38歳メッシ、W杯初戦で伝説を ハットトリックで最多記録に並ぶ

ナショナルチーム

リオネル・メッシ(38)が2026 FIFA W杯北中米大会のグループリーグ初戦、アルゼンチン対アルジェリア戦(現地6月16日・カンザスシティ)でハットトリックを達成し、アルゼンチンを3-0の快勝に導いた。W杯通算16ゴールとなりドイツのミロスラフ・クローゼが持つ歴代最多得点記録にタイ。38歳357日でのW杯最高齢ハットトリック達成、そして代表200試合目での偉業と、記録ずくめの一夜となった。

三者三様の3ゴール——「解剖」するハットトリック

3ゴールはそれぞれ異なる質と文脈を持ち、38歳のメッシの「万能性」をそのまま体現するかのような内容だった。

1点目は17分。インテル・マイアミでのチームメイトでもあるロドリゴ・デ・パウルが最終ラインの間を正確に割ったスルーパスを引き出したメッシは、エリア外から右足で力強いシュートを放ち、GKルカ・ジダンの指先を弾き飛ばしてネットに突き刺した。

2点目は60分。アレクシス・マクアリスターが25ヤード付近から放ったロングシュートをジダンが胸で弾いてしまい、こぼれ球を反応したメッシが確実にゴールへ押し込んだ。

3点目は76分、まさにメッシらしいゴールだった。ニコ・ゴンサレスが横に送ったボールを受けたメッシは、ペナルティエリア外からワンタッチでボールを左足の外側に乗せ、低く曲がりながらゴール左隅に吸い込まれる一撃を叩き込んだ。その直後、スカローニ監督は次戦への温存を考慮して静かに交代を告げ、スタジアムは総立ちの「メッシ!メッシ!」コールに包まれた。

スポンサーリンク

なぜアルジェリアは止められなかったか

試合前、アルジェリアはメッシを封じるための準備を積んできた。若手MFのマザは開幕直前のインタビューで「メッシを倒す。インシャラー」と宣言し、戦術的にも4-2-3-1のコンパクトな守備ブロックでメッシへの縦のパスルートを消す狙いを持っていた。

だが実際の試合では、アルゼンチンの4-3-3に対してアルジェリアの中盤プレスが機能しなかった。メッシは右ウイングに配置されながらも「偽9番」的にブロックの隙間へ絞り込み、マーカーを引き連れながら一瞬でスペースを突く動きを繰り返した。ロングシュートで先制すると相手は前に出ざるをえず、以降は間延びした守備を一方的に崩された。試合後、アルジェリアのDF主将アイサ・マンディは「恐るべき決定力。分かっていたことだが、それでも止められなかった。彼は史上最高の選手だ」と完全に脱帽するしかなかった。

見落とされがちな「W杯最高齢ハットトリック」という偉業

今回の記録において、日本語圏でやや整理が甘い視点がある。それが「W杯最高齢ハットトリック」という記録だ。

メッシの38歳357日というハットトリック達成時の年齢は、従来の記録保持者だったクリスティアーノ・ロナウドを大きく上回る。ロナウドは2018年ロシア大会のスペイン戦で33歳130日にして3ゴールを記録し、当時「不惑が近づいてもこれほどの爆発力を持つ選手がいるのか」と世界を驚かせた。しかし今回のメッシはそのロナウドの記録を5年以上塗り替えた形だ。

さらに言えば、来週に39歳の誕生日を迎えるメッシは、フィールドプレーヤーとして史上最高齢のアルゼンチン代表選手でもある。「38歳でここまでできるのか」という驚きは世界共通で、韓国メディアのスターニュースは「サッカーの神を見た」と報じ、インドのNDTVは「スタニングなハットトリックで歴代最多記録に並んだ」と世界の視点で盛大に称えた。

クローゼに並んだ16ゴール——記録の背景と重み

W杯通算得点のトップに並んだミロスラフ・クローゼの16ゴールは、2002年・2006年・2010年・2014年の4大会をかけて積み上げたものだ。一方メッシは2006年・2014年・2018年・2022年・2026年の5大会で同数に到達した。

順位 選手 ゴール数 大会数
1 クローゼ ドイツ 16 4
1 メッシ アルゼンチン 16 5
3 ロナウド ブラジル 15 4
4 エムバペ フランス 14 3

クローゼは典型的なポストプレー型ストライカーとして地道にゴールを積み重ねたのに対し、メッシはドリブル突破・ミドル・ポジショニング・PK・アシストからの関与と多彩な形で同数に到達した。「積み上げ方が全く異なる」という点でも、この「タイ記録」は単純な数字以上の意味を持つ。

エムバペとの記録バトル、開幕直後に勃発

この試合をめぐる「隠れたドラマ」が、キリアン・エムバペとの記録争いだ。

アルゼンチン対アルジェリア戦のほぼ同時刻、フランスがセネガルと対戦。エムバペが2ゴールを挙げてW杯通算14ゴールとし、存在感を示した。しかしメッシはその直後の試合で3ゴールを一気に積み上げ、通算16ゴールまで到達。27歳のエムバペとの差を2に広げた。

現時点でエムバペがこの差を逆転するにはグループリーグから決勝まで全試合でコンスタントに得点を重ねる必要があり、メッシが単独最多を達成すれば追い抜くのはさらに困難になる。W杯2026は「メッシ vs エムバペの記録争い」という隠れた軸も楽しめる大会になってきた。

代表200試合目——20年目のW杯で節目の偉業

実はこの試合、メッシにとってもう一つの特別な節目があった。アルゼンチン代表通算200試合目の出場だ。

2006年にドイツ大会でW杯デビューを果たして以来、ちょうど20年。現地報道Al Jazeeraはこの一致に注目し「メッシがW杯デビューからちょうど20年目の同じ日、6月16日にハットトリックを達成した」と報じた。節目の200試合目で初のW杯ハットトリック、最高齢ハットトリック、W杯最多タイ——という複数の歴史が一夜に重なったのは偶然以上のドラマ性があった。

さらに、メッシはW杯5大会すべてで得点しており(2006年1G・2014年4G・2018年1G・2022年7G・2026年3G)、「W杯で得点しなかったシーズンがない」という驚異の一貫性も見逃せない。

連覇へ——スカローニが描く次の一手

スカローニ監督は76分という比較的早いタイミングでメッシを交代させた。3-0という安全圏で体力を温存する意図は明白で、グループJの次戦(オーストリア戦・ヨルダン戦)へ向けて計算高いマネジメントを見せた。

試合前、スカローニはメッシを右ウイングに置きつつも「自由に動かす」柔軟な4-3-3を採用。ラウタロ・マルティネスとの2トップ的連携も試合中に使い分け、アルジェリアの4-2-3-1を完全に攻略した。FIFAランキング1位を誇るアルゼンチンは、メッシだけでなく周囲のアレクシス・マクアリスター、ロドリゴ・デ・パウル、エンソ・フェルナンデスら中盤の組み立ても安定しており、連覇への布陣は盤石に見える。

あとはメッシが次戦以降、クローゼの16ゴールを単独で超えるかどうか。来週に39歳の誕生日を迎えるこの男は、まだ伝説の途中にいる。

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました