ユヴェントス、ヴィカーリオ獲得へ 鈴木彩艶の去就にも影響か?

イタリア

ユヴェントスがトッテナムのGKグリエルモ・ヴィカーリオ獲得に迫っている。今夏は日本代表GK鈴木彩艶も有力候補に挙がっていたが、ヴィカーリオ加入が最終局面まで進んだことで、鈴木のユヴェントス移籍の可能性はすでにほぼ消滅したとみていい状況だ。

ユヴェントスがヴィカーリオ獲得で合意

ユヴェントスの新守護神探しが、いよいよ決着に近づいている。

英国『Sky Sports』などによれば、ユヴェントスはトッテナムからイタリア代表GKグリエルモ・ヴィカーリオを期限付き移籍で獲得することで合意したという。

契約には買い取りオプションが付く見込みだ。具体的な金額については媒体によって若干の差があり、『Sky Sports』は850万ポンド、約1000万ユーロと報道。一方、イタリアの移籍市場に詳しいジャンルカ・ディ・マルツィオ記者は、レンタル料なしで800万ユーロの買い取りオプションが設定されるとしている。

いずれにしても重要なのは、完全移籍を義務付けない形でユヴェントスが実績あるGKを確保できる点である。

ヴィカーリオはすでにユヴェントスの本拠地があるトリノに到着し、メディカルチェックを受ける段階まで進んだと伝えられている。正式発表前ではあるものの、移籍交渉は最終局面とみていいだろう。

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スパレッティ監督もヴィカーリオ加入を歓迎

ユヴェントスを率いるルチアーノ・スパレッティ監督も、ヴィカーリオの加入を事実上認める発言をしている。

スパレッティ監督はヴィカーリオについて、トッテナムでの直近の状況が必ずしも順調ではなかったことに触れながらも、「トップクラスのGKを獲得したと確信している」という趣旨の評価を示した。

ヴィカーリオは1996年生まれの29歳。エンポリで評価を高め、2023年夏にトッテナムへ加入した。

加入直後から正GKの座をつかみ、プレミアリーグだけでなく欧州カップ戦でも豊富な経験を積んできた。トッテナムでは公式戦100試合以上に出場し、2024-25シーズンのヨーロッパリーグ制覇にも貢献している。

セービング能力に加え、最終ラインの背後を広くカバーする積極性も特徴だ。

スパレッティ監督にとっても、イタリア代表を通じて能力を把握しているGKであり、適応面で大きなリスクがないことは補強判断に影響したと考えられる。

なぜトッテナムは守護神を放出するのか

一見すると、トッテナムが実績あるヴィカーリオを期限付きで手放すのは意外にも映る。

ただし、背景にはチーム内のGK序列の変化がある。

ヴィカーリオはトッテナム加入後に長く正GKを務めた一方、直近ではアントニン・キンスキーが存在感を高め、ヴィカーリオの立場は以前ほど安泰ではなくなっていた。

これはヴィカーリオの能力そのものが大きく低下したというより、クラブが新たなGK体制へ移行しつつあると見るべきだろう。

GKは基本的に1人しか出場できないポジションである。序列が変われば、実力のある選手でも出場機会を確保するために移籍を選ぶケースは少なくない。

29歳という年齢を考えても、ヴィカーリオにとってベンチで時間を過ごすより、イタリアの名門で正GK争いに挑む方が合理的な選択である。

ユヴェントス側にとっても、プレミアリーグや欧州大会での経験を持つGKを低リスクで獲得できる条件は魅力的だった。

鈴木彩艶もユヴェントスの有力候補だった

ここで日本のサッカーファンにとって気になるのが、鈴木彩艶の存在である。

今夏のユヴェントスは複数のGKをリストアップしており、鈴木もその有力候補の1人だった。

鈴木への関心は単なる移籍市場の噂だけではない。

スパレッティ監督自身が鈴木について「非常に将来性のあるGK」という趣旨で高く評価し、クラブが獲得を検討していることを事実上認めていた。

パルマでセリエAを経験し、日本代表でも正GKとしてプレーする鈴木は、2002年生まれとまだ若い。

190センチを超えるサイズ、シュートストップ能力、広い守備範囲に加え、近年は足元から攻撃を組み立てる能力も向上している。

単なる将来への投資ではなく、すでに欧州トップレベルで起用できるGKとして評価され始めていることが、PSGやアストン・ヴィラなど複数のクラブから関心を集める理由だろう。

鈴木獲得の最大の壁は移籍金だった

では、なぜユヴェントスは鈴木ではなくヴィカーリオを選んだのか。

最大の違いは、やはり獲得条件にある。

鈴木を保有するパルマは安価で手放す必要がない。今夏の報道では、鈴木獲得には3000万ユーロから3500万ユーロ規模の資金が必要になるとみられてきた。

スパレッティ監督も鈴木を高く評価する一方、コスト面が大きな障害であることを示唆していた。

対してヴィカーリオは期限付き移籍で獲得できる。

しかも報道されている買い取りオプションは800万から1000万ユーロ程度だ。今夏の支出を抑えながら、実績のあるGKを1シーズン起用し、その後に完全移籍するかどうかを判断できる。

クラブ経営の観点では、極めて扱いやすい条件である。

つまり、鈴木がヴィカーリオとの能力比較で評価を落としたというより、ユヴェントスが「将来性の高いGKへの大型投資」より「即戦力を低リスクで確保する選択」を取ったと考える方が自然だ。

PSG経由でのユヴェントス行きも浮上していた

鈴木を巡っては、さらに複雑な移籍案も報じられていた。

パリ・サンジェルマンがパルマから鈴木を完全移籍で獲得し、その後ユヴェントスへ期限付き移籍させる構想である。

この形であれば、ユヴェントスは高額な移籍金をすぐに負担せず、鈴木を獲得できる可能性があった。

一方のPSGにとっても、将来性の高いGKを保有しながらセリエAの強豪で経験を積ませられる。

しかし、PSGとパルマの交渉は最終的に成立しなかったと報じられている。

その間にユヴェントスはヴィカーリオとの交渉を進め、鈴木を巡ってはアストン・ヴィラが一気に前進した。

ヴィカーリオの加入が最終局面まで進んだ現在、ユヴェントスがさらに鈴木を獲得する余地はほぼなくなったとみられる。今夏に具体的な候補として名前が挙がっていた鈴木だが、ユヴェントス移籍はすでに現実的な選択肢ではなくなったと言っていい。

鈴木彩艶はアストン・ヴィラ移籍が本線へ

そして鈴木の現在地として最も注目されるのが、アストン・ヴィラである。

『Sky Sports』などの報道では、アストン・ヴィラは鈴木の獲得についてパルマとクラブ間合意に達したとされ、その規模は総額約2990万ポンド、約3500万ユーロと伝えられている。

現時点ではクラブからの正式発表前であるため、移籍決定と断定する段階ではない。

それでも、具体的な金額を伴うクラブ間合意まで報じられていることを考えれば、ヴィラが現在最も現実的な移籍先になっている。

約3500万ユーロという金額も重要だ。

GKにこれだけの資金を投じる以上、アストン・ヴィラが鈴木を単なる控えとして考えているとは想像しにくい。

現在の正GKエミリアーノ・マルティネスの去就も不透明であり、鈴木獲得は将来的な後継者確保ではなく、早い段階から正GKを任せることを想定した補強である可能性がある。

ヴィカーリオ加入で欧州GK市場の玉突きが整理へ

今回のヴィカーリオ移籍を鈴木との「争奪戦」という単純な構図だけで捉えると、本質を見落とす。

今夏のGK市場では、ユヴェントス、トッテナム、パルマ、アストン・ヴィラ、PSGがそれぞれ異なる事情を抱えながら動いてきた。

ユヴェントスは新たな正GK候補を探し、ヴィカーリオ、鈴木、エミリアーノ・マルティネスらを検討。

トッテナムではキンスキーの台頭によってヴィカーリオの移籍が可能になった。

パルマは鈴木に高い評価額を設定し、PSGとの交渉が成立しない中でアストン・ヴィラが接近した。

ヴィラが鈴木を獲得すれば、今度はマルティネスの去就にも影響する可能性がある。

一つの移籍が別の移籍を動かす、いわゆる「玉突き」である。

ただし、ユヴェントスはすでにヴィカーリオ獲得を最終局面まで進めており、鈴木のユヴェントス移籍の可能性はほぼ消滅している。マルティネスについても、ユヴェントスが新たに正GKを確保する以上、同クラブへの移籍ルートは大幅に狭まったと考えられる。

GK市場の複雑な関係が、ここに来てようやく整理され始めた。

鈴木にとってプレミア挑戦は好条件になり得る

鈴木にとってユヴェントス行きがほぼ消滅したことは、必ずしもキャリア上の後退を意味しない。

むしろアストン・ヴィラへの完全移籍が実現するなら、中長期的にはより明確な道筋が用意される可能性がある。

仮にPSGからユヴェントスへの期限付き移籍という形になっていれば、1年後の所属先や正GKとしての立場は不透明だった。

一方、ヴィラが約3500万ユーロを投じて完全移籍で獲得するのであれば、クラブの中長期的な構想に組み込まれていると見ることができる。

プレミアリーグは世界でも屈指の強度を持つリーグだ。セットプレーやクロスへの対応、背後のスペース管理、ビルドアップへの参加など、GKに求められる能力も非常に高い。

そこで正GKをつかめれば、日本代表にとっても大きな意味を持つ。

ユヴェントスがヴィカーリオ獲得を最終局面まで進めたことで、鈴木のユヴェントス移籍の可能性はほぼ消滅した。

しかし同時に、アストン・ヴィラへの道はこれまで以上に鮮明になっている。

今夏のGK市場で最も注目される日本人の1人である鈴木彩艶。その次の舞台がプレミアリーグになるのか、正式発表まで引き続き注目される。

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