FIFAワールドカップ2026・準々決勝で、フランス代表がモロッコ代表と対戦し、2-0で勝利を収めた。前回大会準決勝の再戦となったこの一戦は、エースFWキリアン・エムバペがPK失敗という珍しいアクシデントを乗り越えて先制点を決めるという、ドラマティックな展開になった。フランスは3大会連続でベスト4進出を確定させ、優勝候補としての存在感を改めて示す結果となった。
PK失敗という試練
試合は前半28分、大きな動きがあった。フランス代表FWキリアン・エムバペ(27、レアル・マドリード)がモロッコ代表DFヌサイル・マズラウイ(マンチェスター・ユナイテッド)のタックルを受けPKを獲得したが、VARによる判定確認に時間がかかったこともあり、その後のキックはモロッコ代表GKヤシン・ブヌ(アルヒラル)に右足シュートを止められてしまった。
大会でチーム最多7得点を挙げてきたエースの失敗は、SNS上でも大きな驚きの声を呼んだ。「エムバペも外すか」「時間がかかりすぎた」といった反応が飛び交ったという。DAZN解説を担当した元日本代表・戸田和幸氏は、この場面について「PKになった時点でゴールは約束されたわけではない。これは大きい。ビッグセーブ」と評しており、ブヌの好セーブを高く評価するコメントを残している。
PKを外した直後の心理状態は、エースとしての矜持が試される瞬間だったと言える。しかしエムバペはこの失敗をすぐに切り替え、試合の主導権を渡さなかった。
後半にゴールをこじ開ける
前半を無得点で終えたフランスだったが、後半に流れが変わった。エムバペが個人技でゴールをこじ開け、待望の先制点を挙げたのだ。PK失敗から一転、自らの得点で試合を決定づける形となり、エースとしての責任を果たした格好だ。
先制点に続き、フランスは追加点も奪う。素早いパス回しからFWウスマヌ・デンベレ(29、パリ・サンジェルマン)が後半21分に追加点を記録し、試合を2-0とした。日刊スポーツはこのゴールを「大会最多タイ8得点のエムバペに続く」一撃として報じており、フランス攻撃陣の破壊力を象徴する場面となった。
結果として、フランスは前回大会の準決勝と同じ相手を同じスコアで下す形となり、2大会続けてモロッコに完勝したことになる。2022年カタール大会準決勝でも、フランスはモロッコを2-0で下しており、今回はその再現とも言える結果だ。
エムバペの記録更新
今大会でのゴールは、エムバペにとって8点目となった。大会得点ランキングでは首位タイの位置につけており、歴代ワールドカップ通算得点でもリオネル・メッシに並ぶ史上2人目の20得点に到達したと報じられている。この記録の正確な位置づけについては今後さらに確認が進む見通しだが、現役最高峰のストライカーとしての地位を裏付ける数字であることは間違いない。
エムバペはこれまでも大会を通じて存在感を発揮してきた。開幕戦のセネガル戦では、チームが低調な立ち上がりを見せる中でも、自らのゴールで試合を決着させる場面があったと報じられている。準々決勝進出をかけたパラグアイ戦でも、後半のPKで決勝点を挙げるなど、勝負を分ける場面で確実に仕事をこなしてきた実績がある。
デンベレとの関係修復
今回の試合で注目されたのは、エムバペとデンベレの連携だ。両者はともにパリ・サンジェルマン出身であり、大会前には両者の間に不仲説が報じられていた時期もあった。しかし試合直前のトレーニングでは、両者が抱き合う様子が見られ、そうした噂を打ち消す動きとして注目された。
このモロッコ戦でエムバペが先制点を、デンベレが追加点をそれぞれ記録したことは、チームとしての結束を示す結果になったと見ることができる。不仲説はあくまで報道段階の話であり断定はできないが、ピッチ上での結果がチームの一体感を物語る形となった。
デシャン監督の要求への回答
試合前、フランス代表を率いるディディエ・デシャン監督は、チームの攻撃陣に対してさらなる効率性を求めていた。ロイター通信によれば、デシャン監督は試合前日、大会得点数トップを誇る自軍の攻撃について「もっと効率的でなければならない」と語り、さらなる上積みを要求していたという。
結果として、この試合はエムバペのPK失敗という一時的な非効率を経験しながらも、最終的には2得点を記録して監督の要求に応える形となった。ESPNは大会全体を通じて、エムバペが主役でありながらデンベレ、マイケル・オリーズ、ブラッドリー・バルコラらの選手にしっかり支えられている点を強調しており、今回の試合もその構図を象徴する結果になったと言える。
3大会連続の4強入り
この勝利により、フランスは2018年ロシア大会、2022年カタール大会に続き、3大会連続でワールドカップ準決勝進出を確定させた。2大会ぶりの優勝を目指すフランスにとって、この結果は大きな一歩となる。
一方のモロッコは、前回大会で史上初のアフリカ勢ベスト4入りを果たした勢いを今大会にも持ち込もうとしていたが、2大会連続でフランスの前に力尽きる形となった。アシュラフ・ハキミらを中心とした攻撃的なチームとして注目を集めていたモロッコだが、堅守を誇るフランス代表の壁を越えられなかった。
フランスは今後、準決勝でさらなる強豪との対戦が予想される。今大会14得点という大会屈指の攻撃力を誇るフランスが、この勢いをどこまで持続できるかが今後の注目点となる。エムバペにとっても、PK失敗という一時的な挫折を乗り越えて結果を出したこの試合は、今後の準決勝以降に向けて大きな自信になったはずだ。

