ハキミ強姦容疑で裁判へ|日本代表とW杯対戦可能性のあるモロッコ主将に激震

A代表

北中米ワールドカップ2026のグループステージが佳境を迎える中、モロッコ代表主将のDFアシュラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン、27歳)をめぐる衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。フランスのヴェルサイユ控訴裁判所は2026年6月19日、ハキミが2023年に女性に対して性的暴行(強姦)を加えたとされる疑惑について、刑事公判への付託を正式に決定した。裁判の期日はまだ確定していないが、W杯のピッチで奮闘する現役世界トップクラスの選手が、大会期間中に刑事被告人となるという前例のない事態が現実となった。

3年越しの法廷闘争──事件の経緯

問題の発端は2023年2月にさかのぼる。当時24歳の女性が、パリ郊外ブローニュ=ビヤンクールにあるハキミの自宅で性的暴行を受けたとして警察に申告した。フランス当局はその翌月の3月に捜査を開始し、それ以降、この事件はハキミにとって長期にわたって付きまとうこととなった。

捜査から約3年が経過した2026年2月、担当の予審判事が「証拠は公判実施に足る」として刑事裁判への送付を決定。ハキミ側はただちに控訴し、公判阻止を試みた。しかしヴェルサイユ控訴裁判所は6月19日の朝、ハキミ側の申し立てを棄却。フランス国際ニュース専門チャンネル「フランス24」はこの事実を速報し、AP通信やBBC Sport、ロイター、ESPNなどの主要国際メディアが一斉に報道した。

注目すべきは、この報道が流れた当日の夜、ハキミがモロッコ代表の一員としてスコットランド戦に先発出場したという事実だ。刑事被告となることが確定した数時間後にW杯のピッチに立ったハキミは、チームを1-0の勝利に導いた。

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ハキミは断固として否定──「ようやく真実を話せる」

ハキミは自身のSNSを通じて、一貫して容疑を否定している。今回の裁判確定の報道後には「もし私が有名人でなければ、この事件は存在しなかった。私は何もしていないし、これからも決してしない」と強く反論した。さらに「格好の標的になってしまったように感じる」「ようやく自分の言葉で真実を話す機会が訪れた。この裁判を最初から心待ちにしていた」とも述べており、公判を通じた潔白の証明を望む姿勢を示している。

弁護団も同様のスタンスを取っており、「選手は無罪推定の原則のもとにある」として公判で事実を証明する姿勢を強調した。一方、被害を訴える女性側の弁護士レイチェル=フローレ・パルド氏はXへの投稿で「依頼人にとって安堵と希望をもたらす決定だ」「捜査委員会は十分な証拠があると判断した。この決定は検察、予審判事、控訴院の代理人の意見と一致する」とコメントし、事件への見方が真っ向から対立している構図が鮮明になっている。

強調しておくべきは、現時点で有罪判決は一切出ていないという点だ。今回確定したのは「刑事公判への付託」、すなわち裁判が行われるという決定に過ぎない。フランスの法体系においても、被告人には無罪推定の原則が適用される。

チームは「背後にいる」──モロッコ代表の反応

チームとしてのモロッコ代表は、ハキミへの支持を明確にしている。モロッコ代表監督は「チームはハキミの背後にいる。彼は非常にリラックスしている」と述べ、この問題が選手やチームの士気に影響を与えていないことを強調した。

これはモロッコにとって当然の反応でもある。ハキミはアトラスライオンズの象徴そのものだ。右サイドバックとして守備の安定と攻撃の起点を一手に担い、現在W杯でグループC首位に立つチームのキャプテンマークを巻く。3-4-3システムにおけるハキミのウイングバックとしての役割は代えがきかず、彼を欠いてモロッコの戦術が機能するかという問いへの答えは極めて難しい。

W杯優勝候補の戦力を揺るがす「渡航問題」

実は、このニュースに続いてもう一つの懸念が浮上している。決勝トーナメントの会場がメキシコになる場合、ハキミが入国できない可能性があるという問題だ。

talkSPORTなど複数の海外メディアが指摘しているが、メキシコの入国管理規定では、重大な刑事手続き中とみなされる人物の入国を拒否できる条項が存在する。カナダにも類似の規定がある。北中米ワールドカップは米国・カナダ・メキシコの3か国共催であり、会場によっては実質的な入国拒否という事態も理論上は排除できない。ただし、裁判の開始日程自体がまだ決まっておらず、FIFA側もこの件について公式な見解を出しておらず、現時点では「可能性」にとどまる。

この問題が現実になれば、アフリカの強豪モロッコにとって戦力的な打撃は計り知れない。ハキミの不在は単なる一選手の欠場ではなく、チームアイデンティティそのものの喪失を意味するからだ。

決勝トーナメントで日本代表と対戦の可能性

このニュースが日本のサッカーファンにとっても対岸の火事でないのは、決勝トーナメントの組み合わせ構造にある。

グループF第2節終了時点(6月21日現在)の順位は、オランダが1位(勝ち点4・得失点差+4)、日本が2位(勝ち点4・得失点差+4)で並んでいる。日本は第2節でチュニジアに4-0と快勝し、25日の最終節スウェーデン戦を引き分け以上で終えれば2位以上が確定する状況だ。

一方、グループCは第2節終了時点でモロッコが勝ち点4の首位に立っており(スコットランド戦1-0勝利)、同じく勝ち点4のブラジルが得失点差でわずかに下回る2位につけている。

W杯の組み合わせ規定では、グループCの首位はグループFの2位と、グループCの2位はグループFの首位と決勝トーナメント1回戦(ラウンド32)で対戦する。つまり、現在の順位がそのまま最終節に反映された場合、日本が首位で突破すればモロッコ(C組2位)と、2位で突破すればブラジル(C組1位)と対戦する可能性が最も高い。グループFの最終節はスウェーデン対日本(25日)と同時にオランダ対チュニジアが行われ、最終節の結果次第では組み合わせが変動するが、現状では日本が決勝トーナメントに進めば「ブラジルかモロッコ」という超難関にぶつかる公算が高い。

現役最高クラスの選手が抱えた「もう一つの戦場」

ハキミが右サイドバックの第一人者として確立した地位は揺るぎない。スペイン・マドリード生まれのモロッコ系として、レアル・マドリードの下部組織で育ちインテル・ミラン、PSGと渡り歩いてきたキャリアは、アフリカサッカーの新世代を象徴するものだ。母国モロッコでは「アトラスライオンズの心臓」として英雄的な存在であり、今大会でも主将として全試合に先発出場している。

今回の裁判確定という事態は、サッカー界に一つの問いを突きつけている。「法的手続き中の選手が競技に参加し続けることをどう評価するか」という問題だ。欧州の主要メディア、特にイギリス系メディアでは批判的なトーンも見られるが、フランス語圏のメディアはより法的プロセスの観点から冷静に事実を報じる傾向がある。日本のメディアでも報道は増えているが、「日本代表の対戦相手候補」というフレームでの報道が多く、事件の詳細や現地の文脈についての掘り下げはまだ浅い。

強姦容疑という重大な疑惑を抱えながらW杯の舞台に立ち、チームを勝利に導く──その事実をどう受け止めるかは、競技の場における選手の法的立場をどう考えるかという普遍的な問いと不可分だ。裁判の行方がW杯の行方と並走するという前例のない状況は、大会が終わっても長く語り継がれることになるだろう。

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