23歳日本人MFがシャルケで初得点、田中聡はスタメンの座を確保できるか

ドイツ

田中聡がシャルケ04加入後初ゴールを決めた。だが、本当に重要なのは得点そのものではない。ブンデスリーガ開幕を前に、23歳の守備的MFがミロン・ムスリッチ監督の構想へ着実に入り始めていることだ。

ヘッセン・カッセル戦で加入後初ゴール

シャルケは8月1日、プレシーズンマッチでヘッセン・カッセルに5-0で勝利した。田中は60分、デヤン・リュビチッチに代わってピッチへ入り、74分にチームの5点目を記録した。

得点場面では、ペナルティーエリア手前でスフィアン・エル=ファウジのパスを受けると、ゴール右側へ力強いシュートを突き刺した。守備的MFが相手陣深くまで進み、こぼれ球ではなく味方との連係からフィニッシュした点に意味がある。シャルケはこの勝利でプレシーズン4連勝となった。

もちろん、相手は地域リーグのクラブであり、公式戦のゴールではない。5-0という展開も含め、1得点だけでブンデスリーガでの成功を語ることはできない。それでも、新天地で目に見える結果を残したことは、開幕前の競争を進めるうえで好材料である。

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加入直後から継続的に与えられる出場機会

田中は6月、フォルトゥナ・デュッセルドルフからシャルケへ完全移籍し、2030年までの契約を結んだ。7月5日にチーム練習へ合流すると、同11日のFCギュータースロー戦で新天地デビュー。続くエルツゲビルゲ・アウエ戦では後半から出場し、相手GKのパスを読んでボールを奪い、狙ったシュートをポストに当てた。

7月22日のウクライナ勢との一戦では初先発を果たし、60分間プレーした。シャルケは2-0で勝利し、ムスリッチ監督は田中について、チームが探していたタイプの選手であり、60分間すべてを出し切ったと評価している。

ファジアーノ岡山戦では62分から出場し、終盤にスライディングでシュートを阻止。ヘッセン・カッセル戦では攻撃参加からゴールを決めた。短い準備期間の中で、ボール奪取、危険察知、前線への飛び出しという異なる長所を見せている。

開幕スタメン争いではまだ挑戦者

一方で、田中が先発の座を確保したと見るのは早い。ファジアーノ岡山戦とヘッセン・カッセル戦では、ロン・シャレンベルクとエル=ファウジが中盤で先発した。田中は2試合とも途中出場であり、現時点の起用だけを見れば、既存の組み合わせを追う立場である。

ただし、プレシーズンは単純な序列確認の期間ではない。選手の出場時間を段階的に延ばし、複数の組み合わせを試す目的もある。実際、7月22日の試合では田中とエル=ファウジが同時に先発し、シャレンベルクがベンチに回った。田中にはアンカーの競争相手になるだけでなく、運動量のあるMFと並んで中盤全体の強度を上げる役割も考えられる。

重要なのは、田中が控え組だけで固定されていないことだ。先発で60分間を任された試合があり、途中出場でも守備と攻撃の双方で見せ場をつくっている。開幕スタメンの本命とは断定できないが、戦力としての評価を高めている段階にはある。

ムスリッチ監督のサッカーに合う理由

シャルケが田中を獲得した理由は明確である。プロフットボールディレクターのユーリ・ムルダーは加入発表時、ボールを持たない場面での積極性、ダイナミズム、俊敏性、運動量、プレー強度を高く評価した。クラブは田中を、ボールを落ち着かせるだけの守備的MFではなく、相手へ圧力をかけ続ける選手として見ている。

ムスリッチ監督のチームは、相手が後方から攻撃を組み立てる場面で受け身にならず、前向きにボールを奪いにいく。そこで必要になるのは、単純な対人守備の強さだけではない。前線の選手と連動してパスコースを狭め、相手がボールを出す瞬間を予測し、奪った後に素早く前進させる判断が求められる。

アウエ戦で相手GKの配球を読んだ場面は、田中の特徴を分かりやすく示している。ヘッセン・カッセル戦のゴールも、守備位置に残り続けるのではなく、味方が押し込んだ状況を見てエリア手前へ進出した結果だった。守備だけに役割を限定しない点は、試合の主導権を握りたいシャルケにとって価値がある。

左利きが中盤の組み立てに与える効果

田中は左利きの守備的MFである。この特徴は、派手ではないがチームのボール運びに違いを生む。

右利きの選手が中盤の底に入る場合、身体の向きや利き足の関係から、自然に選びやすいパスコースが似ることがある。左利きの田中が入れば、左サイドへ速くボールを出したり、相手のプレスとは逆方向へ展開したりする角度をつくりやすい。昇格クラブのシャルケは、ブンデスリーガで押し込まれる試合が増えると予想されるだけに、奪った直後の一手は重要になる。

ただし、田中はパスを安全に横へ動かし続けるだけの司令塔ではない。前方へ運ぶ意識が強く、守備から攻撃へ素早く切り替える局面で持ち味を発揮する。長所を生かすには、周囲の選手が田中の奪いどころを理解し、その直後に前方の選択肢を用意する必要がある。

半年間のドイツ経験が支える即戦力性

田中は2026年1月にサンフレッチェ広島からデュッセルドルフへ移籍し、ブンデスリーガ2部で13試合に出場して2アシストを記録した。チームは最終的に降格したが、田中自身は半年でドイツ国内の評価を高め、2部王者として1部へ昇格したシャルケへの移籍をつかんだ。

この半年間には大きな意味がある。日本から直接加入する選手とは異なり、田中はすでにドイツの試合速度、球際の強さ、移動や生活環境を経験している。新しいクラブの戦術へ適応する必要はあるものの、欧州生活そのものを一から学ぶ段階ではない。

また、田中にとって欧州挑戦は今回が初めてではない。湘南ベルマーレ時代の2022年にKVコルトレイクへ期限付き移籍し、ベルギー1部で15試合に出場した。その後は日本へ戻り、湘南、広島で経験を積み直した。最初の欧州挑戦で定位置をつかめなかった選手が、国内で成長し、再び欧州へ渡ってブンデスリーガの舞台まで進んだ形である。

シャルケ側にも、田中を長期的に待つだけでは済まない事情がある。クラブはブンデスリーガ2部を制して1部へ戻ったが、昇格初年度は相手の質と試合速度が一段上がる。中盤で簡単に前を向かせれば、最終ラインの負担は急激に増える。

だからこそ、ボールを失った直後に相手へ寄せられ、広い範囲を動ける田中の特徴は残留争いで実用性を持つ。2030年までの契約は将来性への評価を示す一方、加入時のクラブコメントでは、即戦力としてブンデスリーガで貢献することも明確に求められている。

佐野海舟型と評されるが、田中の道は別にある

ブンデスリーガ公式サイトは田中を、運動量と献身性に優れた守備的MFとして紹介し、マインツの佐野海舟に近いタイプと評した。華麗な技術で観客を沸かせるというより、絶えず動き、球際へ入り、味方のためにスペースを埋めることで支持を得る選手という見方である。

比較は特徴を理解する助けになるが、田中が佐野と同じ道をたどる保証はない。シャルケでは残留を目指す昇格チームの一員として、より直接的なプレーや守備の安定が求められる可能性が高い。さらに、シャレンベルクらとの競争もあるため、まず必要なのは継続的な出場機会をつかむことだ。

日本の読者にとって、シャルケは内田篤人が長くプレーしたクラブとしても知られている。ブンデスリーガ公式も内田をシャルケで支持を集めた日本人選手の一人として紹介している。ただし、その歴史が田中の立場を保証するわけではない。守備への献身性を重視するクラブとサポーターに、自身のプレーで認められる必要がある。

日本代表では、田中は2025年7月の中国代表戦でA代表デビューを果たした。ブンデスリーガで定位置を確保できれば、中盤の選択肢として再び存在感を高められる。ただし、代表への道はクラブ名だけで開かれるものではない。出場時間と内容を積み上げることが前提になる。

アタランタ戦が開幕先発への試金石

シャルケは8月8日、本拠地フェルティンス・アレーナでアタランタと対戦する。その後、24日のDFBポカール1回戦でハレシャーFCと戦い、30日にアウクスブルクとのブンデスリーガ開幕戦を迎える。

アタランタ戦は、これまでより強度の高い相手に田中がどこまで対応できるかを見る重要な機会である。先発するのか、途中出場になるのか。相手のプレスを受けた際に前を向けるのか。ボールを失った直後に中盤を締められるのか。地域リーグ相手のゴール以上に、開幕メンバーを判断する材料が増える試合となる。

田中の現在地は、レギュラー確定でも構想外でもない。監督が求める強度を備え、先発と途中出場の双方でアピールを続ける有力な競争者である。シャルケ加入後初ゴールは、その競争を一歩前へ進める結果だった。次に必要なのは、ブンデスリーガ級の相手を前にしても同じ特徴を示すことだ。

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