水戸ホーリーホックが、ついにJ1初勝利をつかんだ。2026年8月22日の明治安田J1リーグ第3節で京都サンガF.C.と敵地で対戦し、3-1で快勝。26シーズンにわたってJ2を戦ってきたクラブが、日本のトップカテゴリーで新たな歴史を刻んだ。
京都を3-1撃破、水戸が待望の勝点3
水戸にとって、クラブ史に残る90分となった。
サンガスタジアム by KYOCERAで行われた京都戦。試合が動いたのは17分だった。水戸が相手陣内で攻撃を続けると、今夏加入した舩橋佑が右足でシュート。ボールはゴール前にいた真瀬拓海に当たってコースが変わり、そのままネットへ吸い込まれた。公式記録では真瀬の得点、舩橋のアシストとなった。
さらに31分、今度は舩橋が左CKを蹴る。ゴール前に入ってきた木本恭生が頭で合わせ、水戸が2-0とリードを広げた。
後半に入るとホームの京都が圧力を強める。それでもGK西川幸之介が決定機を阻止し、流れを完全には渡さない。そして68分、途中出場の加藤千尋が仙波大志からボールを受けると、自ら運んで右足でフィニッシュ。3点目を奪い、試合を大きく水戸へ引き寄せた。
82分に京都の中野瑠馬に1点を返されたものの、それ以上の失点は許さず3-1で終了。Jリーグ公式も、この結果を水戸にとって「記念すべきJ1での初勝利」と位置づけている。
開幕戦では柏レイソルに1-2で敗れ、第2節のガンバ大阪戦は1-1の引き分け。初勝点を取った次の試合で、今度は初勝利へと前進した。3試合で1勝1分1敗。昇格クラブにとって大きな勝点3である。
先制点を呼び込んだ舩橋佑、2アシストで存在感
歴史的勝利の中心にいたのが、24歳の舩橋佑だった。
17分の先制点では、こぼれ球に反応してシュートを放ち、真瀬のゴールにつなげた。そして31分には左CKから木本の追加点をアシスト。前半だけで2得点に直接関与した。
舩橋は2026年6月、鹿島アントラーズから2027年6月30日までの期限付き移籍で水戸に加入した。茨城県古河市出身で、鹿島ではJ1通算58試合に出場。水戸にとっては、トップカテゴリーを知る選手を加える補強でもあった。
試合後には、移籍後に「勝たせる選手にならなきゃいけない」と考えていたことを明かし、アシストという結果でチームの勝利に貢献できたことに手応えを示している。さらに「新しい風を吹かせられた」とも語った。
水戸が初めて挑むJ1で必要としていたのは、単なる人数の補充ではない。厳しい試合の中で違いを作り、勝点につながるプレーができる選手である。その意味で、京都戦の舩橋は補強の狙いを非常に分かりやすい形で示した。
木本恭生の一撃、新戦力がもたらした「J1の経験」
2点目を決めた木本も、今夏に加わった新戦力である。
33歳のセンターバックはFC東京から完全移籍。加入時点でJ1通算216試合に出場しており、セレッソ大阪、名古屋グランパス、FC東京、サガン鳥栖などでトップカテゴリーを経験してきた。
J1初挑戦の水戸にとって、こうした経験値は重要だ。
2025年までの水戸は、クラブとしてJ1リーグを経験したことがなかった。既存選手の能力だけでなく、「J1の試合で何が起きるのか」を知る選手を加える必要があった。その役割を担う一人が木本である。
京都戦では守備だけでなく、セットプレーから結果も残した。舩橋のCKに高い打点で合わせた一撃は、スコアを2-0にすると同時に、水戸が試合を進める上で大きな余裕を与えた。
先制点に関与した舩橋、追加点を奪った木本。そして既存戦力の真瀬、西川、仙波、途中出場の加藤。新加入組だけでも、従来のメンバーだけでもない。異なる経験を持った選手たちが噛み合ったことが、この勝利の価値をさらに高めている。
京都の反撃を耐えた西川幸之介、勝負を決めた3点目
3得点が目立つ試合だったが、水戸が勝点3を持ち帰れた理由は攻撃だけではない。
2点をリードした前半終盤から京都が反撃を強めると、西川幸之介が重要な場面でチームを救った。後半開始直後にも決定機を防ぎ、京都が一気に勢いへ乗ることを許さなかった。現地報道でも、西川のビッグセーブは勝利を引き寄せた大きな要因として伝えられている。
昇格クラブがJ1で戦う場合、90分を通して相手を圧倒できる試合ばかりではない。押し込まれる時間帯に失点を抑え、その後に自分たちのチャンスを得点へ変えられるかが重要になる。
京都戦の68分は、その象徴だった。
京都が前へ出る中、水戸は仙波から加藤へボールをつなぐ。加藤はスペースを使って前進し、そのまま右足で3点目を奪った。
単に2-0を守るだけではなく、相手が前掛かりになったところで追加点を奪ったのである。結果的に82分に1点を返されたことを考えても、この3点目の価値は大きかった。
「J1初勝利」と百年構想リーグの違い
今回の「J1初勝利」については、一つ整理しておきたい点がある。
水戸は2026年3月18日、明治安田J1百年構想リーグで横浜F・マリノスを1-0で破っている。多田圭佑が62分に得点し、90分で勝点3を手にしていた。つまり、「J1クラブを相手に初めて90分で勝った試合」が今回の京都戦というわけではない。
一方で、百年構想リーグは2026/27シーズンへの移行期に行われた特別大会である。今回の京都戦は、通常の明治安田J1リーグに初めて参戦した水戸が挙げたリーグ戦初勝利であり、Jリーグ公式も「J1での初勝利」として扱っている。
この区別は必要だが、百年構想リーグでの経験を切り離して考える必要もない。
横浜FM戦では水戸がシュート数でも上回り、トップカテゴリーの相手に自分たちからゲームを作って勝利した。そこで得た経験、反対にJ1勢との対戦で感じたスピードや強度の差が、現在のチーム作りへつながっていると見ることができる。
京都戦で樹森大介監督は、試合の入りから水戸の良さが出たと評価した。百年構想リーグを含めて積み上げてきた攻撃の形が、正式なJ1リーグで勝点3という結果になったことは大きい。
26シーズンのJ2生活を経てたどり着いた勝利
この1勝が特別なのは、水戸が歩んできた歴史に理由がある。
水戸は2000年にJリーグへ入会してから、2025年まで26シーズン連続でJ2を戦った。長くJ2に所属し続けたことから「J2の番人」と呼ばれることもあったが、2025年に状況は大きく変わった。
最終節で大分トリニータを2-0で破り、勝点70。V・ファーレン長崎と勝点で並びながら得失点差で上回り、クラブ史上初のJ2優勝とJ1昇格を同時に決めた。Jリーグ入会から26シーズン目で、初めてトップカテゴリーへの扉を開いたのである。
だからこそ、京都戦の勝点3は通常の1勝以上の意味を持つ。
昇格そのものがゴールではない。J1へ上がった後、そこで勝つことができるのか。長くJ2を戦ってきたクラブにとって、それは次の大きな壁だった。
その壁を、水戸はリーグ第3節で突破した。
しかも相手は、2025年のJ1を3位で終えた京都。アウェーで3得点を奪っての勝利だったことも、この結果を印象深いものにしている。
水戸は「守るだけの昇格組」ではない
京都戦から見えたもう一つのポイントは、水戸が単純に自陣へ引いて耐えるだけのチームではなかったことだ。
先制点は相手陣内でプレーを続けたところから生まれた。2点目はセットプレー。そして3点目は相手が攻勢を強めた状況でスペースを突いた。
異なる形から3ゴールを奪っている。
試合を通して京都に押し込まれる時間はあった。それでも、西川を中心に耐えるべきところでは耐え、自分たちが前へ出られる局面では迷わず攻撃した。樹森監督が目指してきた、水戸の運動量や組織性を保ちながら攻撃の選択肢を増やす方向性が結果として表れた試合だったといえる。
もちろん、1試合だけで「J1でも問題なく通用する」と判断することはできない。
むしろ重要なのは、柏戦の敗戦、G大阪戦の引き分け、京都戦の勝利と、3試合を通じて勝点の取り方を少しずつ身につけていることである。
J2では優位に立てた局面でも、J1では相手の個人能力によって一気に状況を変えられる。そのカテゴリーで必要なのは、良いサッカーをすることだけではない。苦しい時間を耐え、セットプレーを生かし、交代選手が結果を出し、最後に勝点を残す力だ。
京都戦には、その要素が詰まっていた。
歴史的初勝利はゴールではなく、J1定着への第一歩
水戸にとって、京都戦は記念すべき試合として長く残るだろう。
しかし、2026/27シーズンは始まったばかりである。
J1へ昇格しただけでクラブの挑戦が完結したわけではない。次に必要なのは残留し、さらにトップカテゴリーへ定着することだ。
そのためには、今回のような試合を一度だけではなく繰り返していく必要がある。舩橋や木本といったJ1経験者と、J2優勝を支えた既存戦力をどう融合させるか。押し込まれた時間帯をどう乗り切るか。そして、限られたチャンスをどこまで得点へ変えられるか。
京都戦は、その答えの一部を示した試合だった。
26シーズンのJ2生活を経て、ようやくたどり着いたJ1。そして3試合目で手にした、初めての勝点3。
水戸ホーリーホックのJ1での歴史は、ここから本格的に始まる。

