カーティス ジョーンズがインテルへ 移籍金約65億円、リヴァプール生え抜き

イタリア

カーティス・ジョーンズのインテル移籍が目前に迫っている。インテルとリヴァプールは移籍金3500万ユーロ規模で合意し、ジョーンズ本人もミラノ入り。9歳から所属してきた生え抜きMFが、25歳で初めて母国を離れることになりそうだ。

インテルとリヴァプールが3500万ユーロで合意

英『Sky Sports』によると、インテルはカーティス・ジョーンズの獲得についてリヴァプールと合意に達した。移籍金は3000万ポンド、ユーロ換算で約3500万ユーロとされている。

合意は現地時間8月19日夜に成立し、ジョーンズは翌20日にミラノへ到着。21日にメディカルチェックを受ける予定となっている。現段階では両クラブによる移籍完了の正式発表前であるため、「加入決定」ではなく最終手続きの段階と見るのが適切だ。

『Guardian』は、それ以前の交渉段階でインテルが固定3000万ユーロにボーナスを加え、最大3500万ユーロとなる条件を提示していたと報じている。リヴァプール側は当初4000万ユーロ前後を評価額としていたが、最終的にはインテルとの交渉がまとまった。

正式加入となれば、ジョーンズにとってプロキャリアで初めての移籍であり、初の国外挑戦となる。

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9歳から16年間、リヴァプール一筋だった生え抜きMF

今回の移籍を特別なものにしているのが、ジョーンズとリヴァプールの関係である。

2001年にリヴァプールで生まれたジョーンズは、9歳でクラブのアカデミーに加入。そのまま各年代を駆け上がり、2019年1月のFAカップ、ウォルヴァーハンプトン戦でトップチームデビューを果たした。

リヴァプール公式によると、これまでトップチームで228試合に出場して22得点。プレミアリーグを2度、リーグカップを2度制したほか、FAカップとFIFAクラブワールドカップも獲得している。

特に印象的だったのが2020年1月のFAカップ、エヴァートンとのマージーサイド・ダービーで決めた決勝点だ。地元出身の若手がライバル相手に鮮烈なゴールを決め、一気に名前を知られる存在となった。

その後もユルゲン・クロップ、アルネ・スロットの下で中盤の重要な戦力としてプレーしてきた。

それだけに今回の退団は、単なる中盤選手の売却ではない。リヴァプールの街で育ち、アカデミーからトップチームまで約16年間をクラブとともに歩んできた選手が、新たなキャリアを求めて外へ出るという意味を持っている。

昨季49試合出場、それでも絶対的な主力ではなかった

ジョーンズは戦力外になったわけではない。

2025-26シーズンは公式戦49試合に出場し、28試合で先発。プレミアリーグだけでも34試合に出場している。リーグ戦では1937分をプレーし、1得点2アシストを記録した。

49試合という数字だけを見れば主力級である。

しかし、リーグ34試合のうち先発は18試合だった。途中出場が16試合を占め、ドミニク・ソボスライ、アレクシス・マック・アリスター、ライアン・フラーフェンベルフらと出場時間を分け合っていた。

さらにジョーンズは本職のセンターハーフだけでなく、右サイドバックなどで起用されることもあった。『Sky Sports』も、昨季は複数の中盤選手と出場機会を分けながら、ときには急造右サイドバックとしてプレーしていたと指摘している。

これはジョーンズの万能性を示す一方で、「チームに欠かせないが、明確なポジションを保証されているわけではない」という立場でもあった。

25歳という年齢を考えれば、キャリアの次の段階として定位置を求める時期に入っていたとも考えられる。

リヴァプールが売却を受け入れた最大の理由

リヴァプールにとって、ジョーンズを失うことは純粋な戦力面だけを考えれば痛手である。

それでも売却に応じた背景には契約問題がある。

ジョーンズとリヴァプールの契約は2027年夏まで。つまり残り1年となっており、契約延長が成立しなければ来夏には移籍金なしで退団できる状況だった。

『Guardian』によれば、リヴァプールはジョーンズを4000万ユーロ前後と評価していた。しかし新契約に向けた合意が見えない中で、インテルが最大3500万ユーロを提示。来夏にフリーで失うリスクと比較した結果、今夏の売却が現実的な選択肢になった。

さらにジョーンズはアカデミー出身選手である。

育成選手の売却は、移籍金の大部分を会計上の利益として扱いやすい。リヴァプールにとっては3500万ユーロ規模の資金を確保できるだけでなく、今後の補強を進める上でも意味のある取引になる。

感情的には手放しにくい生え抜きだが、契約状況まで含めればクラブ側にも合理性のある判断なのである。

インテルはなぜジョーンズを欲しがったのか

一方、インテルにとってジョーンズ獲得は突発的な補強ではない。

『Guardian』によれば、インテルは2026年1月頃からジョーンズを追跡しており、6月には2500万ユーロのオファーを提示したが拒否されていた。その後も関心を失わず、夏の移籍市場終盤に条件を引き上げて交渉を成立させた。

背景にあるのが中盤の再編である。

クリスティアン・キヴ監督のインテルは2025-26シーズンにセリエAを制覇。基本システムとして3-5-2を継続しながら、従来よりも縦への速さと前線からのプレッシングを強めている。インテル公式も、キヴ体制の3-5-2について、より縦方向への意識が強く、高い位置からプレスを仕掛けるスタイルになったと説明している。

ジョーンズはこのサッカーに適した特徴を持つ。

狭い場所でもボールを失いにくく、相手のプレスを受けながら前を向ける。中盤だけでなく複数のポジションをこなし、攻守の切り替えでも運動量を出せる。

プレミアリーグほど試合の展開速度が常に速いわけではないセリエAでは、ジョーンズのボール保持能力がさらに強みになる可能性もある。

3-5-2ならバレッラと並ぶインサイドハーフ候補

では、インテルではどこで起用されるのか。

最も自然なのは3-5-2のインサイドハーフである。

キヴ監督は2026-27シーズンも3-5-2を基本にする方針とされており、中盤中央にはハカン・チャルハノール、ニコロ・バレッラらがいる。ジョーンズはバレッラと並ぶ左右のインサイドハーフ、あるいは中盤複数ポジションをカバーする選手として起用される可能性が高い。

ジョーンズの強みは、一つのプレーに特化していないことだ。

得点だけを狙う攻撃的MFではなく、守備に専念するアンカーでもない。ボールを引き出し、運び、味方との距離を調整しながら攻撃を前進させることができる。

リヴァプールでは、この万能性が時として「明確な定位置を持てない」という問題につながった。

しかしインテルでは逆に、3センターの役割を柔軟に変えられる選手として価値が高まる可能性がある。

バレッラが前へ飛び出した際には後方を支え、チャルハノールが相手に捕まれば低い位置まで降りてビルドアップを助ける。状況に応じて役割を変えられるジョーンズの特徴は、戦術的な役割分担が細かいイタリアで生きる余地がある。

フラッテージの穴を埋めるが、同じタイプではない

インテルの中盤では今夏、ダヴィデ・フラッテージがラツィオへ移籍した。

そのためジョーンズは人数上ではフラッテージに代わる補強と考えられる。ただし、両者のプレースタイルはかなり異なる。

フラッテージ最大の特徴は、ボールを持っていないところからペナルティーエリアへ飛び込む動きである。中盤の選手でありながらゴール前に顔を出し、得点に直接関与できる。

対してジョーンズは、よりボールに触りながら試合を作るタイプだ。

低い位置でパスを受け、相手のプレッシャーを外しながらボールを前進させる。攻撃の最後に飛び込むというより、そこへ到達するまでの過程を安定させる能力に強みがある。

したがってインテルは、フラッテージをそのままジョーンズに置き換えるわけではない。

人員が一人入れ替わるだけでなく、中盤の性格そのものが少し変わる可能性がある補強である。

ストーンズ、スペンスに続き英国人3人目

今夏のインテルにはもう一つ特徴的な流れがある。

ジョーンズが加入すれば、ジョン・ストーンズ、ジェド・スペンスに続いて今夏3人目のイングランド代表経験者となる。『Sky Sports』もジョーンズを、ストーンズとスペンスに続く3人目のイングランド代表選手として紹介している。

近年のセリエAでは、プレミアリーグで絶対的な立場を築けなかった英国人選手がイタリアで再評価される例も珍しくなくなった。

リーグの優劣というより、要求される能力の違いが大きい。

ジョーンズもプレミアリーグでは「何でもできるが絶対的な武器が見えにくい」と評価されやすい選手だった。一方、ポジショニングやボール保持を細かく設計するインテルでは、その器用さ自体が武器になる可能性がある。

リヴァプールにとって3500万ユーロは安いのか

今回の取引で最後に残るのが、リヴァプールがジョーンズを手放してよかったのかという問題だ。

3500万ユーロ規模の移籍金は、残り契約1年という状況を考えれば決して悪い条件ではない。

一方で、ジョーンズは25歳であり、プレミアリーグで150試合以上の経験を持つ。中盤だけでなく複数ポジションに対応でき、さらにクラブ育成選手としてホームグロウン枠の面でも価値があった。

新監督アンドニ・イラオラは4-2-3-1を採用する見込みで、ソボスライ、マック・アリスター、フラーフェンベルフらが中盤のポジションを争う。遠藤航やトレイ・ナイオニも控えているため、ジョーンズがいなくても人数自体は確保できる。

ただし、長いシーズンでは「どこに入れても一定水準でプレーできる選手」の価値は大きい。

リヴァプールは約3500万ユーロを得る代わりに、戦術的な保険として非常に使いやすかった生え抜きMFを失うことになる。

ジョーンズにとっても今回の移籍は大きな分岐点だ。

9歳から知るクラブを離れ、25歳で初めて異なるリーグ、異なるサッカー文化へ踏み出す。リヴァプールでは最後まで「絶対的な主役」にはなれなかったが、セリエA王者インテルでポジションをつかめれば、その評価は大きく変わる。

16年間続いたリヴァプールでの物語が終わり、ミラノで新たなキャリアが始まろうとしている。

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