韓国代表は2026年北中米ワールドカップのグループA(メキシコ・南アフリカ・チェコ)で1勝2敗・勝ち点3という成績に終わり、2大会ぶりとなるグループステージ敗退を喫した。ソン・フンミン、キム・ミンジェ、イ・ガンインという「黄金世代」を擁しながらの早期敗退は、国内外に大きな衝撃を与えた。
「楽な組」のはずだった——大会前の期待と現実の乖離
大会前から「韓国が歴代最も恵まれた組に入った」という評価が国内メディアから相次いでいた。実際、グループリーグ突破の確率は92.6%と試算されていたほどだ。第1節のチェコ戦では一度0-1とリードを許すも、ファン・インボムとオ・ヒョンギュのゴールで2-1と逆転勝利を収め、順調な滑り出しに見えた。
しかし第2節でメキシコに0-1、第3節では「最弱」と見られていた南アフリカに0-1と連敗。1勝2敗の勝ち点3でグループ3位に沈んだ。48チーム制の今大会では各グループ3位の上位8チームにもワイルドカードが与えられるが、コンゴの逆転劇(グループL)により3位ランキングが9位へ転落し、決勝トーナメント進出の望みも完全に絶たれた。
南アフリカ戦の致命的判断——ソン・フンミンをなぜ外したのか
最も議論を呼んだのが、勝てば自力突破確定だった南アフリカとの最終節における、ホン・ミョンボ監督のスターティング選考だ。チームのシンボルであるソン・フンミンをあえてベンチスタートとし、オ・ヒョンギュを先発に据えた。監督の意図は「後半に疲弊した相手を崩す切り札として投入する」という算段だったとされる。
しかし韓国は前半から決定機をほとんど作れず、後半18分にタペロ・マセコのゴールで先制を許した。ソン・フンミンを途中出場させても反撃の糸口は見えず、0-1のまま試合終了。元韓国代表のイ・ヨンピョ氏(KBSコメンテーター)は「チームの推進力と攻撃の流動性を生み出す唯一の選手を最初から外したことで、前半の段階でリズムが完全に失われた」と批判した。
さらに、中盤で攻守をつなぐ役割を担うイ・ジェソン(マインツ)が負傷欠場したことも痛手だった。「前線と中盤をリンクする選手がゼロになった状態で、戦術はドミノ倒しのように崩れた」と現地メディアは伝えた。
3バック固執——相手に「読まれ」続けた戦術
3試合を通じて共通した問題が、ホン・ミョンボ監督の戦術的硬直性だ。監督は全3試合で同じ3バックシステムを採用し続けたが、相手は試合ごとに明確な対応策を取ってきた。
南アフリカを率いたヒューゴ・ブロース監督は試合後、「韓国は予想通りにプレーしてくれた」と語った。数字がその実態を如実に物語る。韓国はこの試合でボール保有率68.5%を記録したが(韓国W杯史上最高)、南アフリカは保有率わずか31.5%という超守備的戦術で守り切り、たった1点で勝点3を奪った。ボールは持てているのにゴールが奪えない——横パスとバックパスを繰り返すだけで、ボックス内への侵入が極めて少ない攻撃パターンは、大会を通じて改善されなかった。
朝鮮日報は「ホン・ミョンボの頑固な3バックが2014年ブラジルW杯のアルジェリア戦を想起させる」と評した。当時も「戦術的な硬直性と試合中の修正力のなさ」が敗因とされており、12年越しに同じ監督が同じ轍を踏んだことになる。
キム・ミンジェ不在と守備の実態
攻撃面だけでなく守備の核も欠いていた。主将のキム・ミンジェはふくらはぎの負傷を抱えており、南アフリカ戦では万全のコンディションではなかったと現地報道は伝える。バイエルン・ミュンヘンで世界最高レベルのCBとして活躍する選手が本来の力を出せない状況下では、3バックの構造自体も機能しにくい。3試合でわずか2失点という数字は守備が踏ん張った印象を与えるが、メキシコ戦・南アフリカ戦ともに試合を通じて守勢に追い込まれる場面が続いており、「少ない失点は決して組織守備の完成度を示すものではない」と現地専門家は指摘する。
「黄金世代」を殺した攻撃の形のなさ
ソン・フンミン、イ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)、キム・ミンジェ(バイエルン・ミュンヘン)、オ・ヒョンギュ(セルタ)という欧州トップクラブ所属の選手たちを揃えながら、韓国は3試合でわずか2得点しか挙げられなかった。元韓国代表のパク・チソンは試合後にこう語っている。「攻撃の明確なプランが一切なかった。この問題はこの大会を通じてずっと同じだった」。
大会前の2026年春の親善試合でも全敗を喫しており、「攻撃の形が作れていない」という警告サインは既に出ていた。にもかかわらず大会本番までに修正されることはなかった。個の質が明らかにあるにもかかわらず、連係と戦術が機能せず個の力が発揮できない構造的問題は、ホン・ミョンボ体制の本質的な失敗点だった。
監督の矛盾した発言とKFA問題
南アフリカ戦後、ホン・ミョンボ監督は記者会見で「誤った判断と決断のせいで結果が出なかった。この大舞台での結果は全て監督の責任だ」と言明した。しかしその一方で「なぜ負けたのかわからない。モンテレイの暑さが影響したかもしれない」とも述べており、韓国メディアはこの発言の矛盾を「責任転嫁」として強く批判した。
批判は監督個人に留まらず、韓国サッカー協会(KFA)の体質問題にまで波及した。Korea Timesは「今回の敗退は突然の崩壊ではなく、KFAの長年の失策・エリート主義・人事の不透明性が招いた必然の結果だ」と識者・ファンの声をまとめて報じた。そして韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は自身のXに投稿し、「能力よりも身内意識を優先し、無能な人物を指揮官に選べば結果は火を見るより明らかだ」とKFAの人事を痛烈に批判。「今回のワールドカップ敗退は組織と人事の失敗によるものとみられる」として体育行政改革を指示したことを明かした。現職の大統領がW杯敗退について名指しで批判するという事態は、韓国国内のダメージの深さを象徴している。
「宿敵・日本を応援する屈辱」と今後の課題
今回の敗退で生まれた象徴的な場面が、韓国ファンが「宿敵・日本代表の結果を祈る」という状況に追い込まれたことだ。韓国が他力での突破を目指すには、グループFで日本がある条件で勝利することが有利に働くシナリオがあり、韓国メディアの一部は「日本に助けを乞う屈辱」と報じた。日本がグループリーグを突破し快進撃を続ける姿との対比は、韓国国内での自国サッカーへの失望感をさらに深めた。
今大会の韓国代表の失敗は、個人の才能に頼るだけでは世界の舞台で生き残れないこと、そして戦術的柔軟性・育成システム・協会の組織運営が三位一体で機能しなければ「黄金世代」も無力になりえることを改めて証明した。大統領まで巻き込んだKFA批判が今後の改革につながるかどうか——韓国サッカーは今、根本からの再建を突きつけられている。

