しさは大きい。第1戦を1-0で終え、前半終了時点でも合計2-2だっただけに、あと一歩だったという感覚は強いだろう。
ただし、オモニア戦で露呈したトランジション対応や守備のコミュニケーションという課題を、すぐに欧州の実戦で修正できる機会も与えられる。
谷口、小久保、石渡、荒木、松澤、畑ら日本人選手にとっても、カンファレンスリーグは重要な舞台になる。
EL本戦への扉は閉ざされた。しかし、シント=トロイデンの欧州挑戦は終わっていない。
キプロスで味わった4失点の敗戦を次の経験へ変えられるか。今度はカンファレンスリーグで、その力が試されることになる。

