フェイエノールトの上田綺世が、SCカンブール戦で2試合連続となるゴールを決めた。昨季エールディヴィジ得点王に輝いた日本代表FWは、今季も開幕3試合で2得点1アシスト。チームも敵地で5-2と快勝し、無敗を維持している。
上田綺世がPK成功、フェイエノールトは5-2勝利
フェイエノールトは8月23日、エールディヴィジ第3節でSCカンブールと対戦し、敵地で5-2の勝利を収めた。
日本代表FW上田綺世はセンターフォワードとして先発。DF渡辺剛もセンターバックでスタメンに名を連ね、日本人2選手が攻守の中央を任された。
フェイエノールトは17分、ジヴァイ・ゼヒエルのゴールで先制する。26分にはルチアーノ・ヴァレンテが加点し、42分には相手GKタイス・ヤンセンのオウンゴールで0-3とリードを広げた。
そして前半アディショナルタイム、ジヴァイロ・リードがペナルティーエリア内で倒されてPKを獲得。キッカーを任されたのが上田だった。
上田はゴール右へ落ち着いてシュートを沈め、今季リーグ2得点目。前節ゴー・アヘッド・イーグルス戦に続く2試合連続ゴールとなった。
後半はカンブールに2点を返されたものの、83分にゼヒエルが自身2点目を決めて勝負あり。フェイエノールトが5-2で勝利し、開幕3試合を2勝1分けの勝ち点7とした。
上田と渡辺はいずれも67分までプレーしている。
約30分の中断後に一変、前半だけで4得点
スコアだけを見るとフェイエノールトの一方的な試合にも見えるが、立ち上がりは決して簡単ではなかった。
カンブールはホームで積極的に前からプレッシャーをかけ、フェイエノールトのビルドアップを制限。各選手を一対一に近い形で捕まえるマンツーマン色の強い守備を採用し、序盤はフェイエノールトがボールを前進させるのに苦労する時間もあった。
しかし試合開始から約12分後、フェイエノールトのアウェー席で大量の花火が使用され、試合は約30分間にわたって中断する。
この中断が結果的には試合の流れを変えるポイントになった。
オランダ『Voetbal International』によれば、ジョバンニ・ファン・ブロンクホルスト監督は中断中に選手たちへ修正点を伝えたという。主将ヴァレンテも、再開後にチームが目を覚ましたという趣旨のコメントを残している。
再開後のフェイエノールトはプレーのテンポと縦への意識を高め、短時間で次々とゴールを奪った。
花火使用についてはフェイエノールトも試合後に公式声明を発表し、行為を強く非難。ファン・ブロンクホルスト監督もカンブール側へ謝罪している。
PKだけではない、先制点にも上田が関与
上田の数字として残ったのは1得点だが、試合への貢献はPKだけではない。
17分の先制点でも上田が重要な役割を果たしている。
フェイエノールトが前線へボールを送り込むと、上田に対応するためカンブールGKヤンセンがゴールを離れて前へ出た。上田との競り合いからボールがこぼれ、最後はゼヒエルが無人となったゴールへ流し込んだ。
公式記録上、上田にアシストは付かない。
それでも、上田が最終ラインの背後へ走り、GKをゴールから引き出したことで生まれた得点だった。
上田は昨季25得点を記録したことで、どうしても「最後にゴールを決める選手」として評価されやすい。しかし今季のフェイエノールトでは、相手守備を下げたり、味方が前進するための出口になったりする仕事も求められている。
カンブール戦は、その役割が分かりやすく表れた試合だった。
現地が注目した「上田へのパス」
この試合で興味深かったのは、オランダ『Voetbal International』が上田を使ったプレス回避を戦術的なポイントとして取り上げていることだ。
カンブールは平均年齢が非常に若いチームながら、フェイエノールトを相手に自陣へ引きこもらなかった。敵陣から積極的に選手を捕まえ、フェイエノールトのDFやMFに自由な時間を与えないことを狙った。
こうしたマンツーマン型のプレスには弱点もある。
後方の選手が一人ずつ相手を追えば、前線では大きなスペースが生まれやすい。そのためフェイエノールトは、後方だけで細かくパスをつなぐのではなく、一気に上田へボールを届ける形を使った。
難しい言葉で言えば、上田がプレス回避の「出口」になったということである。
上田がボールを収められれば、フェイエノールトは自陣で相手のプレッシャーを受け続ける必要がない。相手の中盤を一度のパスで越え、そこから周囲の選手が前向きに攻撃へ参加できる。
上田自身のタッチ数は67分間で21回と多くなかった。
しかしセンターフォワードの場合、ボールに触れた回数の多さだけで評価することはできない。相手DFを引きつけ、裏へ走り、長いパスのターゲットになるだけでも周囲のスペースは変化する。
昨季得点王だった上田が、得点以外の局面でもフェイエノールトの攻撃構造に組み込まれていることは、今季を見るうえで重要なポイントになりそうだ。
開幕3試合で2得点1アシスト
上田は今季、ここまでリーグ戦3試合すべてに出場している。
開幕のスパルタ・ロッテルダム戦では無得点だったものの、第2節ゴー・アヘッド・イーグルス戦では1得点1アシスト。そして今回のカンブール戦でもゴールを奪った。
これで開幕3試合2得点1アシストとなった。
昨季の上田はエールディヴィジで25得点を記録し、得点王に輝いている。
それだけの数字を残した翌シーズンは、相手からの警戒も当然強まる。マークされる位置や距離が変わり、昨季と同じプレーをするだけでは簡単にゴールを重ねられない可能性もある。
そのなかで開幕戦こそ無得点だったが、2試合目から連続得点に入ったことは好材料である。
特に前節は流れの中から得点し、今回はPKを成功させた。得点パターンを複数持つことができれば、長いシーズンを通じた安定性にもつながる。
まだ3試合を終えた段階であり、2年連続得点王を語るには早い。
それでも昨季25得点が一度限りの爆発ではなく、今季も継続してフェイエノールトの得点源になれるかという点では、順調なスタートを切ったと言っていい。
PKを任されたことも今季の重要な変化か
今回のゴールでもう一つ注目したいのが、上田がPKを担当したことだ。
上田は昨季25得点を記録したが、その数字はPKへの依存度が高いものではなかった。流れの中から数多くのゴールを奪って得点王となっている。
一方、今夏のプレシーズンではアタランタ戦でもPKを任され、成功させていた。
そして今季の公式戦でもカンブール戦でキッカーを担当した。
もちろん、この1試合だけで上田がフェイエノールトの第一PKキッカーに完全固定されたと断定することはできない。
ただ、今後も継続してPKを任されるのであれば、得点王争いという観点では大きな意味を持つ。
PKを除いて25得点近い数字を残せるストライカーが、さらにシーズンを通してPKを担当するようになれば、得点数を上積みできる可能性は当然高くなる。
昨季を超える数字を目指すうえでも、今季のPKキッカーの序列は注目すべきポイントである。
採点以上に大きかった上田の戦術的価値
現地評価を見ると、上田がこの日の圧倒的な主役だったわけではない。
データサイト『FotMob』では7.6という比較的高い評価を受けた一方、『Voetbal International』の採点は6-。2ゴールを記録したゼヒエルが8を与えられ、試合の主役となった。
上田は67分間でシュート2本、枠内シュート1本、21タッチ。得点は決めたものの、ボールを持って何度も決定機を作ったわけではない。
それでも興味深いのは、『Voetbal International』が採点とは別に、上田へのパスを利用したカンブールのプレス攻略を分析している点だ。
個人採点だけなら「PKで1得点したセンターフォワード」で終わる。
しかし試合全体を見ると、先制点につながる動きがあり、相手のマンツーマンプレスを外すためのターゲットにもなっていた。
FWの評価は得点数に引っ張られやすいが、上田の今季を考えるうえでは、こうした得点以外の役割がどこまで安定するかも重要になる。
渡辺剛も連続先発、日本代表2人が中央を担う
日本人選手では渡辺剛も先発し、上田と同じ67分までプレーした。
渡辺は負傷から復帰した前節ゴー・アヘッド戦に続いてスタメン入り。フェイエノールトでは上田が最前線、渡辺が最終ラインと、攻守の中央に日本代表選手が配置されている。
フェイエノールトは今回5得点を奪った一方、後半には2失点した。
前節ゴー・アヘッド戦でも2-0から2-2に追いつかれており、リードを奪った後の試合運びには改善の余地がある。
今回も4-0と大量リードを奪った後、70分、80分と失点。一時は2-4まで詰められた。
83分にゼヒエルが5点目を決めて危険な展開にはならなかったが、ファン・ブロンクホルスト監督にとっては、5-2という結果だけで満足できる内容ではないだろう。
攻撃陣がゴールを量産する一方で、ゲームを落ち着かせる時間帯をどう作るか。優勝争いを続けるのであれば、今後の重要な課題になる。
昨季得点王から、今季もエースへ
上田を巡っては今夏、フェネルバフチェからの関心もオランダで報じられてきた。
ただし現時点で移籍決定やクラブ間合意が発表されているわけではなく、フェイエノールトではリーグ開幕から3試合連続で先発している。
少なくともピッチ上の序列を見れば、上田は現在もファン・ブロンクホルスト監督が最前線で最初に選ぶ選手である。
昨季25得点で得点王。
今季は開幕3試合で2得点1アシスト。
しかも今回のカンブール戦では、ゴールだけでなく相手のプレスを破るための基準点としても存在感を示した。
上田が今季さらに一段階上のストライカーになるためには、昨季同様にゴールを積み重ねることはもちろん、相手が警戒を強めた試合でもチームの攻撃を前進させられるかが重要になる。
2試合連続ゴールは、その再スタートとして十分な結果だ。
PKキッカーとしての立場、流れの中での得点ペース、そして前線での戦術的な役割。昨季得点王となった上田綺世が、今季もフェイエノールトのエースとして数字を伸ばしていけるのか。序盤戦から注目度は高まっている。

