フライブルクのFW後藤啓介が、新天地で早くも結果を残した。マザーウェルとのUEFAカンファレンスリーグ・プレーオフ第1戦に途中出場し、公式戦デビューで初ゴール。21歳の大型ストライカーが、ブンデスリーガ開幕を前に存在感を示している。
後藤啓介が公式戦デビューで初ゴール
フライブルクは現地時間8月20日、UEFAカンファレンスリーグ・プレーオフ第1戦でスコットランドのマザーウェルと対戦し、敵地で3-1の勝利を収めた。
後藤は2-1で迎えた80分、先発したイゴール・マタノヴィッチとの交代でピッチへ。これが2026年夏にフライブルクへ加入してから初めての公式戦出場となった。
そして後半アディショナルタイム、いきなり結果を残す。
ヴィンチェンツォ・グリフォが右CKを蹴り込むと、ゴール前に入った後藤が頭で合わせた。高い打点から放たれたヘディングシュートがネットを揺らし、フライブルクに3点目をもたらした。
公式戦デビューからわずか約10分。新天地での最初のゴールとしては、これ以上ないスタートである。
しかも、この1点は単なる大量リード時のダメ押しではない。2-1のまま終了する可能性もあった試合を3-1とし、ホームで迎える第2戦へ2点のアドバンテージを持ち帰ることに成功した。
欧州カップ戦のホーム&アウェー方式では、1点の違いが試合運びを大きく変える。後藤のゴールは、チームにとっても価値の高い一撃だった。
開始直後に失点も、ギンターの2得点で逆転
試合はフライブルクにとって簡単な展開ではなかった。
開始直後、マザーウェルのリーガン・チャールズ=クックに先制点を許す。敵地の雰囲気もあり、フライブルクはいきなり追いかける展開となった。
それでも28分、DFマティアス・ギンターがセットプレーからヘディングシュートを決めて1-1。経験豊富なドイツ代表経験者がチームを落ち着かせた。
後半には試合が大きく動く。
65分、VAR介入を経てマザーウェルのマルティン・モールマンが退場。フライブルクはこのプレーで得たPKをギンターが成功させ、2-1と逆転した。
数的優位となったフライブルクはその後もボールを保持しながら追加点を狙う。そして終盤、ユリアン・シュスター監督がマタノヴィッチに代えて投入したのが後藤だった。
最終的にその交代策が3点目につながった。
後藤にとっては短い出場時間だったが、「投入されたFWが最後に点を取る」という理想的な仕事を果たした形である。
191cmの高さを一発で示した後藤
今回のゴールで最も分かりやすく表れたのは、後藤の191cmというサイズである。
フライブルクにはグリフォという優れたセットプレーのキッカーがいる。右CKから後藤が高さを生かして合わせる形は、今季の新しい得点パターンになる可能性がある。
もちろん、1得点だけで「強力なセットプレー兵器が完成した」と評価するのは早い。
それでも、途中出場した大型FWが終盤のCKから得点できることを実戦で示した意味は小さくない。
特にブンデスリーガでは、相手が低い位置に守備ブロックを作り、中央を固める試合も多い。流れの中で崩せないとき、クロスやセットプレーからゴールを奪える選手は貴重である。
さらに後藤の魅力は高さだけではない。
フライブルクのヨッヘン・ザイアーは獲得時、後藤について背後へのランニング、スペースを見つける能力、ペナルティーエリア内でのプレーなどを評価していた。
つまりクラブ側は、単純な「191cmの大型FW」として獲得したわけではない。
サイズがありながら動けること、ゴール前で得点につながるポジションを取れること。そこが後藤の価値なのである。
今回のゴールはセットプレーだったが、フライブルクが期待している「ペナルティーエリア内で仕事のできるFW」という特徴を、早くも公式戦で示したと言える。
ベルギーで10得点、段階を踏んでブンデスリーガへ
後藤は2005年6月3日生まれの21歳。ジュビロ磐田の育成組織からトップチームへ昇格し、10代で欧州へ渡った。
最初の移籍先となったのはベルギーの名門アンデルレヒトである。
加入直後からいきなりトップチームの主力になったわけではない。セカンドチームのRSCAフューチャーズで経験を積み、ベルギー2部では31試合13得点を記録した。
その後、2025-26シーズンはシント=トロイデンへ期限付き移籍。ここでベルギー1部28試合10得点5アシストという数字を残した。
この成績が大きかった。
若手FWとして将来性を評価される段階から、欧州1部リーグで実際に得点できるストライカーへと立場を変えたのである。
そして2026年6月、フライブルクへの完全移籍が決定した。
ブンデスリーガはベルギーリーグより守備の強度、プレースピードともに上がる。後藤にとってはキャリア最大級のステップアップとなる。
だからこそ、最初の公式戦でゴールを記録できたことには価値がある。
新しいリーグ、新しいチーム、新しい戦術に適応する段階で、FWにとって最も分かりやすい評価材料である「得点」を早いタイミングで残したからだ。
マタノヴィッチ先発、後藤はFW争いを勝ち抜けるか
一方で、今回のゴールだけで後藤がフライブルクの先発FWになったと考えるのは早い。
マザーウェル戦で1トップを任されたのはマタノヴィッチだった。後藤は80分からその交代要員として投入されている。
現時点ではマタノヴィッチが一歩前にいると見るのが自然である。
さらにフライブルクにはルーカス・ヘーラーをはじめ、前線で起用可能な選手が複数いる。リーグ戦、国内カップ、欧州カップを並行して戦うシーズンになるとしても、出場時間は自動的に保証されない。
ただし後藤には他のFWとは異なる特徴がある。
191cmの高さ、ゴール前での存在感、若さ。そして昨季ベルギー1部で10得点を奪った実績だ。
プレシーズンではマタノヴィッチと後藤が同時に起用された試合もあった。つまりシュスター監督が「マタノヴィッチか後藤か」という完全な二者択一だけを考えているとは限らない。
試合展開によっては大型FW2人を並べることもできる。
1トップの控えとして出場時間を争うだけなのか。2トップを含めた別の形で起用されるのか。あるいは途中出場から結果を重ねて序列を上げるのか。
この競争は今季のフライブルクを見るうえで、日本のファンにとって重要なテーマになりそうだ。
グリフォのセットプレーは後藤にとって大きな武器
後藤にとってフライブルクというクラブは、特徴を生かしやすい環境でもある。
その理由の一つがグリフォの存在だ。
グリフォは長年にわたりフライブルクのセットプレーを担ってきた選手で、FKやCKから数多くのチャンスを作っている。
今回も、そのグリフォのCKから後藤のゴールが生まれた。
191cmの後藤がゴール前に入れば、相手は空中戦への対応を迫られる。ギンターら高さのある選手も同時にターゲットとなれば、守備側がマークを絞るのはさらに難しくなる。
フライブルクは伝統的に、限られた戦力の中でセットプレーや組織力を武器に勝点を積み重ねてきたクラブである。
後藤がその一部として機能できれば、単純な控えFW以上の役割を得られる可能性がある。
特に試合終盤、同点や1点を追う展開では、大型FWを投入してゴール前へのボールを増やす選択肢は非常に分かりやすい。
後藤は今回、その役割を実際のゴールという形で証明した。
鈴木唯人との日本人コンビにも注目
今季のフライブルクにはもう一人、日本代表の鈴木唯人がいる。
マザーウェル戦でも鈴木は先発出場しており、日本人選手2人が同じ欧州カップ戦のピッチに立った。
後藤にとって、欧州で経験を積んできた日本人選手が同じチームにいることは適応面でもプラスになり得る。
そして注目はクラブだけにとどまらない。
後藤は2026年ワールドカップの日本代表メンバーにも入り、チュニジア戦で途中出場を経験した。
代表での序列はまだ確立されたものではない。だからこそ、ブンデスリーガでどれだけ出場し、得点を積み重ねられるかが重要になる。
日本代表のセンターフォワード争いは、所属クラブでのパフォーマンスによって大きく変化しやすいポジションでもある。
21歳の後藤がドイツで定位置をつかめれば、次の代表活動でも存在感は一気に高まるだろう。
初ゴールはスタート地点、次はリーグ戦で結果を残せるか
フライブルクはマザーウェルとの第1戦を3-1で制し、8月27日にホームで行われる第2戦へ大きなアドバンテージを持ち帰った。
後藤の3点目によって、第2戦ではフライブルクがより落ち着いて試合を進められる。
そして後藤個人にとって重要なのは、このゴールを次の出場機会につなげることだ。
プレシーズンから徐々に出場時間を増やし、最初の公式戦で得点。ここまでの流れは良い。
ただし本当の競争はこれからである。
ブンデスリーガで先発争いに加われるのか。途中出場から継続的に得点できるのか。欧州カップ戦を含めてどこまで出場時間を増やせるのか。
191cmの高さだけでなく、ベルギーで磨いた得点感覚も持つ21歳FWは、その最初の一歩を公式戦デビュー弾という最高の形で踏み出した。
フライブルクでの後藤啓介の挑戦は、ここから本格的に始まる。

