鹿島、1-3から4-3大逆転で横浜FMに勝利 開幕戦で示した王者の底力

J1

鹿島アントラーズが2026/27シーズンのJ1開幕戦で、強烈な勝負強さを見せつけた。横浜F・マリノスに1-3とリードされながら、終盤に3得点。後半アディショナルタイムにチャヴリッチが2ゴールを奪い、4-3の大逆転勝利を飾った。

結果だけを見れば「鹿島らしい勝負強さ」で片付けることもできる。しかし、この逆転劇には鬼木達監督の交代策、松村優太による右サイドの活性化、柴崎岳のゲームメイク、そして横浜FMの疲労という複数の要素が重なっていた。

鹿島が3度のビハインドを跳ね返す

2026年8月7日に行われたJ1第1節、横浜F・マリノス対鹿島アントラーズは、開幕戦とは思えないほど激しい点の取り合いとなった。

先手を取ったのは横浜FMだった。

7分、16歳の三井寺眞がゴールを決めて先制する。鹿島も11分にレオ・セアラが同点弾を奪ったものの、18分には谷村海那が決め、横浜FMが再びリードした。

後半に入っても流れは簡単には変わらない。

58分、谷村がこの日2点目となるゴールを奪い、スコアは3-1。開幕戦の鹿島は2点差をつけられる苦しい展開となった。

それでも鹿島は崩れなかった。

81分、松村優太の右サイドからのクロスに鈴木優磨がヘディングで合わせる。シュートはポストに当たったものの、こぼれ球をレオ・セアラが押し込み3-2。まず1点差まで迫った。

86分にも松村のクロスから鈴木がシュートを放ち、最後は徳田誉がネットを揺らした。一度は同点かと思われたが、これはオフサイドの判定で取り消された。

普通なら、ここで勢いが途切れてもおかしくない。

だが鹿島は止まらなかった。

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後半ATにチャヴリッチが2発

試合が大きく動いたのは後半アディショナルタイムである。

鹿島はVARとオンフィールドレビューを経てPKを獲得。90+9分、途中出場のチャヴリッチが冷静に決め、ついに3-3とした。

そして、その数分後にドラマが待っていた。

90+12分、柴崎岳が相手守備陣の背後へスルーパスを通す。抜け出したチャヴリッチがゴールへ流し込み、鹿島が4-3と逆転した。

85分からピッチに立ったチャヴリッチが、わずかな時間で2得点。しかも同点弾と決勝点である。

鹿島は試合の大半でリードを許していたにもかかわらず、最後の最後にスコアをひっくり返した。

開幕戦で勝点3を獲得したという事実だけでなく、試合を諦めない姿勢を新シーズンの最初から示した意味は大きい。

流れを変えた松村優太の投入

この逆転劇でチャヴリッチと並んで重要だったのが、後半開始から投入された松村優太である。

鬼木監督はハーフタイムに吉田湊海を下げ、松村を投入した。

松村が入ると、鹿島は右サイドから横浜FMの守備を押し込めるようになった。

81分のレオ・セアラのゴールは、松村のクロスが起点だった。さらに86分、オフサイドで取り消された徳田のゴールも松村のクロスから生まれている。

偶然ではない。

終盤の鹿島は、右サイドから相手守備陣を広げ、中央に鈴木優磨やレオ・セアラを入れる形を繰り返していた。

横浜FMの守備ブロックが疲労によって横方向へ動きにくくなっていたこともあり、松村のスピードと縦への推進力が効果を発揮した。

逆転の主役は2得点のチャヴリッチだったが、試合の流れそのものを変えた選手として松村の存在は見逃せない。

鈴木優磨がピッチ内で攻撃を修正

鹿島が1-3から反撃できた背景には、鈴木優磨の存在もあった。

鈴木は試合中、自身の立ち位置を調整しながら攻撃の形を整理している。

特に意識していたのが、ヤン・マテウスが1対1で仕掛けられる状況を作ることだった。自身が中央寄りのポジションを取ることで相手DFを引きつけ、サイドのスペースを生み出そうとしていた。

これは鹿島の逆転を考えるうえで重要な部分である。

鬼木監督がベンチから選手を送り込んだだけではなく、ピッチ上の選手自身も相手の守り方を見ながら立ち位置を変えていた。

鈴木自身が得点を決めたわけではない。しかし81分の2点目ではヘディングシュートでレオ・セアラの得点を生み出し、86分の場面でも松村のクロスに合わせてポストを叩いている。

数字に直接残りにくい部分も含め、鹿島の攻撃を成立させる中心にいた。

柴崎、徳田、チャヴリッチ投入で総攻撃へ

鬼木監督の交代策も、この試合を語るうえでは外せない。

後半開始から松村を投入しただけではない。

67分にはヤン・マテウスとマテウス・ブエノを下げ、林晴己と柴崎岳を投入。そして85分には広瀬陸斗と小川諒也に代えて、徳田誉とチャヴリッチをピッチへ送り込んだ。

3-2と1点差まで迫っていた時間帯とはいえ、かなり攻撃的な判断である。

守備の安定を優先するのではなく、勝点3を取りにいく選手構成へ切り替えた。

この判断が最終的には結果につながった。

徳田は一度ネットを揺らし、チャヴリッチは2ゴール。そして柴崎は決勝点をアシストした。

つまり鹿島の終盤の得点に、途中出場選手が次々と関わっている。

シーズンは長い。先発11人だけで戦うことはできない。

開幕戦からベンチメンバーが結果を出したことは、連覇を狙う鹿島にとって非常に大きな材料になる。

横浜FMはなぜ3-1から守り切れなかったのか

一方で、鹿島の逆転だけを見ると試合の半分しか説明できない。

横浜FM側で起きていた変化にも注目する必要がある。

横浜FMは58分までに3得点を奪い、攻撃面では鹿島の守備を何度も崩していた。

しかし時間が進むにつれて運動量が落ち、ボールを保持する時間も減少。守備時には選手間のスペースが広がっていった。

スティーブ・コリカ監督も試合後、疲労によってボールを持てなくなり、スペースを与えたことを問題の一つとして挙げている。

ここに鹿島の交代策が重なった。

疲れてきた横浜FMに対し、鹿島は松村、柴崎、徳田、チャヴリッチというフレッシュな選手を次々と投入した。

特に松村がサイドで縦へ仕掛け、中央では鈴木やレオ・セアラがゴール前に入ることで、横浜FMは守備ラインを押し下げられた。

同点となった後の決勝点も象徴的である。

試合終盤で間延びした横浜FMの最終ラインに対し、柴崎は中央から背後のスペースを狙った。そこへチャヴリッチが走り込んだ。

「鹿島の精神力」だけでは説明できない。相手の疲労を見逃さず、交代カードの質を使って畳み掛けたことが逆転につながった。

鬼木監督が3失点を問題視する理由

4-3の大逆転となれば、通常は攻撃面が大きく称賛される。

鬼木監督も最後まで諦めなかった選手たちの姿勢を評価し、鹿島が持つメンタリティーの強さを認めている。

ただし、手放しで喜んでいるわけではない。

理由は明確だ。

3失点しているからである。

開始7分で先制を許し、18分にも失点。さらに後半の58分には3点目を奪われた。

連覇を狙うチームとして考えれば、毎試合4得点しなければ勝てないようではシーズンを安定して戦うことはできない。

特に試合序盤の入り方と、相手のカウンターを受けた際の守備には修正の余地がある。

鹿島が今季さらに強いチームになるためには、今回示した攻撃力と勝負強さを維持しながら、失点を減らす必要がある。

4-3という結果は強さの証明であると同時に、課題を分かりやすく示した試合でもあった。

63,960人の前で生まれた歴史的開幕戦

この試合は、内容だけでなく舞台も特別だった。

観客数は63,960人。Jリーグのリーグ戦として史上最多の数字となった。

2026/27シーズンからJリーグは秋春制へ移行。その最初のJ1リーグ戦で、1993年のリーグ開幕当初からトップカテゴリーを戦い続けてきた横浜F・マリノスと鹿島アントラーズが激突した。

さらにゴールデンタイムの地上波全国中継も行われる注目度の高い一戦だった。

そこで生まれたのが7得点、そして後半アディショナルタイムの逆転劇である。

Jリーグの新しい時代を始める試合として、これ以上ないほど劇的な展開だったと言える。

ただ、鹿島にとって重要なのは、この1勝を「劇的だった」で終わらせないことだ。

途中出場選手が試合を変え、2点差でも諦めず、最後まで勝点3を狙った姿勢は今後につながる。一方で、3失点という明確な課題も残った。

2025年J1王者として連覇を狙う鹿島にとって、4-3というスコアには今季の可能性と修正点の両方が凝縮されていた。

何より、1-3からでも試合を終わらせなかった。

開幕戦で見せたその勝負強さこそ、今季の鹿島が再び優勝争いの中心に立つための最大の武器になりそうだ。

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