リーズが敵地で1-0勝利、田中碧はベンチ入りも出場なし
2026-27シーズンのプレミアリーグ第1節が8月22日に行われ、リーズ・ユナイテッドは敵地シティ・グラウンドでノッティンガム・フォレストと対戦。88分にアントン・シュタハが直接FKを決め、1-0で開幕戦を制した。
田中は背番号22でベンチ入りしたものの、ダニエル・ファルケ監督から最後まで声がかからなかった。先発した中盤中央は主将イーサン・アンパドゥとシュタハ。途中からピッチに入ったのはノア・オカフォーとショーン・ロングスタッフで、田中は未出場のまま試合終了を迎えている。
リーズにとっては最高のスタートである。一方、日本代表の田中という視点から見れば、開幕戦で示された中盤の序列は見逃せない。
昨季の田中はプレミアリーグ28試合に出場した選手であり、単なる控え要員ではなかった。それだけに「開幕戦で使われなかった」という事実には、今季の立ち位置を考える上で一定の意味がある。
シュタハが88分に直接FK、リーズが接戦をものにする
試合は派手な打ち合いではなかった。
『The Guardian』の試合データでは、ボール保持率はフォレスト57%、リーズ43%。シュート数はフォレスト12本、リーズ11本で、枠内シュートもそれぞれ2本と3本だった。数字だけを見ても、一方的な内容ではなく、1つのプレーが結果を左右する展開だったことが分かる。
リーズは前半、ハリー・ウィルソンがネットを揺らしたもののオフサイドで得点を認められず。後半には新加入タリク・ムハレモビッチのヘディングをGKマッツ・セルスに阻まれた。
対するフォレストにもイゴル・ジェズスや途中出場のクリス・ウッドにチャンスがあった。『Sky Sports』も、フォレストが好機を生かせなかった点と、決勝点の場面でセルスのポジショニングに問題があった可能性を指摘している。
そして0-0のまま迎えた88分だった。
ゴールから距離のある位置でFKを得ると、シュタハが右足を一閃。ボールはセルスの守るニアサイドを破り、リーズに勝点3をもたらした。
ファルケ監督も試合後、シュタハがFKを蹴る場面で何か特別なことを起こせると期待していたと明かしている。シュタハは昨季のプレミアリーグでも直接FKから3得点を記録しており、この数字を上回ったのはドミニク・ソボスライだけだった。
つまりシュタハの決勝点は偶然の一発ではない。リーズにとって明確な武器の一つなのである。
ファルケが選んだのはアンパドゥとシュタハ
田中にとって最も重要なのは、誰が中盤で優先されたのかという点だ。
開幕戦ではアンパドゥとシュタハが中央に並んだ。アンパドゥは主将を務め、守備時のポジショニングやボール回収、最終ラインとの連係を担うリーズの基準点である。
そこにシュタハが組み合わされる。
191センチのサイズを持つシュタハは守備強度や空中戦だけでなく、前方への推進力とミドルシュート、そして今回のようなセットプレーも備える。アンパドゥと並べれば、中盤に高さと強度を確保しながら攻撃面でも違いを作れる。
フォレスト戦でファルケ監督が選んだ3バックを軸とする形では、中央の2人には攻撃参加だけでなく、広いスペースをカバーする仕事も要求される。
その意味で、この日のアンパドゥとシュタハはファルケが敵地での開幕戦を戦う上で選んだ組み合わせだった。
もちろん、1試合の先発だけなら大きな意味を持たない場合もある。
ただし今回に関しては、その前から予兆があった。
プレシーズン最終戦でも田中はベンチスタート
開幕1週間前の8月15日、リーズはプレシーズン最終戦でブンデスリーガのアウクスブルクと対戦し、4-0で快勝している。
この試合でもファルケ監督が中盤で先発させたのはアンパドゥとシュタハだった。プレミア開幕を目前に控えた最後のテストでこの2人を並べ、さらに1週間後のフォレスト戦でも同じ組み合わせを採用したのである。
しかもシュタハはアウクスブルク戦で開始わずか50秒に先制ゴールを記録。開幕戦でも決勝点を奪った。
短期間で2試合続けて直接結果を残した形となり、現時点でシュタハを先発から外す理由はさらに少なくなったと言える。
ただ、田中もアウクスブルク戦で何もできなかったわけではない。
76分にアンパドゥと交代してピッチへ入ると、終盤にはルーカス・ヌメチャへ絶妙なスルーパスを通し、4点目をアシストした。リーズ公式も田中のパスについて、タイミングの良いスルーパスだったと伝えている。
つまり田中自身の状態が悪く、完全に戦力から外されたという状況ではない。
それでも本番の開幕戦で選ばれたのはアンパドゥとシュタハだった。この違いが現時点の序列を最も端的に表している。
ロングスタッフ投入も気になるが、単純な序列比較はできない
もう一つ注目されるのが、フォレスト戦でショーン・ロングスタッフには出場機会が与えられた点だ。
ファルケ監督は66分にウィルソンを下げてオカフォーを投入。82分にはブレンデン・アーロンソンに代えてロングスタッフを送り込んだ。田中はそのままベンチに残っている。
ただし、これをそのまま「ロングスタッフが田中より序列で上」と解釈するのは早い。
ロングスタッフが交代した相手はアンパドゥやシュタハではなく、前方でプレーしていたアーロンソンだった。試合終盤の守備強度を高める意図も考えられ、田中と完全に同じ役割を争っていたわけではない。
一方で、1点が欲しい82分という時間帯でファルケ監督がロングスタッフを選んだ事実は残る。
リーズの中盤にはアンパドゥ、シュタハ、田中、ロングスタッフがおり、試合展開によって使い分けられる競争になっている。昨季以上に「誰と誰を組ませるか」が重要になっているのだ。
昨季28試合出場、田中はすでにプレミアで実績を残している
ここで忘れてはいけないのが、田中が昨季すでにプレミアリーグで一定の実績を残していることである。
FBrefによれば、2025-26シーズンの田中はリーグ戦28試合に出場し、14試合に先発。出場時間は1315分で2得点を記録した。
チェルシー戦では前半にゴールを決め、リヴァプール戦では後半アディショナルタイムに劇的な同点弾を奪った。
フルシーズンを通して絶対的なレギュラーだったわけではないが、プレミアの強度に対応できることはすでに示している。
だからこそ、今回のベンチスタートを「構想外」と表現するのは適切ではない。
プレシーズンでもマンチェスター・ユナイテッド戦やRBライプツィヒ戦などで実戦機会を得ており、最終戦ではアシストも記録した。ファルケ監督の選択肢から消えている選手ではない。
問題は「使われるかどうか」ではなく、「どの状況で使われる選手になるのか」へと変わりつつある。
シュタハの決勝点は田中にとって小さくない
田中にとって開幕戦で最も厳しかったのは、自身が出場できなかったこと以上に、ポジションを争うシュタハが決勝点を奪ったことかもしれない。
監督にとって、勝利したチームの形を大きく変える必要性は基本的に低い。
さらにシュタハは単に90分間プレーしただけではなく、88分に勝敗を決めた。セットプレーという明確な武器でも結果を残している。
アウクスブルク戦でも先制点、フォレスト戦でも決勝点。開幕前後の重要な2試合で続けてゴールを決めた。
『The Guardian』によれば、ファルケ監督はシュタハのFKについて、昨季はここまでの武器になるとは予想していなかったものの、現在では大きな信頼を置いているという。リーズは昨季、セットプレーからの得点数でもリーグ上位だった。
そのシュタハと主将アンパドゥのコンビが開幕戦を無失点勝利で終えた。
田中が次戦ですぐ先発に戻ると考えるには、やや厳しい材料が並んでいる。
田中碧に必要なのは「違い」を示すこと
それでもシーズンは始まったばかりである。
プレミアリーグは38試合あり、国内カップ戦も続く。負傷や出場停止、相手との相性を考えれば、中盤を固定したままシーズンを戦い切ることは現実的ではない。
田中にはアンパドゥやシュタハとは異なる特徴がある。
狭い場所でもボールを受け、素早く前を向いて攻撃のテンポを変えられること。中盤から前方へ入り、ペナルティーエリア周辺でフィニッシュに関われること。そして相手の守備ライン間にパスを通し、攻撃を加速できることだ。
アウクスブルク戦でヌメチャのゴールを生み出したプレーは、その強みを端的に示していた。
守備強度や高さを重視する試合ではアンパドゥとシュタハが優先されても、ボールを保持しながら相手を崩す必要がある試合では田中の技術が必要になる可能性がある。
フォレスト戦の出場なしは、田中にとって楽観できる結果ではない。
最終プレシーズン戦と開幕戦でアンパドゥ、シュタハが続けて先発し、シュタハは2試合連続でゴール。そこにロングスタッフも控えている。少なくとも開幕時点では、昨季以上に激しいポジション争いへ入ったと見るべきだろう。
ただし、それは「構想外」を意味しない。
昨季28試合に出場した実績があり、プレシーズンでも結果を残している。田中に求められるのは、次に与えられた時間の中でアンパドゥやシュタハとは異なる価値を示すことだ。
リーズは最高の形で新シーズンをスタートさせた。その勝利の裏で、日本代表MFの新たな定位置争いも静かに始まっている。

