久保建英がレアル・マドリード戦に先発したものの、レアル・ソシエダは1-4で大敗した。序盤には決定機を演出した久保だったが、試合が進むにつれて存在感は低下。一方、ジョゼ・モウリーニョ監督は久保との1対1を警戒していたことを試合後に明かしている。
久保建英が先発、ソシエダはレアル・マドリードに1-4
ラ・リーガ第1節延期分が8月26日にサンティアゴ・ベルナベウで行われ、レアル・ソシエダはレアル・マドリードに1-4で敗れた。
久保は右サイドで先発。前節のレアル・ベティス戦に続くスタメン出場となり、かつて所属したレアル・マドリードを相手に74分までプレーした。
試合は前半40分、フェデリコ・バルベルデからボールを受けたキリアン・エムバペが先制点を記録。しかしソシエダも44分、ルカ・スチッチがネットを揺らして1-1で前半を終えた。
前半だけを見れば、ソシエダはベルナベウで十分に競争できていた。ボール保持でも大きく押し込まれたわけではなく、レアル・マドリードのプレスを外して敵陣へ進入する場面も作っている。
しかし後半に入ると試合の流れは一変する。
60分にエムバペが再びゴールを奪うと、68分にはヴィニシウス・ジュニオールが追加点。さらに80分、エムバペがハットトリックを完成させ、最終的には4-1という大差がついた。
久保が序盤に決定機を演出、先制のチャンスも
久保にとって最大の見せ場は試合序盤だった。
10分過ぎ、敵陣でボールを持った久保は、ペナルティーエリアへ進入したミケル・オヤルサバルへパス。オヤルサバルがシュートまで持ち込んだが、GKティボー・クルトワに阻まれた。
決まっていればソシエダが先制していた可能性の高い場面であり、久保が相手守備の隙を突いて作った明確なチャンスだった。
この時間帯のソシエダは、単純に自陣へ引いて守るのではなく、ボールをつないでレアル・マドリードのプレスをかわそうとしていた。
オヤルサバルが前線から中盤へ下りる動きも使いながら相手の守備基準を揺さぶり、その外側に位置する久保にもボールを届ける形を作っていた。
レアル・マドリードにとっては、簡単な前半ではなかったのである。
前半1-1から後半に崩壊、20分間で3失点
問題は後半だった。
1-1で迎えた60分、エムバペがジュード・ベリンガムとの連係から勝ち越し点を記録。わずか8分後にはベリンガムのボール奪取を起点にヴィニシウスが決め、スコアは3-1となった。
さらに80分にはヴィニシウスからのパスを受けたエムバペが3点目。1-1だった試合が、20分間で一気に1-4まで広がった。
試合全体の数字にも両チームの差が表れている。
ポゼッションはレアル・マドリード51%、ソシエダ49%とほぼ互角だった一方、シュート数は20対10、枠内シュートは11対3。得点期待値でもレアル・マドリードが大きく上回った。
つまりソシエダはボールそのものを全く持てなかったわけではない。しかし、危険なエリアまで進んでシュートへ結びつける質では大きな差があった。
逆にレアル・マドリードは、ソシエダが少しでもボールを失うと、エムバペやヴィニシウスのスピードを生かして一気にゴールへ迫った。
ポゼッションの数字以上に、攻守が切り替わった瞬間の差が大きかった試合だったと言える。
久保はなぜ徐々に存在感を失ったのか
久保自身も、序盤の決定機演出以降は試合への影響力を維持できなかった。
ボールを受けても相手を完全に突破する場面は少なく、ゴール前へ継続的に進入することもできない。最終的には74分、3-1となった後にゴンサロ・ゲデスとの交代でピッチを退いた。
ただし、久保個人の調子だけで説明するのは十分ではない。
前半のソシエダは、オヤルサバルがポジションを変えながらレアル・マドリードの中盤を動かし、そこからサイドへ展開する形を作れていた。
後半になるとレアル・マドリードのプレスが整理され、ソシエダが自陣から前進する難易度が上がった。久保へボールが届く場合も、相手DFと正面から1対1を仕掛けられる状況ではなく、低い位置まで戻って受ける場面が増えていった。
久保の強みは、相手ゴールに近い位置で前を向き、左足へのカットインと縦への突破という複数の選択肢を相手に突きつけることにある。
自陣寄りでボールを受ければ、その脅威は当然小さくなる。
久保自身にもプレー精度や判断を改善する余地はあるが、「久保に預ければ何かが起きる」という形までチームとしてボールを運べなかったことも大きかった。
モウリーニョは久保を警戒「1対1」のリスクを回避
興味深いのは、現地メディアからの評価とは対照的に、レアル・マドリード側が久保を明確な危険人物として見ていたことである。
モウリーニョ監督はハーフタイム、左サイドバックのアルバロ・カレラスを下げ、マルク・ククレジャを投入した。
カレラスは前半早い時間帯に警告を受けていた。
試合後、モウリーニョはこの交代理由について、警告を受けた状態で1対1に強い久保を相手に残り時間を戦わせることをリスクと考えた趣旨の説明をしている。
ここは今回の久保のパフォーマンスを見るうえで重要なポイントである。
久保が90分を通じてレアル・マドリードを圧倒していたわけではない。それでも、対戦相手の監督から見れば、カードを受けたDFに久保との1対1を続けさせるのは危険だった。
ドリブルで抜かれれば決定機につながり、無理に止めれば2枚目の警告を受ける可能性もある。
結果だけを見れば久保はノーゴール、ノーアシストに終わったが、その存在が相手の選手交代の判断に影響していたことは見逃せない。
スペイン現地では久保に厳しい評価
もっとも、スペイン現地メディアによる久保への評価は総じて厳しかった。
共通しているのは「試合への入りは悪くなかったが、時間が経つにつれて影響力を失った」という見方である。
久保は序盤にオヤルサバルの決定機を作ったものの、その後はレアル・マドリード守備を継続的に脅かせなかった。ソシエダの攻撃自体が停滞した後半には、久保も試合から消える時間が長くなった。
ここで注意したいのは、相手から警戒されていることと、実際に良いパフォーマンスを残したかどうかは別の問題だという点である。
モウリーニョが久保を警戒したことは、その能力に対する評価と言える。一方で、久保自身がその警戒を突破し、得点やアシストにつながる仕事まで持っていけなかったことも事実だ。
両方を分けて考える必要がある。
マドリードの後半修正でソシエダの攻撃が機能不全に
久保の影響力低下は、レアル・マドリードのハーフタイム修正とも関係している。
モウリーニョは試合後、前半についてソシエダの動きに対してプレスのポイントをうまく定められなかったことを認めている。
特にオヤルサバルが低い位置へ下りることで、センターバックがついていくのか、中盤が受け渡すのかという判断が難しくなっていた。
しかし後半は、その守備の基準が整理された。
レアル・マドリードが前向きにボールを奪える回数が増えると、ソシエダは攻撃へ移る前にボールを失うようになる。68分のヴィニシウスのゴールも、その象徴的な場面だった。
攻撃の中心である久保やオヤルサバルへボールを届ける前に奪われれば、彼らが個人能力を発揮する機会も当然減少する。
マタラッツォ監督も試合後、最初の60分については世界トップクラスの相手と競争できたという趣旨の評価を示す一方、後半の失点につながったボールロストには課題を認めている。
スコアだけを見ると90分間圧倒されたようにも映るが、実際には1-1からの20分間で試合を壊された側面が強い。
開幕2連敗、久保を生かす形を作れるか
ソシエダにとっては厳しいシーズンスタートとなった。
レアル・ベティスとの初戦を0-1で落とし、今回のレアル・マドリード戦も1-4。開幕2連敗で、2試合5失点である。
久保もベティス戦では先発しながら58分で交代し、今回も74分でピッチを退いた。
もちろん対戦相手のレベルは考慮する必要がある。特にベルナベウでレアル・マドリードと戦う試合だけを材料に、久保やソシエダのシーズン全体を評価するのは早い。
ただ、久保を中心に攻撃を組み立てるのであれば、より高い位置で前を向かせる状況を増やす必要がある。
久保が低い位置まで下がってボールを引き出し、そこから一人で相手陣内まで運ばなければならない状況が続けば、その負担は大きい。
今回も序盤にはオヤルサバルへの決定的なパスを見せ、モウリーニョにも1対1を警戒させた。
能力そのものへの警戒は、対戦相手から十分に受けている。
次に必要なのは、その警戒を利用してチームとして別のスペースを使うこと、そして久保自身が限られたチャンスを数字へ変えることである。
1-4という結果はソシエダにとって重い。しかし、前半の内容と久保が作った決定機を見る限り、全てが機能していないわけではない。
問題は、それを90分間続けられないことだ。
開幕2連敗となったソシエダにとって、久保をどこで、どのような状態でボールに触らせるのか。レアル・マドリード戦で浮き彫りになった課題は、今後の巻き返しを左右する重要なポイントになりそうだ。

