フランス対イングランドの2026年ワールドカップ3位決定戦は、日本時間7月19日午前6時にマイアミ・スタジアムで行われる。決勝進出を逃した両国だが、ディディエ・デシャン監督のフランス最終戦、そしてイングランドのW杯初の3位を懸けた、決して「消化試合」とは呼べない一戦である。
3位決定戦にある重み
フランスはスペイン、イングランドはアルゼンチンに準決勝で敗れ、ともに目前で決勝を逃した。フランスは3大会連続の決勝進出、イングランドは1966年大会以来60年ぶりの決勝という目標を断たれており、失意からどこまで気持ちを切り替えられるかが出発点となる。
しかし、銅メダルには明確な価値がある。フランスにとってはデシャン時代を勝利で締めくくる機会であり、イングランドにとっては1966年の優勝以降で最高位となる3位をつかむチャンスだ。両国のFIFAランキングはフランスが3位、イングランドが4位と近く、実力伯仲の「ドーバー海峡ダービー」でもある。
フランスの歩み
フランスは決勝トーナメントでスウェーデンに3-0、パラグアイに1-0、モロッコに2-0で勝利し、スペイン戦までのノックアウト3試合を無失点で通過した。前線の爆発力ばかり注目されるチームだが、今大会の4強入りは守備組織と試合運びの安定感による部分も大きい。
その流れが止まったのがスペインとの準決勝だった。フランスは0-2で敗れ、相手のボール保持と中盤での主導権に苦しみ、今大会で初めて無得点に終わった。キリアン・エンバペやミカエル・オリーズが前向きに走る場面を作れなかったことは、イングランド戦へ向けた最大の修正点である。
フランスの基本線は、奪った瞬間に前線の速さを生かすことにある。エンバペが左側から背後へ走り、中央や逆サイドの選手が相手守備を引きつける形が機能すれば、イングランドの最終ラインは対応を迫られる。準決勝の反省を踏まえ、ボールを持つ時間よりも、いかに速く危険な場所へ届けるかが問われる試合になる。
イングランドの歩み
イングランドはコンゴ民主共和国を2-1、開催国メキシコを3-2、ノルウェーを延長戦の末に2-1で下し、4強まで勝ち上がった。全試合を余裕で制したわけではないが、苦しい展開でも勝利を手放さない粘り強さは、トーマス・トゥヘル監督のチームの大きな特徴だった。
準決勝のアルゼンチン戦では先制しながら逆転負けを喫した。終盤のエンソ・フェルナンデスの同点弾、延長戦のラウタロ・マルティネスの決勝点によって決勝への道は閉ざされたが、接戦を数多く経験してきたことは、3位決定戦では武器にもなり得る。
一方で、イングランドは大会を通じて激戦を重ねており、消耗は無視できない。フランス戦も準決勝から中2日で迎えるため、先発の入れ替え、試合終盤に走れる選手を残す交代策、そして早い時間帯に失点しない守備の設計が重要になる。両チームが同じ日程で臨むとはいえ、延長戦を経験したイングランドの疲労管理には特に注目したい。
エンバペ対ケインの得点王争い
最大の個人テーマは得点王争いである。エンバペはリオネル・メッシと並ぶ8ゴールで首位に立ち、フランスのウスマン・デンベレが5得点、イングランドのハリー・ケインとジュード・ベリンガムが6得点で追っている。
エンバペは、相手最終ラインの背後へ飛び出すスピードと、左から中央へ切れ込んで終わらせるフィニッシュ精度が最大の武器である。フランスが中盤で相手のプレスを外し、彼を前向きに走らせられれば、1回の局面で試合を動かす力がある。スペイン戦で封じられた反動もあり、エースが最後の一戦でどんな答えを出すかは大きな焦点だ。
ケインは違う形で攻撃を支配する。最前線にとどまらず中盤へ下りてボールを受け、味方を前向きに動かしながら、自らもペナルティーエリアへ入っていく。4年前のカタールW杯準々決勝ではフランスに1-2で敗れ、ケインは終盤のPKを外した。今回の対戦は、イングランドの雪辱戦であるとともに、ケイン自身にとっても因縁の相手との再戦になる。
第2の主役たち
両国の対戦はエンバペ対ケインだけでは決まらない。フランスではデンベレ、オリーズらがエンバペへの警戒を逆手に取れるかが重要で、特に右側での1対1や中央への侵入は、守備がエンバペへ寄った瞬間に威力を増す。
イングランドではベリンガムの後方からの飛び出しが鍵になる。ケインが低い位置で相手CBを引き出せれば、ベリンガムが空いた中央へ進入し、得点にもラストパスにも関われる。両チームとも主役への警戒が強まるほど、周囲のタレントが決定的な仕事をする構図だ。
注目したいのは、フランスの攻撃が速い切り替えを基盤にするのに対し、イングランドはケインを経由して攻撃を組み立てる時間も作れる点である。フランスがオープンな展開を望むなら、イングランドはボールを落ち着かせ、試合のテンポをコントロールしたい。
デシャンのラストマッチ
フランスにとって、この試合の特別さを決定づけるのがデシャン監督の存在である。2012年に就任した指揮官は、2014年W杯ベスト8、EURO2016準優勝、2018年W杯優勝、2022年W杯準優勝へとチームを導いた。
選手として1998年フランス大会を制し、監督としても2018年ロシア大会を制覇したデシャンは、マリオ・ザガロ、フランツ・ベッケンバウアーに続く「選手と監督の両方でW杯優勝」を果たした人物である。代表監督としての長期政権が終わる一戦に、選手たちがどんな姿勢を示すかは、フランスの試合内容を左右する感情面の要素になる。
3位決定戦の勝敗だけでデシャン時代の価値は変わらない。それでも、2度目のW杯制覇と2度の準優勝を含む時代を、表彰台で締めくくれるかどうかは、フランス代表にとって大きな意味を持つ。
イングランドは歴史を変えられるか
イングランドは1966年の自国開催大会でW杯を制して以降、世界一から遠ざかってきた。近年は2018年W杯ベスト4、EURO2020準優勝、EURO2024準優勝と大舞台で上位に進む一方、あと一歩を越えられない歴史を抱えている。
W杯3位決定戦でも、1990年大会はイタリアに1-2、2018年大会はベルギーに0-2で敗れた。フランスを破って初めて3位を手にすれば、優勝した1966年以降で最高のW杯成績となる。
トゥヘル監督のチームにとって、この試合は敗退の悔しさを薄めるだけの舞台ではない。ケイン、ベリンガムら主力世代が、決勝を逃した翌試合でも勝利に執着できるかを示す場であり、次の国際大会への自信にも直結する90分となる。
4年越しの再戦で問われるもの
フランスとイングランドがW杯本大会で顔を合わせるのは今回が4回目である。1966年と1982年はイングランドが勝利し、2022年の準々決勝ではフランスが2-1で勝ったため、通算成績はイングランドの2勝、フランスの1勝となっている。
2022年大会では、フランスがオーレリアン・チュアメニとオリヴィエ・ジルーのゴールで勝利した。イングランドはケインのPKで追いついたものの、終盤の2本目のPKを決められず、勝負を延長戦へ持ち込めなかった。
今回は4年越しの再戦であり、両者にとって今大会最後の試合でもある。フランスはエンバペを走らせる局面を増やせるか、イングランドはケインとベリンガムを中心に中央から試合を支配できるか。そして、準決勝敗退の痛みを先に振り払えるのはどちらか。銅メダル、得点王、歴史的な節目が重なる一戦は、決勝に劣らない緊張感を帯びるはずだ。

