グループステージ2連勝で首位通過を決め、余裕の一戦のはずだった。しかしドイツ代表は2026年FIFAワールドカップ北中米大会のグループE第3節、エクアドルに1-2で逆転負けを喫し、国際Aマッチ11連勝という勢いにも急ブレーキがかかった。攻撃力の高さを見せつけながらも守備の脆弱性を露呈した今大会、ノックアウトステージで本当の意味での真価が試される。
試合前の状況——余裕の一戦のはずだった
ドイツは今大会の初戦でキュラソーを6-0と圧倒し、続くコートジボワール戦も制して2連勝。グループ首位通過を第2節の時点で確定させており、第3節のエクアドル戦は消化試合の色合いが強かった。
選手起用をめぐっても注目が集まった。グループ突破確定後の最終戦で主力を温存するか、それとも実戦感覚を維持するために主力を起用するか。ナーゲルスマン監督が選んだのは後者だった。ヨズア・キミッヒ、フロリアン・ヴィルツ、ジャマル・ムシアラという中心選手を先発に並べ、「本番仕様」のメンバーで臨んだ一戦だった。それだけに、まさかの逆転負けという結果はより重くのしかかる。「コンディション調整のためのターンオーバーをしなかった」という言い訳すら通じない敗戦であり、純粋に内容で下回った事実が残った。
先制するも、同点・逆転を許した90分
試合は序盤からドイツが主導権を握る展開になるかと思われた。開始わずか2分、レロイ・サネがゴールを奪いドイツが先手を取る。しかしその喜びはわずか7分しか続かなかった。9分にはニルソン・アングロに同点ゴールを決められ、試合はあっという間に振り出しへ。
前半はそのまま1-1で折り返す。後半に入ってもドイツは決定的なチャンスを作りながらも仕留めきれず、逆にじっくりと待ち構えるエクアドルの守備ブロックを前に攻撃が停滞していった。そして迎えた後半32分(77分)、コーナーキックの流れからゴンサロ・プラタに押し込まれ、エクアドルが逆転に成功。ドイツはそこから反撃を試みたが、最後まで得点を奪えずに試合終了のホイッスルを聞いた。
終わってみれば、エクアドルは「決めるべき場面で決め、守るべき場面で守る」というシンプルな勝利の方程式を体現した。一方のドイツは「支配しながら勝ちきれない」という古くから指摘されるパターンをそのまま繰り返した格好だ。国際Aマッチ11連勝という記録もこの一戦でストップした。
「負けるべくして負けた」——キミッヒの重い自己批判
試合後、主将のヨズア・キミッヒは記者団の前で率直に言い切った。「負けるべくして負けた」。
2連勝でグループ最終戦に臨んだチームのキャプテンがこれほど厳しい自己評価を下すのは、単なるコメント向けのポーズではない。ボールを保持しながらも最後のところでの質を欠き、相手に1点のリードを守りきられたという内容への、正直な反省の言葉だ。
グループリーグのここまでの2試合ではキュラソーに6-0、コートジボワールにも勝利と、数字の上では申し分なかった。ムシアラのドリブル突破、ヴィルツのライン間での受け方、サネのスプリントと、個々の質は明らかに高い。しかし、この試合でエクアドルがやって見せたように「ブロックを敷いて組織的に守り、一瞬のチャンスを仕留める」という戦い方に対して、ドイツは有効な打開策を見出せなかった。この課題はノックアウトステージでも繰り返される可能性が十分にある。
キミッヒ自身が「負けるべくして負けた」と語ったことの意味は大きい。キャプテンが問題を直視しているという点では評価できるが、それを修正する時間が限られているという現実も突きつけられている。
セットプレー守備という”盲点”が浮き彫りに
この試合でとりわけ深刻な課題として浮かび上がったのが、セットプレー守備だ。プラタの決勝点はコーナーキックのこぼれ球を押し込まれたもので、ゾーンとマンマークの境界でマークがずれ、反応も遅れた。
コーナーキックやフリーキックからの失点はデータ的にも近年のドイツ代表の弱点として指摘されており、今大会でも修正しきれていないことが改めて明らかになった。グループステージでこうした失点パターンが出ているということは、ノックアウトステージで質の高い相手のセットプレーと対峙したとき、同じ弱点を突かれるリスクが高い。
特に準々決勝以降の対戦相手となりうる欧州・南米の強豪はセットプレーの精度が高く、デザインされた形から得点を奪う能力を持つ。アタッカー陣のクオリティに依存した攻撃力が注目される一方で、セットプレー守備の脆弱性は大会を通じた”時限爆弾”になりかねない。
エクアドルの歴史的快挙——南米の底力を世界に証明
一方のエクアドルにとってはまさに歴史的な夜だった。W杯4度の優勝を誇るドイツを破ったのは、エクアドル代表にとってW杯における優勝経験国への初勝利。試合後、指揮官は「この勝利は国民のもの」と叫び、試合終了直後の行動も現地メディアで「可愛いすぎる」と話題になるほどの歓喜に包まれた。
エクアドルは2006年ドイツ大会以来、実に5大会20年ぶりのノックアウトステージ進出を果たした。第1節・第2節で苦しみ、グループ3位という崖っぷちの状況で迎えた最終戦での勝利は、単なる番狂わせではない。南米予選を戦い抜いてきた組織的な守備と、縦に速い攻撃の怖さを世界に示した一戦でもあった。アングロとプラタという攻撃陣はこの試合を通じて国際的な注目を集めており、ノックアウトステージでもエクアドルが旋風を巻き起こす可能性は十分だ。
南米予選(コンメボル)は世界で最も過酷な予選のひとつとして知られており、そこを勝ち抜いてきたチームの地力を、ドイツは改めて思い知らされた形だ。
国際メディアの論調「ドイツは優勝候補ではない」
この敗戦に対する国際メディアの評価は辛辣だった。複数の海外メディアは「ドイツへの警告」「優勝候補とは見ていない」という論調で一致しており、2連勝で積み上げたポジティブなイメージを一夜で塗り替える結果となった。
特に指摘が多かったのは「攻撃的なスタイルへの期待と、守備の実態との乖離」だ。ムシアラやヴィルツを擁する攻撃陣への評価は依然として高い一方で、「プレスをはがされた際の守備の脆弱性」「セットプレーでの集中力の欠如」「ひとたび流れが変わると修正できない戦術的硬直性」が繰り返し問題として挙げられている。
ドイツはユーロ2024では地元開催の大会でスペインに準々決勝で敗れており、「大舞台でタイトルに届かないドイツ」というイメージを払拭するためにも今大会に懸けていた。しかしグループ最終戦でのまさかの敗戦により、そのイメージはむしろ強化されてしまった感がある。
ラウンド32の対戦相手予想——どの相手が待ち受けるか
ドイツはグループE1位通過のため、ラウンド32(ベスト32)ではグループA・B・C・D・Fから3位通過したチームのうちの1チームと対戦するブラケットに入る見込みだ。グループステージが一部進行中のため対戦相手は現時点では確定していないが、3位通過チームはグループを辛くも生き残った国であり、組み合わせは相対的に”やりやすい”部類に入ると考えられる。
ただし、2026年大会は史上初の48カ国参加でグループ3位にも突破枠が与えられており、今大会の3位通過チームの顔ぶれはバラエティに富む。アフリカ勢(モロッコ、セネガル等)やアジア勢、北中米の開催国に近いチームが3位で滑り込む可能性があり、「3位相手だから楽」という発想は禁物だ。特に開催地のアメリカ・カナダ・メキシコの近隣で試合が組まれた場合、スタジアムの雰囲気・気候・移動距離など、ピッチ外の要素でドイツが不利を被るケースも想定される。
ラウンド32を突破した場合に想定されるラウンド16以降の対戦相手としては、同じブラケット内でグループD・F付近を勝ち上がるチームとの対戦が現実的だ。グループステージの戦いぶりを見る限り、スペイン・フランスといった欧州の強豪が同じ山にいる場合、準決勝前に欧州対決が実現する可能性もある。ユーロ2024で屈したスペインと再びノックアウトステージで激突するという展開になれば、ドイツにとってはリベンジを果たす最大の舞台となる。
いずれにせよ、ラウンド32・16と進むにつれて対戦相手の強度は増していく。エクアドル戦で露わになったセットプレー守備の脆弱性、ブロック守備の崩し方の課題、そして試合中の修正力不足——これらを限られたインターバルで立て直せるかどうかが、ドイツのW杯制覇への分水嶺となる。
ドイツの真価はここから問われる
キュラソーを6-0で粉砕し、コートジボワールを下したグループステージ前半の躍動感は本物だった。ムシアラの創造性、ヴィルツの技術、サネのスピードと、今のドイツが持つ攻撃のタレントは疑いなく世界トップクラスだ。
しかしエクアドル戦でのまさかの逆転負けが示したのは、このチームがまだ本当の意味での完成形に到達していないという事実だ。「負けるべくして負けた」というキミッヒ主将の言葉は重く受け止めなければならない。大会を重ねるごとにチームとして成熟していくのか、それとも課題を抱えたまま強豪に駆逐されるのか。グループ首位通過という事実の裏に潜む不安を解消できるかどうか、ノックアウトステージこそがドイツの真の実力を明らかにする舞台となる。

