アトレティコ・マドリードのイ・ガンインが、ラ・リーガ開幕戦でいきなり結果を残した。マラガ戦で途中出場すると、わずか13分後に鮮烈な先制ゴール。0-0で停滞していた攻撃を一変させ、新天地でこれ以上ないスタートを切っている。
イ・ガンインが公式戦デビューでいきなり決勝点
アトレティコ・マドリードは8月19日、2026-27シーズンのラ・リーガ第1節で昇格組マラガと対戦し、2-0で勝利した。
この試合で大きなインパクトを残したのが、パリ・サンジェルマン(PSG)から加入した韓国代表MFイ・ガンインである。
ベンチスタートとなったイ・ガンインは、0-0で迎えた57分にアレックス・バエナ、ジュリアーノ・シメオネとともに投入された。そして70分、右サイドでダヴィド・ハンツコからパスを受けると、内側へボールを運んで左足を一閃。強烈なシュートをゴール左上へ突き刺した。
これがアトレティコ加入後の公式戦初ゴールであり、そのまま決勝点となった。
その後、85分にはバエナが直接FKから追加点。アトレティコが2-0でマラガを下し、ホームで開幕白星を手にしている。
注意したいのは、今回がイ・ガンインにとって「ラ・リーガ初ゴール」ではない点だ。バレンシアやマジョルカでもスペイン1部でプレーしており、すでに得点経験はある。
今回のゴールは、あくまで「アトレティコで迎えたラ・リーガ初戦でのゴール」であり、「アトレティコで公式戦初出場初ゴール」である。
途中出場13分でゴール、停滞した攻撃を変えた
結果だけ見ればアトレティコの2-0という順当な勝利だが、試合内容は決して楽なものではなかった。
前半、アトレティコはボールを保持しながらもマラガの守備を崩し切れず、0-0で終了。Reutersも、アトレティコの攻撃が十分に機能していなかったことを指摘している。
そこでディエゴ・シメオネ監督が動いた。
57分に3選手を同時投入すると、イ・ガンインはすぐに積極性を見せる。投入直後の59分にシュートを放ち、64分にもフィニッシュまで持ち込んだ。そして70分、3本目のシュートでゴールネットを揺らした。
単に「途中出場でたまたまスーパーゴールを決めた」という内容ではない。
イ・ガンインはピッチに入った瞬間からボールを要求し、右サイドから中央へ入りながらシュートやラストパスを狙った。74分にはアデモラ・ルックマンのシュートにつながるプレーにも関与している。
試合の流れを考えれば、この積極性こそが大きかった。
アトレティコが必要としていたのは、横方向にボールを動かすだけではなく、相手守備陣の間へ入り、ゴール方向へプレーできる選手だった。その役割をイ・ガンインが途中出場から担ったのである。
シメオネの指示がそのままゴールにつながった
ゴールには戦術的な背景もあった。
試合後、イ・ガンインはピッチへ入る際にシメオネから、相手守備のライン間にスペースがあるため、そこでボールを受けてシュートを狙うよう求められていたことを明かしている。
70分のゴールは、その指示をほぼそのまま再現したようなプレーだった。
右寄りの位置で受け、中央方向へ運びながら左足でフィニッシュする。右サイドから中へ入ってプレーできる左利きのイ・ガンインにとって、得意な形の一つである。
シメオネにとって重要なのは、単にテクニックがあることではない。
どこにスペースがあるのかを理解し、監督が求めたプレーをピッチ上ですぐに実行できるか。アトレティコでは守備面も含めて戦術理解が強く要求されるだけに、加入直後の選手が開幕戦でこうした形を作れた意味は小さくない。
シメオネも試合後、イ・ガンインとバエナの得点をともに高く評価。イ・ガンインについても、試合が要求するプレーへ適応する姿勢やチームへの貢献を評価している。
グリーズマンの「7番」を継承した新戦力
イ・ガンインへの注目がさらに大きくなっている理由が背番号である。
アトレティコでは、長年攻撃の中心を担ってきたアントワーヌ・グリーズマンがMLSへ移籍した。そしてイ・ガンインは、そのグリーズマンが着けていた背番号7を受け継いだ。
アトレティコは7月25日、PSGからイ・ガンインを獲得。契約期間は2031年までとなっている。
移籍金は正式には公表されていないものの、約4000万ユーロ規模と報じられており、クラブが戦力として高く評価して獲得した選手であることは間違いない。
もっとも、イ・ガンイン自身はグリーズマンの単純な「後継者」として見られることには慎重だ。
試合後にはグリーズマンを代えの利かない選手と評価したうえで、自分自身はチームを助けることに集中したいという考えを示している。
実際、両者はタイプも異なる。
グリーズマンは前線から中盤まで広範囲に動き、組み立て、得点、守備を一人でつなげられる特殊な選手だった。
一方のイ・ガンインは、よりボールを持った状態で特徴を発揮する。狭いスペースで受け、相手を外し、左足のキックでシュートや決定的なパスを狙う能力が武器になる。
「グリーズマン2世」になる必要はない。
グリーズマン退団によって失われた攻撃の創造性を、異なる方法で補えるか。それがアトレティコでのイ・ガンインを見るうえで重要なポイントになる。
アトレティコの前線事情が活躍の価値を高める
開幕戦でのゴールが持つ意味は、現在のアトレティコの前線事情を考えるとさらに大きい。
グリーズマンはすでに退団。アレクサンダー・セルロートは負傷しており、マラガ戦では本来ウイングを主戦場とするルックマンが中央で起用された。
さらにフリアン・アルバレスも開幕戦ではメンバーから外れている。
Reutersはアルバレスがバルセロナ移籍を望んでいる状況についても報じており、9月1日の移籍市場閉幕まで前線の構成が不透明な状態にある。現時点で移籍が決まったわけではないため断定はできないが、アトレティコにとって気掛かりな状況であることは確かだ。
だからこそ、イ・ガンインが早い段階で結果を残したことは大きい。
得点源になるだけでなく、右サイドと中央の間でボールを受け、攻撃のテンポを変えられる。前線の顔ぶれが変わっても使いやすい選手であり、シメオネにとって貴重な選択肢になりそうだ。
PSGでは絶対的主力になれず、新天地で役割を求めた
今回の活躍を「PSGで出番のなかった選手が突然覚醒した」と見るのは適切ではない。
イ・ガンインはPSGでも一定の出場機会を得ていた。
2025-26シーズンのリーグ戦では27試合に出場し、3得点4アシスト。先発18試合を記録している。一方で世界トップクラスの選手が揃うPSGでは絶対的なレギュラーにはなれず、試合によってポジションや役割が変わる状況も続いた。
技術的な能力が問題だったというより、それを最大限に発揮できる役割を継続して得られなかったと見る方が近い。
アトレティコでは、その状況が変わる可能性がある。
シメオネは組織的なプレーを要求する一方、攻撃では局面を個人の技術で変えられる選手も重宝してきた。
イ・ガンインは右サイド、攻撃的MF、中央寄りのポジションなど複数の役割をこなせる。相手の守備ブロックによって立ち位置を変えられる点も、新しいアトレティコでは強みになり得る。
「まだリズムが足りない」状態で見せたインパクト
さらに興味深いのは、本人がまだ万全ではないと認めていることだ。
イ・ガンインは試合後、チームへの合流が遅かったため、まだ十分なリズムを取り戻せていないという趣旨の発言をしている。
それでも開幕戦で途中出場し、13分後に得点した。
もちろん、1試合だけでアトレティコの絶対的主力になったと判断するのは早い。コンディションが整い、ライバルとなる選手たちも揃えば競争は激しくなる。
それでも今回のパフォーマンスは、シメオネに強烈な第一印象を与えるには十分だった。
0-0で難しくなっていた開幕戦に入り、積極的にシュートを放ち、監督の指示通りにスペースを使い、最後は試合を決めるゴールまで奪った。
約4000万ユーロと報じられた移籍金、グリーズマンの「7番」、PSGから加入した韓国代表という大きな注目を背負うなかで、最初の公式戦から結果を残したのである。
鮮烈なデビューが単発の出来事で終わるのか。それとも、アトレティコで本格的なブレイクにつながるのか。
少なくとも開幕戦の33分間で、イ・ガンインはシメオネの新チームに必要な武器になり得ることを早くも示した。

