2026年6月27日(現地時間)、ワールドカップ2026グループLの最終節でイングランドがパナマに2-0で勝利し、グループ首位で決勝トーナメント(ラウンド32)進出を確定した。後半67分にハリー・ケインが決めたヘッドは、イングランド男子のW杯通算最多得点記録を更新する歴史的な1点となった。
前半は膠着、ベリンガムが突破口を開く
メットライフ・スタジアム(ニュージャージー州イーストラザーフォード)に降りしきる雨の中、イングランドはガーナ戦に続いて前半を無得点で折り返す苦しい展開を余儀なくされた。パナマの守備ブロックは堅く、ケインへの供給も限られ、「前半は透明人間のようだった」(ワシントン・ポスト)という辛口の評価も出た。
転機は後半62分。ブカヨ・サカが左から送ったコーナーキックに、ジュード・ベリンガムがマーカーに体を押さえられながらも左足を伸ばしてゴール左隅へ押し込み、均衡を破った。ベリンガムはW杯通算3ゴール目。このプレーについてESPNは「イングランドが必要なときに彼は必ず応える」と称えた。
リネカーを超えた——11ゴール目の瞬間
先制からわずか5分後の67分、ベリンガムが左サイドで受けてインサイドに持ち込み、ファーサイドへダイニングクロスを上げた。マーカーを振り切ったケインが高い打点でヘッドを叩き込み、ゴール左上隅に突き刺した。
この得点がW杯通算11ゴール目となり、ゲイリー・リネカーが1986年メキシコ大会と1990年イタリア大会で積み上げた10ゴールを単独で上回り、イングランド男子のW杯史上最多得点記録を更新した。リネカーの記録は約35年間、破られることなく「神話」として語り継がれてきた数字だった。
試合後、ケインはベリンガムを称えるコメントを残した。「ジュードは今日もファンタスティックだった。あのアシストがなければゴールはなかった。彼と一緒にプレーするのは本当に楽しい」(イングランドサッカー公式)。ベリンガムは1ゴール1アシストを記録し、攻撃の中心として機能した。
ケインの「W杯の記録簿」
ケインのW杯での歩みを整理すると、その一貫した存在感が際立つ。
- 2018年ロシア大会:6ゴール(得点王)、パナマ戦ではハットトリックを記録
- 2022年カタール大会:1ゴール(PK)、チームはベスト8で敗退
- 2026年北中米大会:現時点でグループステージ3ゴール、W杯通算11ゴールに到達
3大会連続得点はデビッド・ベッカム以来2人目のイングランド選手という記録も付随する。また、国際Aマッチ通算82ゴールは自身のイングランド記録をさらに更新するものだ。32歳のバイエルン・ミュンヘン所属ストライカーが、今なお成長を続けていることをこの数字が物語る。
グループLの3試合を振り返る
イングランドのグループ突破の軌跡を確認しておきたい。
- 第1節(6/18):イングランド 4-2 クロアチア(アーリントン、AT&Tスタジアム)ケインがPKとヘッドで2得点。ベリンガム、ラッシュフォードも得点し快勝したが、2度追いつかれる不安定さも露出した。
- 第2節(6/24):イングランド 0-0 ガーナ(フォックスボロ、ジレットスタジアム)ガーナの組織的プレッシングを前にポゼッションを活かせず引き分け。ケインがほぼ消えた試合として現地メディアに厳しく批評された。
- 第3節(6/27):イングランド 2-0 パナマ(イーストラザーフォード、メットライフスタジアム)ベリンガム62分、ケイン67分で2-0勝利。グループ首位で突破確定。
最終順位はイングランド(勝点7・1位)、クロアチア(勝点6・2位)、ガーナ(勝点4・3位)、パナマ(勝点0・4位)。グループ計6ゴールの内訳はケイン3、ベリンガム2、ラッシュフォード1で、この2人がイングランドの攻撃を牽引した。
ラウンド32の相手はDRコンゴ——52年ぶりの奇跡の先に
グループLの最終節と同日夜、グループKの最終節でDRコンゴがウズベキスタンに3-1で逆転勝利(ヨアネ・ウィッサが2得点)し、3位でグループKを突破。これによりイングランドとのラウンド32対戦が公式に確定した。当初、次の相手として最有力視されていたのはセネガルだったが、DRコンゴの劇的な逆転突破によって対戦相手が変わった形だ。
DRコンゴにとってこのW杯出場は1974年西ドイツ大会(当時ザイール名義)以来、実に52年ぶり。さらに今大会は初のノックアウトステージ進出という歴史的快挙を遂げた。ブレントフォード所属のウィッサを軸に、堅いブロックからの鋭いカウンターアタックが武器で、「格上相手に大番狂わせを狙う」姿勢をチームは明確に持っている。
試合は7月1日(現地時間)、アトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムで行われる。日本時間では7月2日(木)の早朝となる。
トゥヘル体制の現在地——強さと課題の両面
グループ突破を果たしたとはいえ、トーマス・トゥヘル監督のイングランドには課題も見えた。クロアチア戦での安定感に欠ける守備、ガーナ戦での攻撃の停滞——特に組織的なプレッシングを受けたときにケインへの供給が滞るパターンは、強豪と対戦した際に再び顔を出す可能性がある。
一方、ベリンガムとケインの連携が本物であることはパナマ戦の2得点が証明した。ベリンガムはここ3試合で2得点2アシストというハイレベルな数字を残し、ケインとの「クラシック型ストライカー×トップ下の連動」はノックアウトステージで最大の武器になりうる。
DRコンゴ戦に勝利すれば、その先のラウンド16では可能性としてメキシコやブラジルと対戦する山に入っている。イングランドが悲願の優勝へ向かうためには、記録を塗り替えたケインがさらにゴールを積み重ねていくことが不可欠だ。国民は32歳のキャプテンに、もう一段高い次元の活躍を期待している。

