遠藤航がついにリヴァプールで実戦復帰を果たした。約6カ月ぶりとなったクラブでの出場で、現地メディアは5〜6点と評価。絶賛とまではいかなかったが、センターバックとして遠藤らしい強度とカバーリングを見せ、2026-27シーズンに向けて重要な一歩を踏み出した。
遠藤航が約6カ月ぶりにリヴァプールで出場
リヴァプールは8月9日、アンフィールドでASモナコとのプレシーズンマッチを行い、2-3で敗れた。
アンドニ・イラオラ監督にとっては、リヴァプールの指揮官として初めてアンフィールドで迎えた試合だった。
序盤はリヴァプールが主導権を握った。16分にアレクサンダー・イサクが先制すると、28分にはフロリアン・ヴィルツが追加点。新シーズンに向けて攻撃陣が期待を膨らませる内容を見せた。
しかし44分、フィルジル・ファン・ダイクがアレクサンドル・ゴロヴィンをペナルティーエリア内で倒してPKを献上。ゴロヴィン自身に決められ、2-1で前半を折り返した。
そしてハーフタイム、遠藤がイフェアニ・ンドゥクウェに代わってピッチに入った。リヴァプール公式もこの試合を遠藤の負傷からの復帰戦として伝えている。ポジションは本職の守備的MFではなくセンターバックだった。
遠藤がリヴァプールの試合に出場するのは、2月の負傷以来である。
厳密には5月31日の日本代表戦で一度実戦に戻っているため、「半年ぶりの実戦」という表現は正しくない。それでもクラブレベルでは約6カ月ぶり。長いリハビリを経て、再びアンフィールドのピッチに立ったという意味は小さくない。
復帰直後に見せた「遠藤らしさ」
復帰戦でまず目についたのは、長期離脱を感じさせない球際の強さだった。
地元メディア「This Is Anfield」は、後半開始からセンターバックに入った遠藤について、投入直後に積極的なヘディングで2度競り勝ったと伝えている。
さらに現地メディア「Rousing The Kop」が注目したのが、後半開始直後の激しいタックルだった。
遠藤らしい強度の高い守備にアンフィールドの観客も反応。長期離脱明けだからと慎重になりすぎるのではなく、自分の持ち味である対人守備や球際の強さを最初から出していた。
これは復帰戦として重要なポイントである。
負傷から戻った選手の場合、単純に走れるか、45分や90分を消化できるかだけでなく、接触プレーに心理的な迷いがないかも確認材料になる。
遠藤はもともと身体のサイズで圧倒するタイプではない。相手より一歩早く危険を察知し、体をぶつけ、ボールを回収することで守備強度を作る選手である。
その遠藤らしさが早い段階から確認できたことは、採点以上の収穫だったと言える。
現地評価は5〜6点、絶賛ではなく「まずまず」
では、実際に遠藤のパフォーマンスは現地でどう評価されたのか。
評価はおおむね「及第点」である。
「Rousing The Kop」は遠藤に5点を付けた。同メディアは強烈なタックルを評価する一方、56分にミカ・ビエレスに同点ゴールを許した場面では、やや守備に巻き込まれたと指摘している。
ただ、それ以外ではセンターバックとして落ち着いてプレーしたと評価。ルーク・チェンバースが危険な位置でボールを失った際、最後尾でカバーしてピンチを防いだ場面も好意的に取り上げた。
別の現地採点では6点。「負傷からの堅実な復帰」と評価され、遠藤らしいハードワークと意欲が見られたとされた。
つまり、遠藤がこの試合で「圧倒的な高評価」を受けたわけではない。
一方で、5〜6点という数字だけを見て低調だったと判断するのも適切ではない。
本来のポジションとは異なるセンターバックで約45分をプレーし、半年近いクラブでの離脱から戻った直後という事情がある。その状況で大きく崩れることなく、自分の特徴も出した。
復帰戦として見れば、十分に前向きな内容だった。
2失点に関与、それでも遠藤だけの責任ではない
遠藤が出場した後半、リヴァプールは2失点して逆転を許している。
そのため、守備者である遠藤の評価を考えるうえで、この事実を無視することはできない。
56分のモナコの同点ゴールでは、ドミニク・ソボスライがボールを失ったところから攻撃を受け、ジョルジ・ママルダシュヴィリが一度はビエレスのシュートをセーブ。しかし、そのこぼれ球を再びビエレスに押し込まれた。
遠藤も最終局面で十分に対応できたとは言い切れない。
ただし、これは遠藤一人の明確なミスによる失点ではない。中盤でのボールロストから守備陣形を整えられないまま攻め込まれ、GKのセーブ後のこぼれ球まで含めて複数の要因が重なった失点だった。
さらに88分には、コーナーキックからパリス・ブルナーに決勝点を許した。
試合全体を見ると、むしろ問題だったのは後半に入ってリヴァプール全体の強度と組織力が大きく落ちたことである。
イラオラ監督も試合後、最初の30分ほどは非常に良かった一方で、そのレベルを最後まで維持できなかったと認めている。リヴァプールはリーズ戦に続いて2点のリードを失っており、新体制が求める強度を90分間続けるためには改善が必要との認識を示した。
遠藤個人の評価と、後半のチーム全体の失速は分けて考える必要がある。
なぜ遠藤はセンターバックだったのか
今回の復帰戦で特に興味深かったのは、遠藤が守備的MFではなくセンターバックとして使われた点である。
単純に「遠藤のポジションがCBになった」と考えるべきではない。
リヴァプールはプレシーズンを通して最終ラインの人員に不安を抱えている。ジェレミー・ジャケはコンディションが整わずモナコ戦を欠場。イラオラ監督も慎重に復帰させる方針を説明していた。
モナコ戦では18歳のンドゥクウェがファン・ダイクと先発。そのンドゥクウェに代わって後半から遠藤がセンターバックへ入った。
つまり、遠藤のCB起用にはチーム事情が大きく関係している。
ただし、ここに遠藤の価値もある。
守備的MFだけでなくセンターバックにも対応でき、試合終盤に守備を締めたい状況では複数の役割を任せられる。監督にとって、ベンチに置いておけば複数ポジションの問題を一人で解決できる選手は貴重である。
特に遠藤は、最終ラインに入っても守備の判断力を失いにくい。
チェンバースのボールロスト後に最後尾で危険を察知し、ピンチを止めた場面は象徴的だった。派手なプレーではないが、「危険になる前に消す」という遠藤の強みはセンターバックでも生きる。
イラオラのサッカーで遠藤は生き残れるか
今季の遠藤を考えるうえでは、イラオラ監督のスタイルとの相性も重要になる。
イラオラは高い位置から相手へ圧力をかけ、ボールを失った直後に素早く奪い返すサッカーを志向する。モナコ戦でも高い最終ラインを設定し、前半はその積極性が攻撃の勢いにつながっていた。
一方で、プレスを突破されたときには最終ラインの背後に大きなスペースが生まれる。
遠藤にとって、このスタイルにはプラスとマイナスの両方がある。
プラスなのは、ボール保持者への寄せ、セカンドボールへの反応、危険察知、対人守備という遠藤の長所が求められることだ。
相手に自由を与えず、試合のテンポを守備から上げる役割であれば、遠藤は十分に適応できる可能性がある。
反対に、センターバックとして高い最終ラインを維持し、背後の広いスペースを長距離で守る展開では、純粋なスピードが課題になりやすい。
その意味では、遠藤をシーズンを通して本職のセンターバックとして使い続けるより、守備的MFを基本としながら必要に応じてCBを務める形の方が特徴を生かしやすいだろう。
そしてモナコ戦翌日の8月10日、リヴァプールはバルセロナからロナルド・アラウホを2026-27シーズンの期限付き移籍で獲得すると公式発表した。アラウホはすでにリヴァプールで最初のトレーニングも行っている。
本職のセンターバックが加わったことで、遠藤がCBとして常時起用される必要性は下がる。
しかし逆に言えば、ボランチとCBの両方をこなせる遠藤の「保険としての価値」はより明確になる。
最大の収穫は採点ではなく45分を戦えたこと
遠藤のモナコ戦を評価するとき、5点や6点という採点だけに注目すると本質を見誤る。
もちろん、完璧な復帰戦ではなかった。
同点ゴールの場面では改善できる部分があり、チームも遠藤が出場した後半に2失点した。センターバックとして今後も起用されるのであれば、高い最終ラインでの対応という課題も残る。
それでも、この試合で最も大きかったのは約45分間を実際に戦えたことである。
イラオラ監督は8月1日の時点で、遠藤が段階的にトレーニング量を増やしており、モナコ戦で「数分」プレーできることを期待していた。実際には後半を通して起用され、予定以上とも言える時間を消化した。
しかも、ただピッチに立っただけではない。
投入直後からヘディングで競り合い、強烈なタックルを入れ、最終ラインでカバーリングも見せた。
長期離脱後の選手にとっては、「以前と同じプレーができる」という感覚を取り戻すことが何より重要である。
リヴァプールは8月16日にコモとのプレシーズンマッチを予定しており、その後23日にはニューカッスルとのプレミアリーグ開幕戦を迎える。
次の焦点は、遠藤がコモ戦でさらに出場時間を伸ばせるのか。そしてイラオラ監督がボランチとセンターバックのどちらでテストするのかである。
モナコ戦の現地評価は5〜6点。
数字だけなら目立つものではない。
しかし、遠藤にとって今必要なのは一試合で高採点を獲得することではなく、再び継続してプレーできる状態に戻ることだ。
半年近い離脱を経てアンフィールドに戻り、45分間を戦い抜いた。遠藤航の2026-27シーズンは、ここから本格的に始まる。

