コヴェントリーの坂元達裕は、25年ぶりのプレミアリーグ復帰戦となったアーセナル戦でベンチ入りしたものの出場機会はなかった。チームは昨季王者を相手に0-3で完敗。坂元にとって待望のプレミアリーグデビューは次戦以降へ持ち越しとなった。
坂元はベンチのまま、コヴェントリーは0-3で黒星発進
2026-27シーズンのプレミアリーグが8月21日に開幕し、昇格組コヴェントリーは敵地エミレーツ・スタジアムでアーセナルと対戦した。
昨季チャンピオンシップを制したコヴェントリーにとって、2000-01シーズン以来25年ぶりとなるイングランド最高峰での一戦。しかし、いきなり昨季王者のホームに乗り込む厳しい開幕カードとなった。
日本代表MF坂元は背番号7でベンチ入り。だが、フランク・ランパード監督は試合中に複数の交代カードを切ったものの坂元を投入せず、そのまま試合終了を迎えた。右サイドではルーム・チャウナが先発し、82分までプレーしている。
コヴェントリーにとって歴史的なプレミア復帰戦だったが、坂元自身にとってのプレミア初出場はお預けとなった。
ハヴァーツ、サカ、ウーデゴールが得点
試合は立ち上がりからアーセナルが主導権を握った。
15分、カイ・ハヴァーツが先制点を決めると、23分にはブカヨ・サカが追加点。コヴェントリーは開始から30分を待たずして2点を追う展開となった。
後半開始直後の49分には、キャプテンのマルティン・ウーデゴールが3点目。アーセナルはその後もボールを支配しながら試合を進め、3-0のまま危なげなく逃げ切った。
昨季プレミアリーグを制したアーセナルにとっては、タイトル防衛を目指すシーズンの理想的なスタート。一方、コヴェントリーは復帰初戦からトップリーグの厳しさを突きつけられる形となった。
シュート20対4、数字にも表れた大きな差
スコア以上に印象的だったのが、試合内容の差である。
ボール支配率はアーセナルの64.5%に対してコヴェントリーは35.5%。シュート数は20対4、枠内シュートも6対1だった。
さらにxG(ゴール期待値)はアーセナルが1.80、コヴェントリーがわずか0.28。正確なパス数も561対265と倍以上の差がついた。
コヴェントリーは守備に追われる時間が長く、ボールを奪った後も前線へ運ぶことができなかった。
特に前半は攻撃の形をほとんど作れず、アーセナルの高い位置からのプレッシャーを前に後方でボールを失う場面も目立った。チャンピオンシップでは相手を押し込みながら攻撃する試合も多かったが、プレミア王者を相手に同じような展開へ持ち込むことはできなかった。
坂元を含む攻撃陣にとっても、自分たちの特徴を発揮する以前に、ボールを前線まで届けられない難しい試合だったと言える。
昨季7得点3アシストの坂元、プレミア初出場ならず
坂元が出場しなかったことは、日本のファンにとって気になるポイントだろう。
昨季の坂元はチャンピオンシップで35試合に出場し、7得点3アシストを記録。2498分に出場しており、コヴェントリーの攻撃陣を支えた一人だった。
右サイドを中心に、縦へのドリブルだけではなく、細かなタッチから内側へ入り込むプレーや味方とのコンビネーションを武器としてきた。
特に坂元の強みは、単純なスピード勝負だけに頼らない点にある。相手との間合いを見ながら方向を変え、狭いスペースでもボールを前進させる。守備でも運動量を発揮できるため、ランパード体制では複数の役割を任されてきた。
それだけに、プレミア開幕戦で出場機会がなかったという事実は今季の立ち位置を考えるうえで無視できない。
チャウナ先発、昇格でポジション争いは新段階へ
アーセナル戦で坂元ではなく右サイドに入ったのはチャウナだった。
昇格したクラブでは、チャンピオンシップを勝ち抜いたメンバーがそのままプレミアでも先発するとは限らない。より高いレベルで残留するため、新戦力を加えて各ポジションの競争を激しくするのが一般的である。
実際、コヴェントリーは開幕戦から複数の新戦力を先発させた。先発11人のうち5人が新加入選手であり、昇格を果たしたチームをそのまま使うのではなく、「プレミア仕様」へ作り替えようとしていることが分かる。
坂元も例外ではない。
昨季7得点3アシストという実績があっても、新シーズンは再びポジションを勝ち取る必要がある。チャウナが開幕戦で先発した以上、少なくともシーズンスタート時点で坂元が絶対的なレギュラーではないことは明らかだ。
ただし、これだけで「序列が大きく低下した」「構想外になった」と判断するのは早い。
出番なしでも「構想外」とはまだ言えない
アーセナル戦は、コヴェントリーにとってかなり特殊な試合だった。
相手は昨季のプレミア王者であり、しかも敵地エミレーツでの開幕戦。アーセナルは昇格組を相手にしたプレミアのホームゲームで46試合無敗となり、そのうち直近17試合を全勝している。もともと昇格直後のチームにとって、極めて難しい条件だった。
さらに、この日のコヴェントリーは守備時間が圧倒的に長かった。
坂元はボールを持って相手と駆け引きし、味方との距離が近い状況で能力を発揮するタイプである。ところが、チーム全体が押し込まれてボールを前線へ運べなければ、その特徴を生かすこと自体が難しい。
ランパード監督が坂元を投入しなかった理由について、本人から「序列」を示す具体的な説明が出ているわけではない。したがって、アーセナル戦だけで今季の立ち位置を断定すべきではないだろう。
むしろ重要なのは、コヴェントリーがよりボールを持てる試合で誰を右サイドに選ぶのかである。
現地では「危機」よりもプレミアへの適応を重視
0-3という結果だけを見れば厳しいスタートだが、イングランド現地の見方は必ずしも悲観一色ではない。
現地報道では今回の試合を、プレミアに25年ぶりに戻ったコヴェントリーが王者から受けた「レッスン」という文脈で捉える見方も出ている。
コヴェントリーは2001年のトップリーグ降格後、さらにカテゴリーを落とし、一時は4部まで低迷した。そこから長い年月をかけてプレミアまで戻ってきたクラブである。そうした歴史を考えれば、王者アーセナルとのアウェーゲームで0-3という結果だけをもって、新シーズンを悲観する必要はない。
ランパード監督も、プレミアではフィジカル面を含めて新たなレベルへの適応が必要になるという認識を示している。
今季コヴェントリーに求められるのは、アーセナルのような優勝候補との力の差を一気に埋めることではない。残留争いのライバルを相手に着実に勝ち点を積み上げることである。
坂元の本当の勝負はここから
坂元にとって、開幕戦の未出場は決して理想的なスタートではない。
昨季はチャンピオンシップで35試合に出場して昇格に貢献した。しかしプレミアへ舞台が変われば、過去の実績だけで出場機会が保証されるわけではない。新加入選手との競争を勝ち抜き、ランパード監督にプレミアでも通用することを示す必要がある。
一方で、アーセナル戦のようにほとんど攻撃できなかった90分だけで坂元の価値を評価することもできない。
コヴェントリーは序盤から難しい相手との試合も組まれており、昇格組にとって簡単なスタートではない。チーム全体がプレミアの強度へ適応していく時間も必要になる。
25年ぶりにプレミアへ帰ってきたコヴェントリー。その歴史的な第一歩で坂元の出番はなかった。
だが、日本人アタッカーにとって本当の勝負はここからである。チャウナとのポジション争いをどう勝ち抜き、いつプレミアリーグのピッチに立つのか。コヴェントリーの残留争いとともに、坂元の起用法も今季の大きな注目点になりそうだ。

