シャビ・アロンソ率いるチェルシーが、プレミアリーグ初陣を勝利で飾った。フラムとのウェストロンドン・ダービーを3-2で制し、ジョアン・ペドロ、モーガン・ロジャーズ、コール・パーマーがそろって得点。新監督が構築しようとしている攻撃の形が、開幕戦から鮮明に表れた。
シャビ・アロンソ、プレミア初陣を3-2勝利
2026-27シーズンのプレミアリーグ開幕節。チェルシーは8月24日、敵地クレイヴン・コテージでフラムと対戦し、3-2で勝利した。
今夏チェルシーの指揮官に就任したシャビ・アロンソにとって、これがプレミアリーグでの監督デビュー戦である。プレシーズンではすでにチームを率いているため、厳密にはチェルシーでの「初采配」ではないが、公式戦初陣という意味では大きな一戦だった。
昨季10位に沈み、欧州カップ戦出場権も逃したチェルシーにとっては、再建の第一歩でもある。レヴァークーゼンをブンデスリーガ無敗優勝へ導いた一方、レアル・マドリードでは短い在任期間に終わったアロンソ。再びプレミアリーグの強豪を率いる立場となり、その初戦には大きな注目が集まっていた。
試合はその期待を上回るほど激しく動いた。最終的なボール保持率はフラム63%、チェルシー37%。チェルシーが試合全体を支配したわけではない。それでも18本のシュートを放ち、枠内シュートは6本。ボールを長く持つことより、奪った後に素早くゴールへ向かう攻撃の鋭さが際立った。
開始31秒、ジョアン・ペドロが歴史的先制弾
チェルシーはキックオフ直後から試合を動かした。
開始わずか31秒、コール・パーマーのアシストからジョアン・ペドロが抜け出し、先制点を記録した。このゴールはプレミアリーグの開幕節における史上最速ゴールとなった。
今季のチェルシーがどのような攻撃を目指すのか、その一端を示す場面でもあった。
後方から時間をかけてボールを運ぶのではなく、前線にスペースができれば一気に縦へ進む。パーマーは最前線に張るのではなく、ジョアン・ペドロの少し後ろから相手守備の間に入り、ワンタッチで決定的なプレーにつなげた。
しかし、フラムも簡単には崩れない。
23分には19歳のジョシュ・キングが同点ゴール。ホームチームが1-1に戻すと、その後はチェルシーの中盤に圧力をかけ、試合の主導権を握る時間帯も作った。フラムのアルバロ・アルベロア監督も試合後、高い位置からプレッシャーをかける自分たちのスタイルを継続する姿勢を示している。
アロンソにとっても、順風満帆なデビュー戦ではなかった。
252億円ロジャーズがデビュー戦で初ゴール
それでもチェルシーには、個人で試合を動かせる選手がいる。
41分、勝ち越しゴールを奪ったのは今夏アストン・ヴィラから加入したモーガン・ロジャーズだった。
移籍金は1億1700万ポンド。為替によって変動するが、日本円では約250億円規模に相当する超大型補強であり、チェルシーが今夏の攻撃再編で最も大きな期待を寄せた選手の一人である。
得点を演出したのはセンターバックのマクサンス・ラクロワだった。
ラクロワが右側から高い位置まで進出し、ペナルティーエリア付近で相手をかわして折り返す。そこへ入ってきたロジャーズが仕留め、2-1とした。ロジャーズにとってはチェルシーでの公式戦デビューゴールである。
この場面は得点者以上に、アロンソの戦術を考える上で興味深い。
3バックという言葉だけを聞けば、センターバックを3人並べる守備的なシステムを想像しやすい。しかし、アロンソの3バックはそうではない。空いているスペースがあればセンターバックにも積極的な前進を求める。
ラクロワが敵陣深くまで入り込んでアシストしたプレーは、その考え方を端的に表していた。
パーマー、ジョアン・ペドロ、ロジャーズが全員得点
チェルシーは後半開始直後にも攻撃陣が結果を残す。
49分、ジョアン・ペドロとの連係からパーマーがゴールを決め、3-1。パーマーは先制点をアシストしただけでなく、自らもネットを揺らした。
結果として、この日のチェルシーの3得点は、
ジョアン・ペドロ、モーガン・ロジャーズ、コール・パーマー。
新シーズンの攻撃を担うことが期待される3人がそろってゴールを記録した。
試合後、アロンソもこの3人を特別に評価している。アロンソはジョアン・ペドロ、ロジャーズ、パーマーについて、チームの非常に重要な部分になると説明し、彼らを中心にチームを作っていく考えを示した。さらに、責任を引き受け、周囲を引っ張る選手になることを求めている。
開幕戦でたまたま3人が得点した、というだけではない。
アロンソ自身が「中心」と位置づけたことに意味がある。
2人の「10番」が生み出すアロンソ型3-4-2-1
フラム戦のチェルシーは、基本的に3-4-2-1に近い配置だった。
最後尾にはジョシュ・アチェアンポン、ラクロワ、レヴィ・コルウィル。マロ・グストとジョレル・ハトが左右の高い位置を取り、中盤にはリース・ジェームズとロメオ・ラヴィア。そしてジョアン・ペドロの後方にパーマーとロジャーズが並んだ。
重要なのはパーマーとロジャーズの立ち位置である。
2人をタッチライン際に固定されたウイングとして使うのではなく、中央とサイドの間にあるスペースを自由に動かす。いわゆる「2人の10番」に近い形だ。
相手センターバックが前へ出ればジョアン・ペドロの背後への動きが生きる。サイドバックが内側へ絞れば、外側をウイングバックが使える。中盤がパーマーを捕まえようとすれば、ロジャーズや後方の選手が空く。
誰を捕まえるべきなのか、相手守備に判断を迫り続ける構造である。
アロンソはレヴァークーゼン時代にも、選手のポジションを固定するより、それぞれが周囲との関係を見ながら立ち位置を変える攻撃を得意としていた。
チェルシーでも同様の方向性が見え始めている。
特にパーマーは、右ウイングとして外側だけでプレーするより、中央へ入ってボールに触れることで影響力が大きくなるタイプだ。ジョアン・ペドロとロジャーズという技術力の高い選手が近くにいることで、パーマー自身もより自由にプレーできる。
アロンソは開幕前からパーマーについて、コンディションが整い、周囲との良い関係を作ることができれば「ワールドクラス」のレベルに到達できるという趣旨の高い評価を示していた。
その期待に、パーマーは開幕戦から応えた。
37%の保持率でも18本、変わり始めたチェルシー
もう一つ興味深い数字がある。
チェルシーのボール保持率はわずか37%だった。一方、シュート数では18本を記録している。フラムは63%保持しながら15本だった。
もちろん1試合だけでアロンソの戦術を断定することはできない。
ただ、少なくともこの試合では「ボールを保持すること」自体が目的ではなかった。
相手が前へ出てきた瞬間にスペースを使い、パーマー、ロジャーズ、ジョアン・ペドロが一気にゴールへ向かう。さらにラクロワのような後方の選手もタイミングを見て攻撃へ加わる。
前体制よりも縦方向へのスピードが強く意識されていたと見ることができる。
現地でも、アロンソのチェルシーについて前体制より速いトランジションとダイナミックな攻撃が目立ったと分析されている。一方で、完成度についてはまだ評価を保留すべき段階だ。
むしろフラム戦では、攻撃の魅力と同時に明確な弱点も見えた。
3-1から追い上げられた守備には課題
パーマーのゴールで3-1とした時点では、チェルシーがそのまま試合を終わらせてもおかしくなかった。
しかし54分、フラムのゴンサロ・ガルシアにゴールを許し、3-2。
そこから試合終了までは、チェルシーが勝利を完全にコントロールしたとは言い難かった。終盤にはアントニー・ロビンソンにも同点のチャンスを作られている。
特に現地で議論になっているのがGKロベルト・サンチェスである。
現地メディアではサンチェスの対応を問題視し、チェルシーが上位争いをする上でGKが依然として不安材料になっているとの指摘もある。ただし、これはあくまで論評であり、2失点すべてをGK個人の責任とするのは適切ではない。
中盤にも課題があった。
この日はモイセス・カイセドを欠き、ジェームズとラヴィアが中央に入った。フラムが強度を上げた時間帯にはボールを落ち着かせられず、自陣へ押し込まれる場面も増えた。現地でも、特に中盤のコントロール不足が改善点として挙げられている。
3得点できる攻撃力は魅力だが、3-1から相手に試合を戻させないこともタイトルを争うチームには必要になる。
アロンソ・チェルシーはまだ、その段階には達していない。
昨季10位から再建へ、方向性は早くも見えた
チェルシーは昨季、プレミアリーグ10位という不本意な成績に終わった。
その反動もあり、今夏はロジャーズやラクロワらを獲得。経験豊富な選手も加えながら、アロンソの下で再スタートを切っている。欧州カップ戦がないこともあり、リーグ戦では上位進出を求められるシーズンとなる。
フラム戦だけで「チェルシーが復活した」と結論づけるのは早い。
守備では2失点し、中盤のコントロールにも問題が残った。GKを含め、シーズンを通して安定させるべきポジションもある。
それでも、昨季との違いは見えた。
ジョアン・ペドロが最前線から動き、パーマーとロジャーズがその後ろを自由に移動する。ウイングバックが幅を作り、センターバックまで攻撃へ参加する。
そしてボールを奪えば、迷わずゴールへ向かう。
シャビ・アロンソがチェルシーで何を作ろうとしているのか。その輪郭は、公式戦最初の90分ですでに見え始めた。
3-2というスコアは、現在のチェルシーを象徴しているのかもしれない。
攻撃には大きな可能性がある。一方で、守備はまだ不安定だ。
完成には時間が必要だが、少なくともアロンソ時代のチェルシーが退屈なチームにはならないことを予感させる初陣だった。

