前田大然がプレミアデビュー、決定機逸もイプスウィッチは2-1勝利

イングランド

前田大然がついにプレミアリーグデビューを果たした。イプスウィッチの左サイドで先発し、80分までプレー。チームはサンダーランドを2-1で下したが、前田自身は後半に訪れた大きな得点機を生かせず、待望のプレミア初ゴールは次戦以降へ持ち越しとなった。

前田大然がプレミア初先発、イプスウィッチは劇的勝利

2026-27シーズンのプレミアリーグ第1節が8月22日に行われ、昇格組のイプスウィッチは本拠地ポートマン・ロードでサンダーランドと対戦した。

今夏セルティックから加入した前田は、4-2-3-1の左サイドを主戦場とする形で先発。28歳で念願だったイングランド最高峰の舞台に立った。

試合は24分に動く。サンダーランドのルーク・オナインによるビルドアップのミスをフリオ・エンシソが逃さず、そのままペナルティーエリアへ運んでラストパス。新加入FWエメルソンが合わせ、ホームのイプスウィッチが先制した。

しかし39分、サンダーランドもニルソン・アングロの鮮やかな直接FKで同点に追いつく。1-1のまま迎えた後半は決め手を欠く時間が続いたが、90分に途中出場のジャック・クラークが古巣を相手に決勝点。イプスウィッチが2-1で勝利し、プレミア復帰初戦を白星で飾った。

ギャリー・オニール監督にとっても就任後最初のリーグ戦での勝利である。Sky Sportsは、イプスウィッチがボールを失った場面で積極的に相手へ圧力をかけ、攻撃でも人数を前へ送り込む姿勢を見せたと評価している。前回プレミアを戦った2024-25シーズンとは大きく顔ぶれも変わり、新たなチームとして上々のスタートを切った。

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後半50分に絶好機、前田は頭で合わせ切れず

前田にとって最大の見せ場は後半立ち上がりだった。

50分、右サイドでアブドゥル・ファタウが仕掛け、ゴール前へクロスを送る。逆サイドから中央へ走り込んでいた前田がヘディングを狙ったものの、ボールはわずかに高く、シュートを枠へ飛ばすことができなかった。

Sky Sportsもこの場面について、クロスが前田に対して「わずかに高かった」と伝えている。その後にもエンシソの突破からエメルソンを経由し、最後は前田を狙う攻撃があったが、こちらはパスが届かずシュートまで持ち込めなかった。

特に最初のヘディングは惜しまれる。

FotMobによれば、前田がこの試合で放ったシュートはこの1本だけで、得点期待値を示すxGは0.61だった。xGが0.61ということは、モデル上ではかなり得点につながる可能性が高いシュートだったことを意味する。

クロスの高さという難しさはあったとはいえ、プレミア初ゴールを奪う絶好の機会だったことは間違いない。デビュー戦でゴールという理想的な展開には届かなかった。

それでも見えた前田らしさ、攻守で走り続けた80分

一方、前田のプレミア初戦を「決定機を外した試合」だけで片付けるのも適切ではない。

攻撃時には左サイドへ張り続けるだけでなく、右からボールが入った際にはゴール前へ進入。ファタウが突破した瞬間に逆サイドから中央へ走り込んだ50分の場面は、セルティック時代にも繰り返してきた前田らしい動きだった。

ボール保持の回数が多くなくても、相手DFの背後やゴール前へ一気に現れる。それが前田の大きな武器である。

さらに注目したいのが守備面だ。

FotMobのデータでは、前田は80分間でタックル4回、シュートブロック1回、ボールリカバリー2回、クリア2回を記録し、「守備への貢献」は9回に達した。デュエルでも4度勝利している。攻撃の選手としては守備面の数字が目立つ内容となった。

これは単なる偶然ではない。

前田はセルティックでも、相手最終ラインへ高速でプレッシャーをかけ続ける能力を武器にしてきた。ボールホルダーへ寄せるだけではなく、GKやセンターバックへのバックパスまで追いかけ、相手の攻撃開始位置を制限する。

プレミアでも、その特徴を変える必要はなさそうだ。

31タッチ、1シュートという数字をどう見るか

個人成績を見ると、前田のプレミアデビューは派手なものではない。

出場80分でボールタッチは31回。シュート1本、枠内シュート0本、得点0、アシスト0。パス成功は8本で成功率72.7%、FotMobの評価は6.9だった。

特に31タッチという数字は、試合に長時間出場したアタッカーとしては決して多くない。

ただし、前田はもともとボールを何度も受けて攻撃を組み立てるタイプではない。ドリブルや細かなパス交換で試合を支配するより、ボールを持っていない時間に走り、最終的にゴールへ近い場所へ現れることに価値がある。

そのため、前田を見る際にはタッチ数の多さだけで判断するべきではない。

むしろ今回注目すべきなのは、相手ペナルティーエリア内で得点確率の高いシュート機会を作れたことと、ボールを持たない場面でも守備で仕事を続けられたことである。

一方で課題も明確だ。少ないチャンスを生かすことができなければ、攻撃面の評価は上がりにくい。

この試合はまさに、前田という選手の長所と今後求められるものが同時に表れた80分だった。

セルティックで79得点、1000万ポンドで迎えた即戦力

イプスウィッチが前田に求めているのは、将来性ではなく即戦力としての結果である。

前田は2022年に横浜F・マリノスからセルティックへ渡り、スコットランドで主力として定着。Sky Sportsによれば、セルティックでは通算79得点を記録し、5度のリーグ優勝、3度のスコティッシュカップ制覇、2度のリーグカップ制覇を経験した。

2026年夏に推定1000万ポンドの移籍金でイプスウィッチへ加入し、契約期間は3年間。セルティック時代からプレミアリーグでプレーする希望を隠しておらず、28歳でついにその目標を実現させた。

セルティックで長年指揮を執った側も、前田がイングランドで新たな挑戦を望んでいたことを認めている。

ただ、夢だった舞台へ到達したことで競争が終わったわけではない。むしろ、ここからが本当の勝負となる。

競争は激しい、新加入選手が次々と結果

今回の試合で前田にとって無視できないのが、チーム内の競争である。

イプスウィッチは今夏、前線を中心に大規模な補強を行った。Sky Sportsがまとめた移籍情報では、エメルソン、ファタウ、エンシソ、前田ら多くの新戦力が加入。エメルソンには約2660万ポンド、ファタウには約2300万ポンド、前田にも約1000万ポンドが投じられたと報じられている。

そして開幕戦では、そのライバルたちがいきなり結果を残した。

エンシソは先制点をアシストし、試合を通して攻撃の中心となった。エメルソンは加入後初のプレミア戦でゴール。途中出場したジャック・クラークも90分に決勝点を決めている。

The Guardianも特にエンシソとエメルソンのコンビネーションを高く評価しており、新生イプスウィッチの攻撃に期待を持たせる内容だったと伝えた。

前田は守備での貢献や運動量という明確な武器を持っているが、それだけでポジションが保証されるほど前線の層は薄くない。

ゴールやアシストという分かりやすい結果も必要になる。

その意味でも、xG0.61のチャンスを逃したことは小さくない。

オニールの戦い方は前田に合う可能性

それでも前田にとって、現在のイプスウィッチは能力を発揮しやすい環境になり得る。

オニール監督のチームは、必ずしも長時間ボールを保持して相手を押し込むことだけを目指していない。サンダーランド戦でも相手のミスを誘ってから素早く前進し、少ない手数で決定機を作る形が見られた。

サンダーランドのレジス・ル・ブリ監督も試合後、自分たちがボールを多く保持していた一方で、イプスウィッチはボールロストを利用する準備ができていたという趣旨の分析をしている。

これは前田との相性がいい。

相手がボールを持つ時間が増えれば、前田のプレス能力が生きる。ボールを奪った直後には広いスペースが生まれるため、トップスピードへ到達する速さも武器になる。

そして右サイドにファタウのような縦へ突破できる選手がいれば、前田は逆サイドからゴール前へ飛び込める。

実際、プレミア初戦最大の決定機もその形から生まれた。

前田を単純な左ウイングとして見るのではなく、ボールが逆サイドへ移った瞬間に第2のストライカーとしてゴール前へ入る選手として使えるか。ここは今後のイプスウィッチを見るうえでも重要なポイントになりそうだ。

プレミアで戦える材料は示した、次に必要なのはゴール

夢だったプレミアリーグの初戦で、前田は得点を奪うことができなかった。

しかも、xG0.61という大きなチャンスがあっただけに、本人にとっても悔しさは残るだろう。

しかし、80分間で見せた内容には前向きな材料もある。

相手最終ラインへプレッシャーをかけ、自陣まで戻って守備を行い、攻撃では逆サイドからゴール前へ走り込んだ。前田が欧州で評価を高めてきた特徴は、プレミアリーグのピッチでも失われていなかった。

The Timesもイプスウィッチの新戦力を評価する中で、前田を活発な動きを見せた選手の一人として取り上げている。

一方で、イプスウィッチは残留を目標とする昇格組であり、前線には多額の移籍金で獲得した選手が並ぶ。

「よく走った」で終わることはできない。

プレミアで定位置を確保するために求められる次の一歩は明確である。今回のようにゴール前へ入ったとき、そのチャンスを得点へ変えることだ。

チームは劇的勝利という最高の形でシーズンをスタートさせた。前田自身もプレミアで戦える武器は示した。

あとは初ゴールをいつ奪うか。前田大然のイングランドでの挑戦は、ここから本格的に始まる。

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